●ITビジネスの次なる進化−Webサービスの実現に向けて

XMLの動向と技術等の方向性


XMLコンソーシアムエバンジェリスト
日本ユニシス梶@サービスビジネス開発本部
小林 茂氏

 最近の情報技術(IT)の発展には目覚しいものがある。その基盤技術の1つとしてXMLが注目を浴びている。XMLは、電子データに対しマークを付けるための方法を規定する標準であり、W3Cで1998年2月に勧告されている。インターネットを活用したビジネスシーンで、XMLに適合した言語が定義され、様々な利用法のもと実用化され始めているため、より重要性を帯びてきている。

■XMLの標準化動向・利用状況

 XMLに関連する基盤となる標準は、主にW3Cで規定され、より応用的ではあるが共通基盤的なものは、OASISで規定され、特定の応用分野での標準化は、業界や企業群を中心に標準化される傾向がある。たとえば、W3Cでは、XMLスキーマ、スタイルシート、XLink、XPath、XML Query、SOAP、WSDLといった標準化が行われており、OASISでは、Webサービス登録・検索用のUDDI 、汎用ビジネス向けのUBL (Universal Business Language)等が検討されており、電子商取引に関するebXML、認証情報交換用SAML(Security Assertion Markup Language)、アクセス制御用のXACML(eXtensible Access Control Markup Language)等が標準化されている。

 特定の業界の標準としては、財務諸表に関するXBRL(eXtensible Business Reporting Language )、ニュース管理用のNewsML、金融情報交換用のIFX などが米国を中心として標準化されている。情報機器、半導体・電子部品、半導体製造業界を中心に多くの先進的な企業が参加するRosettaNetでは、サプライチェーン構築に関する標準化を策定・推進している。XBRL、NewsML、RosettaNetなどは日本でもそれらを普及させる組織が設立されており普及・啓蒙活動が行われている。

 日本における標準としては、出版業界におけるJepaX 、医療業界の電子カルテ用MML(Medical Markup Language)、電子地図情報用のG-XML、連絡先記述のためのContact XML、旅行業界での商取引に使われるTravelXML(策定中)などがあげられる。これらの業界別または業界横断の情報について、今後さらにXMLが利用される傾向にある。

■XMLの技術動向

 これらの特定のXML言語で共通に利用されるべく、XMLのモジュール化が行われ、様々な標準がモジュール化された標準を組み合わせて利用する傾向にある。たとえば、Webページの記述言語であるHTMLをXMLの文法に従って再定義し、W3Cで勧告されたXHTMLでは、機能的にモジュールに分割されている。その一部だけを用いたXHTML Basicは、モバイル機器向けの標準として勧告されている。2次元グラフィックスを表現するSVGや数式を表現するMathMLなど他の標準で定義されたモジュールを利用して、HTML機能を拡張する仕組みも提供されている。またこれらのモジュールを利用して、固有のXML応用言語に適用し、XLinkで規定する属性表記をハイパーリンクの表現として用いることによって、様々な応用に共通に利用できる環境が提供されることになる。

 またビジネス分野での利用では、インターネット上をXMLデータが飛び交うため、セキュリティ確保に必須となる暗号化、電子署名などの標準も定められ、モジュールとして利用したWebサービス上の標準化がなされている。

■XML普及への課題

 これらの標準化作業が続く中で、実際のビジネスで利用されるには、それらの標準的な技術を扱える環境が普及していることが前提である。XMLに関わる諸技術を容易に扱えるツール群の整備と特定なインフラ、製品に依らない相互運用性のある環境が必要である。

 また、ビジネス上のXML データのやり取りに要する共通的なスキーマ、プロトコルの認識も必要である。一例として、SOAP、WSDLを利用したWebサービスの普及があげられる。また、ビジネスデータ上の型を共通的に保持するには、W3Cで勧告されたXMLスキーマが広く使われるようになることが望まれる。XMLの利用環境が整備されるためには、ベンダーによるツールの提供、種々の標準を利用する利用者側の理解、業界や多くの企業間主導による共通な言語の開発が必要であり、これが現状での大きな課題となっている。

 XMLに関わるツールは、多くのベンダーから利用しやすい製品が出てきており、どのツールを利用しても、お互いに情報のやり取りがスムーズであることが重要なポイントである。Webサービスに関わる相互運用性の確保については、WS-Iでの活動やコンソーシアム活動などを通じて検証されつつあり、利用上のガイドライン策定やツールの整備により、徐々に問題解消の方向に進んでいる。

■XMLの普及・啓蒙活動

 XMLを普及・啓蒙させる目的で、日本では2000年7月にXMLコンソーシアムが発足している。詳細は、別記事を参照してほしいが、そこでは月例セミナーや部会活動の成果発表などを通して、XMLに関する最新の情報を得ることができる。電子商取引推進協議会(ECOM)では、XML/EDI標準に関する情報提供やセミナー開催が行われている。多くのベンダーのWebページや@ITのXML&Web ServicesフォーラムなどでXMLに関する基礎知識から適用方法、事例など多くの情報が得られ、各種のイベントやセミナー、書籍でもXMLに関する情報が得られ、誰もが様々な情報を入手できる環境は整っている。XMLの標準的知識レベルを認定するXMLマスター試験も登場している。

 XMLはひところの熱狂的なブームは去ったとみなされているが、これはXML適用の理解が浸透してきており、すでにインターネットを介したビジネスシーンでは、当たり前に適用されるという共通認識が確立されたからである。

■XML今後の展開

 現在ではXML利用を前提にWebサービスが議論の的となっている。Webサービスを実用化し普及させる前提として、セキュリティ、トランザクション、信頼性といった中間層を構成する技術の整備も現在進められている。

 インターネット上に散らばる様々な情報に対して、コンピュータが理解できる意味を扱うセマンティックWebという概念が研究・検討されはじめている。これは情報コンテンツに対し、そのコンテンツの属性を示すメタ情報を与え、メタ情報のクラス階層を利用することによって、人手を介することなくコンピュータがコンテンツの意味を解釈し、人間にとってより有益な情報利用の手段を提供するものである。利用する標準としてメタ情報を表現するためのRDF(Resource Description Framework)やクラス階層を表現するOWL(Web Ontology Language)がW3Cで提案・検討されている。

 現在、XMLそのものに関する検討も行われている。XMLで規定する文書型定義(DTD)という概念は、名前空間を利用したモジュール化推進の方向性とは、そぐわないものになっている。これを見直そうとXML2.0の提案の動きもある。XMLは、XML関連技術の基盤ともなる重要な標準であり、これを大きく変えることは、他への影響が大きく慎重に構えなければならないことは言うまでもない。

 現状では、XMLがどう使えるのか、何に適用できるのかと言った議論をしている段階ではなく、ビジネスシーンでXMLをどう適用することによりメリットを最大限に引き出せるのかを具体的に考える段階にきており、具体的かつ実用的な方法が提案・実施されると考えられる。

<参考URL>
W3C(http://www.w3.org/)
OASIS(http://www.oasis-open.org/
@IT XML&Web Servicesフォーラム
http://www.atmarkit.co.jp/fxml/index.html

 

 


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