西日本電信電話(株) 
代表取締役副社長
ブロードバンド推進本部長
江部 努氏

 

 


 NTT西日本は7月1日、さらなる収益拡大に向けブロードバンド戦略を一段と加速する組織改革を実施。BB アクセスサービス部とBB アプリケーションサービス部からなるブロードバンド推進本部を軸に、“光”サービスへの積極的な取組みを行っている。今年度、Bフレッツ50万回線純増を目指すNTT西日本のブロードバンドビジネスの現状について、組織改革の狙いを含め、ブロードバンド推進本部長である江部努代表取締役副社長に聞いた。

ブロードバンドの牽引役は
ADSL、伸び率はFTTH、
サービスレベルは世界一

―初めに、ブロードバンド市場の現状をどのように捉えていますか

江部 ブロードバンド市場につきましては、総務省が「インターネット接続サービスの利用者数等の推移」を毎月発表していますが、ADSLとFTTH、CATVのいわゆるブロードバンドアクセスの加入者数が本年5月末には1000万を突破して、8月末現在、1200万弱となっています。特に、この1年間の伸びは著しく、前年同期比で約2倍になっています。このように、日本全体でブロードバンド化がもの凄い勢いで進んでいるといえます。この1年間、ADSLがブロードバンド化の流れを牽引してきたことは間違いありませんが、伸び率で見るとADSLの2倍強に対し、FTTHの伸び率は6倍強となっています。ブロードバンドのアクセスライン全体に占めるFTTHの割合もこの8月末で5%を超え、“光”の市場が本格的に立ち上がる兆しが見えてきたというのが最近の特徴であると捉えています。
 また、総務省は毎年全世界主要6都市の電気通信サービス料金を比較した「電気通信サービスに係る内外価格差調査」を行っていますが、9月25日に発表された平成14年度の調査結果によると、インターネット常時接続の料金は世界で一番安く、速度も最も速いと報告されており、ブロードバンドのサービスレベルは主要先進国の中でもトップの水準にあるといえます。
 このような状況の中、特に、関西圏は全国的に見て、FTTHの導入が進んでおり、「光先進エリア」と言っても過言ではありません。全国のFTTH加入数に占める関西圏の割合は30%弱と推定されますが、これは、固定電話の関西比率が17%程度となっていることを考えればおわかりいただけると思います。関西圏では、電力系事業者をはじめとする他事業者との競争が激化しており、お互いに頑張って切磋琢磨しながらFTTH化を加速した結果であり、関西圏にとって良いことだと考えています。

ブロードバンド・ビジネスを軸として
黒字体質確立に向け
3本部制に


―この7月、ブロードバンド戦略を加速する組織改革を実施されましたが、その狙いとポイントは。

江部 平成11年にNTT西日本が発足し、非常に苦しい3年間を経て、平成14年度に449億の経常利益で初めて黒字を達成しました。しかしこれは、財務基盤の建て直し、経営の自立化を図るために行った、コスト削減を中心とした「構造改革」によるものであるというのが正直なところです。マーケットの動きは、固定電話が縮退の一途をたどる一方であり、減収基調にあることは間違いありません。右肩下がりの縮小均衡という状態で、企業の活力を維持するのは難しいわけで、何とか成長路線となる新しい樹を育てることが重要です。それがブロードバンドであり、ここに活路を見い出そうということです。企業として、黒字体質の確立というのはもちろん重要ですが、それと同時に、ブロードバンドは社会構造やビジネスの活動そのものを大きく変える可能性を秘めた広い意味での社会インフラです。ここに力を注ぐことで、世の中を大きく変革するという心意気を持ち合いたいという思いが強く、ブロードバンドにできる限りの経営資源を注力する体制に変革する時期がきたということで、7月に組織の見直しを行いました。
 ブロードバンド、“光”の世界は、設備も含めこれから創る部分が多いわけです。これは、既存の電話の世界のような職能別組織とは少し異なり、インフラを整備し、その上で展開するサービスの開発、販売、そしてメンテナンスまでトータルに一元的に担当する仕組みが必要ということで、「ブロードバンド推進本部」を設置しました。同時に、ライフラインとして重要な役割を担っている既存の電話事業を効率的に運営するための「基盤サービス推進本部」、法人向けにワンストップのソリューション事業を展開する「ソリューション営業本部」と合わせ、3本部制を導入しました。

―ブロードバンド推進本部の内部構成は。

江部 推進本部は、アクセスサービスをクリエーションし販売する「BBアクセスサービス部」とアプリケーションサービスやコンテンツの開発など、利用シーンを創出する「BBアプリケーションサービス部」からなっています。ブロードバンドサービスをいかにお客様に使っていただくか、そのためのすべての機能を推進本部内に盛り込んでいます。


     図1 組織改革による業務移行イメージ

ブロードバンドサービスの本命“光”に注力

―ブロードバンドに対する取組みの現状をお聞かせください。

江部 7月に推進本部を新設しましたが、NTT西日本では平成15年度以降ブロードバンドに注力していくという方針を明確に打ち出し、以前から様々な取組みを行ってきました。ブロードバンドについては、既存のメタル線に重畳する形で比較的容易にサービス提供できるADSLがブロードバンド化の流れを加速したという点で大きな役割を果たしてきましたが、やはり本命は“光”です。冒頭、お話したように、ここにきて“光”の市場が本格的に立ち上がる兆しが見え始めました。
 “光”を中心に、これをいかに普及・拡大させるかに最大の重点を置いて、様々な取組みを行っています。年度当初に、「Bフレッツの年間50万純増」という意欲的な販売目標を設定しましたが、これはNTT西日本グループ全体の力をそこに結集しようという内部に向けたメッセージでもあります。


        図2 B フレッツ契約者の推移

―「Bフレッツ」純増50万達成に向けた施策も含め、ブロードバンドサービスの具体的な取組みについてお聞かせください

江部 ADSLがこれだけ急激に普及したのは、なんといっても料金の安さにあります。“光”のほうがいくら優れているといっても、料金的にも魅力がなければ普及に結びつきません。そこで、料金の高さがハードルにならないように、いち早く戦略的な価格設定を行った上で、キャンペーン割引も導入してきました。また、提携いただいているISP様によるBフレッツの工事費無料キャンペーンも昨今の加入促進の追い風となっていると受けとめています。
 こういった料金面での施策に加え、アクセス網の光化投資についても、年間1500億円規模での思い切った投資を行います。これまで、き線点(配線点)までの光化は政令指定都市及び県庁所在地級都市のビジネスエリアを中心に、西日本エリア全域で整備を進めてきましたが、光配線系を含めお客様のラストマイルの光の整備は、これからです。“光”のお客様が増えることによって、コンテンツホルダーをはじめ、様々な事業者様がそこをターゲットにいろんなビジネスを展開されるということで、アクセス網の光化に思い切った先行投資を決定しました。さらに、サービス開始までの工事期間をいかに短縮するかという、オペレーションサイドの課題にもグループをあげて積極的に取り組んでいます。
 合わせて、ビジネス市場におきましては、光ファイバを利用した法人向けブロードバンドサービスとして「メガデータネッツ」「ワイドLANプラス」「アーバンイーサ」「フラットイーサ」等を提供しており、これらのサービス拡充にも注力しています。

―アプリケーションサービスに対する具体的な取組みについてもお聞かせください

江部 “光”がブロードバンドの本命という最大の理由は、広帯域であることと、ADSLと比べ、交換局からの距離に関係なく安定的な高速通信が行えるという点に加え、上りの速度が圧倒的に違うという点です。
 こういった“光”の特長を活かした利用シーンをいかに創出していくかというのが極めて大きなポイントです。現在、その創出に向けては大きく3つのジャンルに分けて取り組んでいます。1つ目は、双方向の高速・広帯域通信という特性を活かした「コミュニケーション・コラボレーション」分野、2つ目は“いつでも、どこでも、誰(何)とでも”つながる環境を実現する「ユビキタス」分野、3つ目は高品質なコンテンツを取り扱う「リッチコンテンツ配信」分野です。
 この3分野の具体的なサービスとしては、映像等による多様なコミュニケーションを実現する「フレッツ・コミュニケーション」や、企業向けに低価格でVPNが構築できる「フレッツ・オフィス」「フレッツ・グループ」、無線LANアクセスサービス「フレッツ・スポット」、映画・アニメーション・ライブ中継・ゲームなど様々なリッチコンテンツ(図3参照)の配信を実現する「フレッツ・スクウェア」などがあります。なお、これらの取組みについては、今後ともNTTグループや他事業者様との連携を図りながら更に発展させて参ります。


   図3 リッチコンテンツの例(DisneyBB on フレッツ)

―本年2月、地域IP網の県間接続によるフレッツサービスの広域化が可能になったことでのメリットはどのようなものでしたか。

江部 府県単位という枠が取り除かれたことにより、NTT西日本提供エリア内の府県を跨ぐ形で通信を可能とするフレッツサービスの提供が可能になりました。これにより、例えば同一府県内での通信に限られていた「フレッツ・コミュニケーション」が、他府県のお客様との通信も可能になるなど、利便性が一段と向上しています。また、府県を跨る企業の拠点間ネットワークが容易に構築できるようになりました。十分な手応えを感じた上半期

―ブロードバンドビジネスについて、上半期の状況はいかがでしたか。

江部 9月末現在で、NTT西日本が提供する「フレッツ・シリーズ」全体で230万回線を突破し、NTT東日本と合わせると500万回線に達しました。特にBフレッツに関しては、前述した割引サービスやISP様による工事費無料キャンペーンなどの施策、さらには映画やアニメなどの魅力あるコンテンツの充実により、月々の純増数が増え、右肩上がりが続いていますので、大いなる手応えを感じています。また、併せて、光を活用したビジネス向けサービスも好調な実績を示しております。
 今年度の当初目標「Bフレッツ年間50万純増」は、高い目標ですからそう簡単ではないと思いますが、その方向に向かってかなりの勢いで進んでいるという感じは持っていますね。


図4 レゾナントコミュニケーション環境実現に向けたアプローチ(イメージ)

「“光”。ひろがる。ひびきあう。」を
スローガンに“光”サービスを展開


―今後の展開についてのお考えをお聞かせください。

江部 ブロードバンド推進本部を設けた狙いは、前述したように電話に変わる新しい事業の柱を創りたいという思いがあると同時に、“光”をベースにして世の中が大きく変わる可能性がある、あるいは社会の様々な課題をクリアできる可能性を秘めたサービスであるということで考えると、それを少しでも前倒しにする、ドライブする役割を我々としてはぜひ担いたいという強い思いがあります。とにかくそこに向かって、さらに突き進んでいきたいですね。これから技術もさらに進歩すると思いますし、NTTグループの持てる技術力を結集する形で、“光”ならではの新しいサービスを積極的にお客様に提供していくことに全力を傾けていきたいと考えています。

―非常に魅力あるマーケットだけに、競争も激しい。

江部 他の事業者さんも意欲的に取り組まれていますので、確かに競争は激しいです。他事業者と競争する中で、“光”による新しい社会を創っていきたいと思います。しかし、我々として一番納得できないのは規制の問題です。前述したように、アクセスラインの光化はこれからで、相当な先行投資が必要です。これは本当にお客様がついて、しかもかなり長期間お使いいただいて何とかビジネスとして成り立つというもので、かなりのリスクを負ってチャレンジしているわけです。こういった新しいサービス分野で、旧来と同じ規制が適用され、NTTの光設備だけが指定設備として公定価格で誰にでも貸さなければならないという仕組みは、正直なんとかして欲しいという思いが強いですね。是非、ビジネスベースで取引ができる仕組みに改めて欲しいと思っています。

―最後に、この10月からは“光”サービスへの取組みを示す新しいスローガンを掲げられましたね。

江部 持株会社の「“光”新世代ビジョン」に呼応した新たな企業メッセージとして、「“光”。ひろがる。ひびきあう。」という全社的スローガンを掲げました。これは、“光”=ブロードバンドに対する期待感や可能性が感じられ、「成長と創造」、そして「価値の共有」という概念を表現したものです。レゾナントコミュニケーション環境実現に向けての、NTT西日本のビジョン・社会的使命を表す企業メッセージであり、“光”サービスへの取組みを示す新しいコンセプトワードです。この新しい企業メッセージによって、“光”の本質的な優位性を社会に浸透させるとともに、NTTグループとして推進しているレゾナントコミュニケーション環境の実現に向けて、積極的な役割を果していきたいと考えています。

―本日は有り難うございました。

(聞き手・構成:編集長 河西義人)


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