●今私が気になる技術と人材
株式会社NTTドコモ
MM事業本部 
MMアプリケーション開発部長
三木 茂氏


上流工程の段階から
プロジェクトに参画して、
市場やお客様のニーズ
に即したシステムを
開発していく

iモードに続く、第2、第3の柱となるビジネスを創出

―はじめに、現在のお仕事につい
てお話していただけますか。

三木 現在のNTTドコモには、かつての電電用語でいう「非電話系統」のサービス開発に取り組んでいる事業本部が、i モード事業本部とMM事業本部の2つあります。2年ほど前までは、両事業本部はともにMM事業本部として1つの組織の中にありました。それが、i モードビジネスの拡大により、i モードビジネス部が事業本部として独立をして、現在の体制になりました。新たなMM事業本部は、クロスメディア、ユビキタス、エマージングの3つの事業部(ビジネス部)を中心に、それぞれの領域に向けたサービスの開発を行っています。そして、MMアプリケーション開発部は、各ビジネス部が開発したサービスを支えるシステムを開発する、横断的な位置づけにある組織です。

― MM アプリケーション開発部が開発するシステムとは、NTTドコモのネットワークの中で、どの部分にあたるのでしょうか。

三木 コア・ネットワーク上にあるプラットフォームを開発しています。このプラットフォームを「mopera(モペラ)」と総称しています。また、最近開発を手がけたサービスには、呼出音をお好みのメロディに設定できる「メロディコール」があります。

― MM 事業本部のミッションについてお話していただけますか。

三木 iモードに続く、NTTドコモの第2、第3の柱となるビジネスを開発することです。NTTドコモは、今後の経済・社会活動のIT 化やグローバル化に対応した経営戦略として「マルチメディア化」「ユビキタス化」「グローバル化」を掲げ、新たな成長を目指した事業を展開していますが、MM事業本部は、その全てに対してアプローチを行っている部門になります。

NTT ドコモのブランド力と低コストで利便性の高いサービスを支える技術に注目

―このような取組みを展開されていく中で、現在関心をもっている技術についてお話しください。

三木 昨今、さまざまな分野でネットワークのIP化が進んでいますが、NTTドコモでも、ネットワークをIP化へと進める動きがあります。その中で、より高度なIPネットワークを実現するための技術である「MPLS(MultiProtocol Label Switching)」や、光ネットワーク上の信号をルーティングする「GMPLS(Generalized MPLS)」に注目しています。市場とお客様に、低コストで利便性の高いネットワークを提供することと、NTTドコモの経営戦略でもあるユビキタス化に不可欠なIPv6に対応したサービスを提供していくには、NTTテhテRテツのネットワークにも、これらの技術が必要になると思います。

―システム開発に関連した技術で関心がありるものはありますか。

三木 システム開発には、常に「QCD」というニーズが求められます。Qは品質(Quality)、Cはコスト(Cost)、Dは期間・納期(Delivery)です。この3つのニーズに、いかに効率よく応えていくかが課題になります。MM事業本部がビジネスを展開しているフィールドは、常に“競争力”が求められています。いかに他社より先にサービスを提供していくか、あるいは、他社が出したサービスを素早くキャッチアップできるサービスを提供していくか、といったことが求められています。そこで重要になるのが、開発期間の短縮です。しかし市場やお客様は、NTTドコモに対して高い品質を求めていますので、それ相応の期間やコストが必要になります。つまり、市場からの要求と我々の責任とが相反する中で、うまく互いを調整して、開発に取り組んでいかなければならないのです。このような課題を解決する技術・スキルとして、「UML(Unified Modeling Language)」や「RUP(Rational Unified Process)」などを活用しています。今年の5月からサービスを開始した、SSL対応のiモード対応携帯電話機による決済サービス「DoCommerce」は、UMLを活用して開発しました。

― NTT ドコモの“強み”は、その「ブランド力」、いわゆる信頼性だと思いますが、やはりこの部分を支える技術にも関心がありますか。

三木 モバイルマルチメディアの世界で新しいサービスを提供する際は、品質が最も重視されますし、それは開発においても同様です。しかし、品質にも効率よく対応していかなければなりませんので、最近では、SLA(Service Level Agreement)の概念を取り入れて、個々のサービスの必要性とコストとのバランスを踏まえたQCDを設定し、開発を進めていくことも行っています。

ビジネスマインドやマネージメント力が不可欠

―人材に関しては、どのような資質が求められているとお考えですか。

三木 その年度の事業計画を立てる際に、さまざまな施策を打ち出しますが、中でも人材育成は重要な柱になっています。アプリケーション開発部はSEの集団ですが、SEには、「ビジネスマインド」や「マネージメント」といったスキルも不可欠になっています。各ビジネス部が決めたサービス仕様に基づいて単にシステムを開発していたのでは、期待以上のシステムはできません。サービス仕様を決める段階からプロジェクトに参画して、市場のニーズやお客様のビジネスに即したシステムを開発していくことが大切です。また、1つのプロジェクトは、できる限り少人数で取り組むことがベストですので、それぞれのSEの能力を引き出すマネージャーには、「プロジェクトマネージメント」や「リーダーシップ」といったスキルが必要です。さらに、各ベンダーとのやり取りを行う担当者(SE)にも、プロジェクトマネージメントのスキルが必要です。

― MM アプリケーション開発部は横断的な組織ですので、各ビジネス部とのコミュニケーションが重要だと思われますが。

三木 我々の視点からも「サービス仕様を提案していこう」という姿勢でプロジェクトを進めていくようにしています。今年の7月からサービスを開始した、法人向けリモートアクセスサービス「BINWAN」は、我々がアイデアを出して生まれたものです。このようにサービスの内容に対しても積極的に提案していくことで、各ビジネス部とのコミュニケーションを図っていきたいと考えています。

―本日はありがとうございました。

(聞き手:本誌副編集長 菊地勝由)

 

 


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