●今私が気になる技術と人材
NTTアドバンステクノロジ株式会社
アクセスネットワーク事業本部 
ワイヤレスシステム事業部 事業部長
工学博士



優れた人材と技術力を結集し
無線・EMC事業の拡大と
新たなビジネス領域の創出を目指す

■無線技術とEMC 技術の両分野の技術者集団

―はじめに、現在のお仕事についてお話していただけますか。

 私どものワイヤレスシステム事業部では、高速無線LANをはじめとした各種無線システムや無線装置の設計・開発、無線ネットワークの構築支援、応用製品の販売、調査をはじめとした電波伝搬調査や置局設計業務、ならびに電磁環境の設計・評価に関連したビジネスに取り組んでいます。人材的には、無線関連技術とEMC(Electoro-Magnetic Compatibility:電磁環境両立性)技術の両分野の技術者が集まっており、無線システム技術部、電波設計技術部、EMCセンタの3つの組織で構成されています。

―幅広い事業領域の中で、力を注いでいる取組みは何でしょうか。

 2003年に、新たな事業として「ATSPOT」という無線ネットワーク構築支援サービスを立ち上げました。これは、当社の電波シミュレーションソフト「QualityMeister 3D」と「LOSFinder」、ならびに、無線方式や電波伝搬、電磁環境に関する技術とこれまでの経験をベースにしたサービスです。具体的には、近年、普及が加速しつつある高速無線LANの企業各社オフィスビル商業施設などへの導入や、通信事業者・自治体などの高速無線ネットワーク・無線エントランス回線の構築を、無線ネットワーク・コンサルティングやエリア内の電波調査、利用者ニーズ調査、サービス企画・実験支援といった各種業務からサポートしていきます。発表後、各方面の方々から多くの問い合わせをいただき、現在、当事業部の主要事業のひとつにしようと取り組んでいるところです。
 また無線関係の事業としては、高速無線LANの設計技術移転や、マルチキャリアグループモデムモジュールの開発、FPGA/LSI設計開発、アダプティブアレーアンテナの応用とその制御技術、電波伝搬調査、伝送特性の測定・解析、電波シミュレーションソフトの開発・販売などにも力を入れています。

―EMC をはじめとした電磁環境関係事業では、どのような取組みをされているのでしょうか。

 近年、パソコンやサーバの普及が進む中で、電磁波による情報漏えいや、高出力送信機による装置・データの破壊など、いわゆる電磁波セキュリティの問題が注目されています。当事業部のEMC センタでは、EMC・電磁環境技術に関する経験をベースに、その評価・対策技術を中心とした電磁波セキュリティ分野の事業に取り組んでいます。EMCセンタでは、この他、病院や工場、オフィスなどの電磁環境調査・コンサルティング、各種EMC試験サービス、EMC標準化、EMC製品の開発・販売・研修など、幅広い業務にも取り組んでいます。また、各種通信装置に大きな影響を与える雷への対策についても取り組んでいます。

■実績が次のビジネスの源泉になる

―そのような取組みの中で、どのような人材を求めていますか。

 無線システムや電磁環境の設計・開発から構築・評価までを一貫してできる無線技術者を求め、育てています。それは、お客様からソリューションを求められた場合、たとえひとつの技術・知識に優れた技術者であっても、ソリューションという幅広い領域に対応するには、広い視野に立った技術や知識がなければなりません。また、業務を遂行する上では必要なことは、「ビジネスマインドの高さと柔軟性」、そして「課題探求と業務を完遂する力」だと考えています。現在、お客様に提案営業を積極的に行っていくことが求められている中で、ビジネスの目標を立案・達成し、組織業績に貢献する意志の強さと、ニーズに合わせて仕様・設計などを調整し、まとめ上げる柔軟性が求められています。それを実践するためには、ビジネスマインドの高さと柔軟性は、とても重要なポイントになると思います。

―無線システムから電波、電磁環境まで、幅広い業務領域の中で確かな実績を残すには、どのようなことがポイントになるのでしょうか。

 当事業部の業務領域は、幅広く、専門的な分野に及んでいますので、各技術者に対しては、課題を掘り下げる洞察力や先の技術に挑む意欲などが求められるケースが多々あります。また、これはあらゆる業務に共通していえることですが、最後まで粘り強く業務を完遂する能力が求められてきます。我々の業務は、実績が第一です。実績が次のビジネスの源泉になります。そのためにも、目標を正しく捉えて、ひとつひとつの業務をしっかりと完遂していくことで組織業績に貢献し、なおかつ個人の実績も積み上げていくということが大切だと思います。

■実務的・実践的な力を身に付けていくことが大切

―現在、どのような技術に関心がありますか。

 高速無線LAN 技術については、常に最新の技術に注目しています。その他の技術としては、家庭やオフィス、外出先などからシームレスなブロードバンド環境を実現する技術である「NWA(ノマディック・ワイヤレス・アクセス)」。ホットスポットなどのスポットアクセスも、このNWA のひとつの形態ということができます。そして、無線IC タグとその応用に関する技術である「RFID システム」や、データをの極めて広い周波数帯域に拡げた電波で送受信する「UWB(ウルトラ・ワイド・バンド:超広帯域)無線技術」などに注目しています。このような技術については、単に知識としてではなく、実務的・実践的な力を着実に身に付けていくことが大切だと考えています。

―最後に、これからの無線システムやEMCの市場の中で、どのような人材や技術が求められてくるのでしょうか。

 昨今、ユビキタス社会の実現に向けて、ネットワークやシステム技術が大きく変わろうとしています。また、次世代モバイルや超高速無線LAN、無線ICタグの新たな応用など、電波の利用が急速に拡大しています。今後、無線方式やEMC関係の技術や知識を身に付けた人材が活躍する場は、益々拡がっていくと思います。そのためにも、無線の知識とともに、IPネットワークやソフトウェアの知識も身に付けておくことが必要です。常に新しい技術に関心を抱き、情熱をもって仕事に取り組む中で、実務を着実にやり遂げる力のある技術者が、今“ほしい人材”ですね。


―本日はありがとうございました。

(聞き手:本誌副編集長 菊地勝由)


 



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