●特別企画・NTT コムウェアがオブジェクト指向技術を使用した大規模システムの開発に成功

【導入事例】全日空システム企画株式会社
オブジェクト指向技術を使用した開発プロセスで
高性能、高信頼の商用システムを短期間で実現


■お客さまの「声」に応えられる商用システムの実現をめざして

 航空業界における企業間競争が激化する中、新サービス導入や拡充による顧客確保の徹底化をめざして、全日本空輸梶i以下、全日空)では、変化を繰り返す競合環境にて付加価値の高いビジネスを展開している。その核となっているのが、オブジェクト指向技術を使用して構築された、顧客情報を管理する商用システムである(図4参照)。同システムは、全日空および全日空グループの各種システムのコンサルテーションと開発、運用、保守を行っている全日空システム企画梶i以下、ASP)とNTTコムウェアとの協業により、2002年3月に完成した。同システムの開発を担当した、ASP航空旅客システム事業部CRMシステム部の阿部恭一部長は、開発の背景について次のように語っている。


図4 オブジェクト指向技術を使用したシステムの概要

 「我々全日空および全日空グループでは、行動指針にもあるように『お客さまの声』に徹底してこだわった事業ならびにサービスの提供を展開しています。これを実践していく上でのポイントは、全社員がお客さま一人ひとりに対してより最適な対応を考えていくこと。具体的には、常に社員一人ひとりがお客さまのニーズに対して充分な対応が行えるよう、顧客情報を分析・管理し、この情報(データ)を全社レベルで活用していくことです。この対策として、全日空では1996年よりお客さまの情報を分析・管理するCRMプラットフォームの開発に着手し、各種事業およびサービスに付加価値を生み出すデータウェアハウスを構築しました。以来、お客さま一人ひとりの情報の分析・管理を行ってきましたが、月日が経つにつれてデータ量が増大し、パフォーマンスやレスポンススピード、トランザクション能力等に課題が生じてきました。そこで、約650 万件にもおよぶ大量のデータベースの移行とともに、既存システムを上回る高性能、高信頼性のシステムを実現するために、大規模プロジェクトの実現に最適なオブジェクト指向技術を使用したシステム開発を、NTTコムウェアさんの協力のもと2002年3月の完成をめざして、2001年5月から開始しました。」

 また阿部部長は、SIerとしてNTTコムウェアを選んだ理由を次のように語っている。

 「NTTに関連したさまざまな大規模システムを構築してきた実績と、弊社の既存システムと新たに構築するオブジェクト指向技術を使用したシステムとのハイブリットモデルを提案していただいたからです。そして構築後、24時間365日にわたり同システムを保守・監視していただける強靭なサポート体制が選択の決め手になりました。」

■リスクの高い部分から問題を解決

 全日空システム企画
 航空旅客システム事業部
 CRM ステム部 第一チーム
 チームリーダー
 部長 阿部 恭一氏

 このプロジェクトは、オブジェクト指向技術を使用したシステムとしては、対象となるデータベース量や処理しなければならないトラフィック量といった規模ではワールドワイドでトップクラスのものである。同システムの構築にあたり、NTT コムウェアでは、米国ラショナルソフトウェア社が開発した「RUP」をベースとした高速反復型開発プロセスに従ってプロジェクトを進めていった。開発手法としてRUPをほぼ全面的に適用したシステムでは、国内では最大規模のプロジェクトである。

 RUPの主な特徴として次のような事柄があげられる。重要なタスクを定義し、設計、実装、試験を行う「ユースケース駆動」、ミニウォーターフォールを連続して実施する「反復型のプロセス」、システムの屋台骨であるアーキテクチャーを先に構築していく「アーキテクチャー中心の開発プロセス」、そして、リスクの高いユースケースから順番に実装までを行い、さらにデモンストレーションも行う「リスク駆動」。これらの特徴を踏まえて、NTTコムウェアでは、次の4 つのフェーズ計画を設定した。

@方向づけ:目標全体を大まかに決め、開発の初期計画を立てる
A推敲:リスクの高い重要な部分から先に取り組むことで、アーキテクチャーを決定する
B作成:全体を作り上げる
C移行:完成させ、運用を開始する

 オブジェクト指向技術を使用したシステム開発のポイントは、従来のウォーターフォール型ではなく、反復型の手法を用いているところである。反復型による開発では、要求分析と設計という上流工程を重視し、短期間に設計から実装、試験までをタスク毎に連続して行っていく。同プロジェクトのフェーズでは、それぞれの要求に対して次のような反復を行った。@方向づけでは、開発企画書を作成するための情報を収集した。A推敲では、システムの詳細な目標と開発範囲、アーキテクチャーを定義し、主要リスクが解決されていることを検証した。B作成では、完全なシステムを構築した(この段階では、要求はかなり安定していなければならない)。そしてC移行では、通常はこの段階での要求の変更は行わないが、システムに新しい機能を追加することが決定された場合は、作成での反復と同様の反復(および生成される結果)を行った。

■共通の言葉で意思の疎通を実現

 今回のオブジェクト指向技術を使用した開発について、ASPの阿部部長は次のように語っている。

 「決められたフェーズとステップに沿って計画を立案し、各マイルストーン(ビジネスの決定を下すポイント)で細かくステータスをチェックすることができたので、計画通りに構築することができました。中でも、リスクリストで計画的にリスクの抽出を行い、リスクの先送りを防止することができたのが、プロジェクト成功の第一の要因ではないでしょうか。また、簡潔で簡単な文章により重要タスクを書き記したユースケースという共通の言葉(認識)があることで、NTT コムウェアさんとの意思の疎通がスムーズにできました。」

 同システムは、本格稼働から約1年が経過し、データベース量も増加し続けているが、大きなトラブルもなく順調に運用されている。

 

 


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