NTTコミュニケーションズ(株)
取締役・ブロードバンドIP事業部長
野村雅行氏
 

IP技術の進展と、ブロードバンドの急速な普及拡大に伴う企業ユーザーニーズの多様化に対応して、IP-VPNや広域イーサネットサービス、企業向けOCNをはじめとする多彩なネットワークサービスに加え、VPS(仮想専用サーバ)やCDN(コンテンツ配信ネットワーク)、VoIPといった高付加価値サービスを提供するNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)。各種ネットワークサービスから高付加価値サービスまで、統合的ソリューションの展開を目指す同社の取組みについて、野村雅行取締役・ブロードバンドIP事業部長に聞いた。

ブロードバンドの普及拡大で、
ユーザーニーズが多様化

―ブロードバンドの急速な普及拡大に伴って、企業ユーザーのニーズはどのように変化してきているのでしょうか。

野村 一つは、ブロードバンドアクセスが急速に普及拡大しているということで、企業もこうした環境をうまく利用して企業システムを構築するという方向があげられます。具体的には、家庭においても会社と同じようなブロードバンド環境があるわけですから、在宅勤務のような形態もとりやすくなっていますし、ブロードバンドアクセス回線を利用して、小規模拠点までを企業内ネットワークに取り込むような方向へと進んでいます。次に、家庭や出張先でも会社にいるのと同じような環境で仕事ができるわけですから、このようなブロードバンド環境を利用した企業内でのサービスというものがニーズとしてでてきています。具体的な例としてはVoIP、あるいはテレビ会議・Web会議などの会議系アプリケーションがあげられます。また、音声とデータの統合ということで、留守番電話の内容をメールで確認するといったユニファイドメッセージに対するニーズもでてきています。さらに、セキュリティに対するニーズも急速に高まっています。つまり、ブロードバンド環境が拡大してきたことにより、社内の機密情報の漏洩の危険性が増加していることから、セキュアな情報管理を実現するような仕組みが必要とされています。

―具体的には、どのような方法が考えられますか。

野村 例えば、メールの受信や情報の閲覧といった際に、パソコンに直接データをダウンロードできないようにするとか、メール送信時にメール内容を暗号化するといった方法があります。また、万一パソコンを紛失しても情報を見ることができないようにパソコン内部の重要なファイルを暗号化しておく仕組みも考えられますね。

4つの事業ドメインのフラグシップモデルを軸にビジネスを展開

―そういったユーザーニーズの多様化に対する貴社の全社的な取組みについて、お聞かせください。

野村 NTT Comは、昨年3月、新しい事業ビジョン“グローバルIPソリューションカンパニー”を掲げ、これを支える柱として、「ソリューション」「ネットワークマネジメント(ユビキタス)」「セキュリティ」「グローバル」の4つの事業ドメインを中心に事業展開していくことを発表し、取り組んできました。これら4つの重点事業ドメインのフラグシップモデルを明確化し、それを実現する個々のサービスに関して具体的なプランニングを行っております。今後は、早期にお客様に提供できるような取組みを展開していきます。

―具体的に、個々のサービスはいつから提供される予定ですか。

野村 提供の準備が整い次第、今年の春頃から順次提供していきたいと思っています。

インターネットVPN、IP-VPN、広域イーサを統合したVPNサービスを提供

―フラグシップモデルを実現する新しいサービスの提供に関して、どのような取組みを行っているのでしょうか。

野村 既存のVPNをシームレスに統合した新しいサービスを春以降に提供します。現在、インターネット環境の企業利用という観点で、インターネットVPN(Virtual Private Network)サービスを提供していますが、これとNTT Comが提供する他のVPNサービス(企業のイントラネットやエクストラネット構築に向けたIP-VPNや広域イーサネット)と自由に組み合わせてWANが構築できる新しい統合VPNネットワークサービスを開始します。本サービスには、回線サービスに加え、VoIPやグループウェア、さらにはメールやWebのホスティングといった付加価値サービスも含まれ、前述の会議アプリケーションやコンテンツ配信サービスも提供します。また、VPNとその上で稼動するアプリケーションのセキュリティを守るために、暗号メールやファイルの暗号化、デジタルデータを保護するDRM(Digital Rights Management)、エンドエンドのマネージドサービスも合わせて提供します。

― VPNルータやメディアコンバータなどのレンタル、設定、運用・保守も行うわけですね。

野村 機器のレンタルはもちろん、導入から運用・保守までワンストップできめ細かくサポートします。つまり、統合VPNというネットワークサービスに加え、企業内のLANからパソコンといったデスクトップマネジメントまでセキュリティの領域を拡大してトータルで提供します。

―すでにデスクトップマネジメントを提供されているITマネジメントサービス事業部との連携になるのでしょうか。

野村 そうです。現在、ネットワークにつながるルータを対象にネットワークマネジメントサービスを提供していますが、マネージドの対象範囲をLANやパソコンにまで拡大して提供するということです。既存のサービスと私どものネットワークサービスを連携させて、ワンストップでお客様へ提供します。これがネットワークマネジメントのフラグシップモデルです。

―そういったネットワークマネジメントのフラグシップ実現にあたって、仕事の進め方も含めてどのような取組みを行っていますか。

野村 これまで以上にフロント事業部との連携を強化するとともに、フラグシップモデルを実現するうえでのポイントとなるカスタマーサービスの強化に取り組んでいます。

ブロードバンドの本格利用に向け、高付加価値の新サービスも順次提供

―サービスの拡充も含め今後の展開についてお聞かせください。

野村 企業向けOCNのサービスで、新しいサービスをいくつか計画していますし、IP-VPNと広域イーサネットをシームレスに相互接続したサービスも標準的に提供する予定です。また、春以降には前述したインターネットVPN、IP-VPN、広域イーサネットの3つのVPNサービスを三位一体で統合した形でサービス提供します。その他、付加価値サービスについても、すでに提供しているVoIPサービスをさらに拡充し、また、セキュリティを強化したホスティングのASPモデルも上半期には提供します。

―最後に、事業部長の今後のビジネスの抱負をお聞かせください。

野村 日本のブロードバンド環境は、世界的に見ても進んでいますし、企業利用という観点でも、新しいネットワークの活用方法開拓が進んでいます。しかし企業がブロードバンド環境を活用するという点では、まだまだ緒に着いたばかりです。今後、お客様にブロードバンドを本格的に利用いただけるよう、サービス拡充に努めると同時に、NTT Comの強みであるグローバルなネットワークを構築できる点、ならびにネットワークはもちろんサーバ・パソコンまで含めたトータルなマネジメントサービスを24時間365日、間断なく提供できるという点をアピールし、グローバルな展開をも視野に入れた日本発のブロードバンドサービスをリードしていきたいと思っています。
 海外に出張したビジネスマンが、日本国内にいるときと同じように、安全で快適なブロードバンドを享受できるような環境を実現できればと考えています。

―本日はありがとうございました。

(聞き手:構成:編集長 河西義人)


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