●ブロードバンドネットワークを活用したNTT東日本の最新ソリューション事例

「フレッツ・ADSL」と「インターネットVPN」を活用して
ブロードバンド型カラオケ配信を実現


 業務用カラオケ事業やコンテンツ事業をはじめとした音楽エンターテイメント業界の最大手である椛謌鼡サ商様(以下、第一興商様)は、同社の最新機種「NEWcyberDAM G50U」に向けた新しいコンテンツサービスの配信システムの提案をNTT東日本に依頼されました。NTT東日本は、この依頼に対して、NTT東日本データセンター・NTTビズリンクのホスティングサービス・フレッツADSLを核とした提案を行い、構築しました。

【事例】椛謌鼡サ商様
ADSLを導入し定額通信のコンテンツ配信を実現

 椛謌鼡サ商
 DAM 運用部
 次長 永田明峰氏


 第一興商様は、これまでのセンターと店舗間をISDNやアナログ回線を利用して接続していましたが、多数の曲や映像等の大容量データのコンテンツを配信するためには、これまでの従量制の回線では不都合が生じてきました。各店舗から第一興商様へ支払われる情報利用料は、配信された曲数とは関係なく一定であるため、通信コストを削減することが大きな課題となり、さらに、店舗側のランニングコストを引き下げるという目的も生じてきました。提供するサービスの充実や安定化をはじめ、いかにユーザーが負担する設備費や通信費等のランニングコストを下げていけるかが、業界内でのシェアを増やす鍵となることから、大容量データを高速に通信できるブロードバンドでありながら、定額料金であるフレッツADSLの利用が候補としてあげられたのです。

 カラオケ配信は音楽や映像といった著作物を取り扱うため、公衆網であるADSLを利用してのサービスを行うには、いくつかの条件があります。一つは、著作物を安全に配信するためのプライベートネットワークであること。もう一つは、効率的に認証済み端末へのみ配信するためのプッシュ配信方式であること。フレッツADSLにすることで大容量データ配信におけるランニングコストの低減はクリアされましたが、公衆網であるADSLを利用してセキュアな通信やプッシュ配信ができるのか、という課題が残りました。しかし、インターネットVPNを利用することでプライベートネットワーク化を実現し、NTTビズリンクのホスティングを含むNTT東日本のデータセンターによる配信を行うことで、これらの課題はクリアされました(図1参照)。第一興商様が作成したコンテンツデータは、NTT東日本データセンター内のホスティングエリアに蓄積され、ネットワーク負荷が均等になるように作成されたスケジュールにより、各店舗に設置されたユーザー端末に届けられます。インターネットVPNを利用することで安価な公衆網を利用しながらセキュアである、という状態を実現したのです。


図1 データセンターホスティングサービスを活用したインターネットVPN

 第一興商様では、リクエスト過多によるネットワーク負荷の増大を防ぐべく、従来からセンターがスケジューリングして端末へ定期的にデータを配信する方式を採用しており、これにインターネットVPN というプライベートネットワークが加わることで、コンテンツ漏洩の危険性が低下し、本人出演映像など著作権上利用が難しかったコンテンツを配信できるようになりました。

 「今回はNTT東日本さんということではなく、グループとして良いものを作っていただきたいとお願いしました。」(第一興商DAMシステム運用部の永田明峰次長)

■セキュアなブロードバンドで新サービスを提供

 同システムの導入はスムーズに進められました。NTT東日本が使用機器やアプリケーションの検証を行い、対応するという作業を行い、社内テストを始めるまでの期間はわずか2ヵ月ほど。実店舗を利用してのトライアルでは、都内にある第一興商様の経営するカラオケ店、ビックエコーを使用しました。その後2003年1月15日に正式発売されるまでの暫定サービス期間中にもかかわらず、機種入れ替えが既存店舗で始まるなど、かなりの反響が寄せられました。

 新サービスで新たに搭載された機能は3つあり、肉声のデータの圧縮配信強化、本人出演のBGV、15秒程度のプロモーション映像をCMとして曲間に挿入するなどです。

 「圧縮音声によるバックコーラスや主旋律を付加した楽曲を大幅増強しました。これまでは、MP3で1曲分約4.5MBですので一般的には安易に送れませんでした。それがブロードバンド化で必要な数量を送れるようになりました。本人の映像は期間限定という注釈がつく場合もありますが、センターからは週に1回の割合で配信されますので、常に最新の映像をお楽しみ頂けます。また、このシステムにより、『指定期間を過ぎるとコンテンツは消滅しますよ』ということで、著作物使用についての理解がいただきやすくなりました。」(前出、永田次長)

 データ転送速度の向上は非常に目覚しく、アナログ回線に頼る従来機種においては週に5〜6 MBといった容量のデータ配信でしたが、ADSL回線を利用した結果、週2〜300MBというハイペースな配信が可能となりました。

 端末を設置する店舗側のメリットとしては、新しいコンテンツが利用できることの他に、初期コストが低くなることもあげられます。32台の機器を基本としたとき、アナログ回線は4本必要であったのがADSL回線ならば1回線で済み、さらに、屋内同士ではLANで接続が可能ということから、接続機器は従来の約10%で導入できます。また、通信料でも月額にして半額程度のコストダウンが見込めます。これらのメリットにより、新規参入がしやすく、既存店舗でも新システムが導入しやすくなりました。

■さらなるコンテンツの拡充を

 今後の新サービス普及と発展に向けて、第一興商様ではコンテンツ内容の強化という課題をあげています。たとえば、ネットワークを利用して、部屋同士での会話や店舗を超えての会話といったコミュニケーションツールとしての利用や部屋間のデュエットやセッションなどの検討。さらに、カラオケにこだわらない各種サービスも視野に入れており、コンサート生中継や映画の上映、eラーニングなど、従来のイメージを一新させるサービスも目標としています。

 正式発売から1ヶ月程ですが、現状の普及状況は、ルータ提供数153、端末数1,748 (2003年2月9日現在)、ユーザー側がどちらの回線を選ぶかによって決定されますが、ADSL回線さえ整えば機種の入れ替え自体には時間はかからず、第一興商様側は端末数で年間3万台の定期供給を見込んでいるそうです。

 「ADSL回線にすることで、少しでもお客さまの投資に対するコストメリットが向上することを考えています。また、今後の対応としては、光ファイバーも検討していますが、この点については、時期を見つつ検討していきます。」(前出、永田次長)

 

 


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