「発刊によせて」
まことに時宜を得た企画

日本電信電話公社総裁 大橋八郎

 わが国における電気通信事業は、近時急速な発展をみましたが、とくに専用通信の分野では、終戦時わずかに二百数十回線にすぎなかったのが、今日では約十万回線を数うるまでに著しく増加いたしました。

 ご承知のとおり専用サービスは、本来特定個人間の専用通信の用に供するものでありまして、当初は市内回線、市外回線を利用して電信、または電話通話の方法によって国の機関、新聞通信社等が主として利用していたにすぎなかったのでありますが、技術の進歩と社会経済の発展に伴なってその利用の分野は急速に拡大し、現在ではサービスの種類も、市内専用、市外専用、テレビジョン中継専用、広周波数帯域専用、および無線専用の五種類を数え、電信、電話のほか、写真伝送、模写伝送、データ伝送等各種の通信方法が採用されており、利用者も国の機関、新聞社、放送会社のほか、一般企業等にもひろく利用されている現状であります。

 とくにさいきん、企業の合理化のための事務機械化のブームにのって、電子計算機と結合したいわゆるIDP方式(計数集中処理方式)として、高度な利用形態がとられるにいたり、専用通信はさらに重要性を加え、いまや企業にとって必要不可欠のものとなっており、こんご急速に普及発進するものと考えます。

このような状況を勘案して電電公社としては、38年4月に専用制度の改正及び料金の値下げをおこない、また設備の増設、保守の向上等、鋭意サービスの向上に努力を続けておるところでございますが、たまたま専用通信利用者を対象とした雑誌ビジネス・コミュニケーション「専用通信」が発刊されると伺い、まことに時宜をえた企画で喜ばしいことと存じます。ねがわくばこの雑誌が専用者のよい手引となって、専用者の利便の向上に役立ち、ひいてはわが国の産業経済の発展のため、大いに貢献され専用サービスとともに発展されることを願って発刊の祝詞といたします。


「発刊によせて」
通信全般の発展のため

郵政省電気通信監理官 野口謙也

 経営の合理化、事務近代化を進めるうえで、情報処理の遅速いかんが、事業の死命を制する重要課題であるという認識が、近年ますます高まっております。これは企業自体の要請のほかに、最近における総合的データ処理方法(IDP)や、これを構成する電子計算機等の急テンポな開発が大きい刺戟となっていることと思われます。

 公衆電気通信の分野でも、IDPのためのデータ伝送用の専用線や、遠隔操縦用の専用線に対する需要がさらに大幅に増加するであろうということが予想されております。そしてこのような事態に対処するため、電電公社でも、遅ればせながら伝送路の高品質化、データ伝送用設備専用の制度化並びに専用料金の値下げを行ない、また国際電電会社においても、宇宙通信の実験推進並びに日米ケーブルの敷設にみられるような国際通信回線の広帯域化を進める等、こぞって積極販売への意欲をみせていることは、まことに心強い限りであります。

 一方、報道通信、基幹産業、公共企業等におけるVHF以上の無線を主体とする私設通信網、端末機器等も盛んに開発、整備されておりますが、これらは公衆通信網の充実と相まって、わが国の明日の電気通信をリードしていくことと思われます。

 雑誌ビジネス・コミュニケーション「専用通信」の発刊は、以上の背景や動向に即しまことに時宜を得たものと思われ、今後の通信界の発展に大きな役割を果されんことを祈る次第であります。


「今日の焦点」
社会の進展と専用通信

日本電信電話公社総務理事・技師長 佐佐木卓夫

 社会生活の複雑化、近代化、広域化は、情報の流れと、もの及びひととの流れとを極度に増大させる。前者は通信の問題であり、後者は郵送の問題である。

 電電公社は、電気通信において、次の手段を提供する。

(a)不特定多数者間の通信手段:電話、電報、加入電信
(b)特定者間の通信手段通信

 従来のように、電話の需要が供給を遥かに上回る状態においては、専用通信は、いわば、必要悪とみられてきた。しかし、社会の進展と市外電話の即時化に伴い、専用通信はようやくその意義を変えつつある。

 専用通信は、元来、四つの特色をもつ。それは、排他性、即時性、大量性、通信方式の多様性である。

 従来の専用通信においては、排他性、即時性に大きな意義があった。しかし、事態の進展は、専用通信の意義を、排他性、即時性から、大量性、多様性へと変えつつある。すなわち、その大量性は、特定者間通信の不特定者間通信からの分離独立を経済的に望ましいものとするし、また、その通信方式の多様性は、専用通信を、一般電信電話の画一性に対する大きな利点としている。

 専用通信は、従来の必要悪的、消極的性格をすてて、積極的意義をもつものへと転換しつつある。

 時あたかも、第三の通信の名で呼ばれるデータ通信が開始されようとしている。専用通信は、量的にも、質的にも、そしてその社会的意義においても、大きく変貌しつつある。わたくしは、専用通信が、不特定多数者間の通信に対する単なる補完的意義としての特定者間通信から、それ自体独立的意義をもつものへと、大きく発展していくことを期待する。

 



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