【NTT コムウェア】

医療データ伝送の標準化規格で全国初救命率の
向上を実現する
「モバイル・テレメディシン」の実効性確認
―2005年度の試行運用を目指し―

 NTTコムウェアが参画する、「循環器救急おけるモバイル・テレメディシン研究会(代表:国立循環器病センター緊急部長:野々木宏)」は、救急車から患者データを病院にリアルタイム送信し、的確な早期診断と適切な搬送先病院決定で救命率向上を実現するモバイル・テレメディシンの実証実験で実効性を確認した。
 救急車に関係機器を搭載した救急患者搬送想定実験で、医療用データ伝送の標準規格採用での運用は、全国で初めてである。

システム開発の背景

 21世紀を迎え我が国では高齢化が進んでおり、要介護要因の主な原因である心筋梗塞・脳卒中などへの対策は重要である。近年これらの疾患に対する治療は集中治療室の整備、再灌流療法の普及などにより病院内死亡率は大幅に改善されている。しかし、急性心筋梗塞症では死亡の半数は院外で発生しているとされ、致命率は依然として26〜 40%と低くない。これを改善するためには発症から出来る限り早い診断と専門治療が必要と言える。
 近年、情報機器の小型高性能化や移動体通信の高速化・低価格化が進み、モバイル・テレメディシンという新分野が急速に発展している。日本は欧米と比較して商用移動体通信の開発・普及が進んでおり、これらを用いたシステム開発に適している。

現状の救命救急への取り組み

 救急車と病院間でのコミュニケーション手段の多くは、消防無線や携帯電話を利用した音声によるものだ。そうした中、高規格救急車を中心に、心筋梗塞や不整脈などの診断に役立つ12誘導心電図伝送システムの配備が進められているが、互換性がないシステムで専用受信機が必要、操作が煩雑、伝送時間が長い、などで十分に活用されていない。また、救急車と病院とのデータ伝送では、さまざまな取り組みがなされているが、専用システムによるものが多く、汎用性を欠き、容易に水平展開できない状況である。

実証実験の概要

 実証実験では稼動する救急車に、心筋梗塞や不整脈などの診断に役立つ12誘導心電計、心電図・血圧・血液酸素飽和度などを表示するベッドサイド・モニタ、病院側で操作し患者の状態をモニタリングするネットワーク・カメラ、これらの機器を接続しデータを伝送するためのNTTコムウェアが開発した超小型Linuxサーバ「L-Box」を搭載する。
データは簡単な操作で、超小型Linuxサーバ「L-Box」を介し、第三世代携帯電話(W−CDMA)により国立循環器病センターへ送る。同センターでは、市販のパソコンにより、リアルタイムに伝送されたデータを閲覧できる。音声に加え患者の生体情報や画像をリアルタイムで伝えられるようになり、救急救命士と医師とのコミュニケーションが充実し「救急救命士への的確な指示」、「専門病院への適切な搬送」、「病院到着前診断による早期治療体制の確立」などが可能となる。データの伝送にはInternet Protocol と医療用波形データ伝送の標準規格として期待されるMFER* 1 ( Medical Waveform Format Encoding Rule)などを採用したことで、利用機器や伝送方式に依存しない汎用性を有している。また、さらなる診断精度の向上を見据え、SOBA*2(Session Oriented Broadband Applications)フレームワークを用いて、セキュリティを保ったまま、離れた場所の複数の医師で伝送されたデータが見られるよう、将来性と拡張性を兼ね備えたシステムである。

これまでの取り組みと今後の展

 循環器救急おけるモバイル・テレメディシン研究会は2002年7月、循環器救急に役立つシステム開発を目標とし発足、研究開発に着手した。2003年4月には、プロトタイプを開発し、データ伝送に成功している。救急車を利用した実証実験は2003年12 月に開始し、これまで模擬データの伝送で操作性、実用性、安全性の検証により、実効性が確認できた。今後、健康生体のデータ伝送を経て年末までには、救急患者へ試験的に適用する。その結果を踏まえ関係機関と調整のうえ2005年度には、救急患者に常時対応できるよう、救急車へ関連機器常備による試行運用の開始を予定している。また、実証実験や試験的な運用を通じて関係各機関には、救急医療現場への導入、救急救命士に対する常時指示体制や事後検証体制の充実といったメディカル・コントロールへの活用を働きかけ、医療の質の向上を目指す。
 これまでの取り組みについては5月3日、米国フロリダ州タンパで開催の米国遠隔医療学会で発表し、大きな反響を得た。


       
モバイル・テレメディシン・システム構成

■研究会構成メンバーの役割

・国立循環器病センター(大阪府吹田市、総長:北村惣一郎)

 救急現場のニーズ(重症度を判断するトリアージと患者を適切な病院に振り分けるディスパッチ及び救急救命士が行う処置を支援するプレホスピタルケア)と、技術のシーズを結びつける橋渡し。

・NTTコムウェア株式会社(東京都港区、代表取締役社長:松尾勇二)

 Linuxをベースに開発した超小型サーバの提供と、モバイル・テレメディシンのシステム開発全般。

・日本光電工業株式会社(東京都新宿区、代表取締役社長:荻野和郎)

 12誘導心電計とそのインタフェース仕様情報の提供。

・フクダ電子株式会社(東京都文京区、代表取締役社長:福田孝太郎)

 心電図、脈拍、血圧などのデータを表示するベッドサイド・モニタとそのインタフェース仕様情報の提供。

・松下電器産業株式会社ヘルスケア社(横浜市都筑区、社長:西田順紀)

 遠隔操作対応の小型ネットワーク・カメラの提供。

・独立行政法人産業技術総合研究所関西センター(大阪府池田市、所長:請川孝治)

 モバイル・テレメディシン研究会全体のコーディネイト。

※吹田市(協力)
 救急車の提供と救急救命士による協力。

用語説明

*1 MFER (Medical Waveform Format Encoding Rule):医用波形標準記述規約で、心電図、脳波、呼吸波形など医用波形を相互利用するための標準規約。日本の学界やメーカーが中心となってISO などに国際規格として採用を働きかけている。http://www.medical-storage.co.jp/MFER/

*2 SOBA (Session Oriented Broadband Applications):インターネット上に、仮想的かつ動的な「コミュニケーションの場」を構築するためのフレームワークで、P2P方式で実現している。http://www.soba-project.org

お問い合わせ先

NTTコムウェア株式会社
広報室
kouhou@nttcom.co.jp

 


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