NTTコミュニケーションズ(株)
取締役・ネットワーク事業部
事業部長 
矢挽 晃氏
 
 “グローバルIPソリューションカンパニー”としてのNTTコミュニケーションズの事業基盤となるインフラネットワークの企画から設計・構築・運用、さらにはSO処理と料金業務まで一括して行っているネットワーク事業部。IPマイグレーションとブロードバンド化が加速する中、事業を取り巻く環境も含め最近の状況について、矢挽 晃取締役・ネットワーク事業部長にうかがった。

IPが中心となる一方で、ユーザーは
専用線並みの信頼性とQoSを要求

―はじめに、市場も含めたビジネスの動向からお聞かせください。

矢挽 まず、ここ数年の間にIPマイグレーションが急速に進んできたといえます。「IP-VPN」や「e-VLAN」、「B-OCN」が急速に伸びている一方で、「フレームリレー」や「低速専用線」の利用者が急激に減少してきており、今やサービスの中心はIPになっています。そして、さらにここにきてIPサービスのブロードバンド化が急速に拡大してきています。アクセス系の料金が安価になったことで、支線系の回線がキロからメガのオーダへと変わっていますし、基幹系やコンピュータセンタへの集約部分は、メガからギガに拡大するお客様も数多くいます。
 OCNについても、ADSLや光によるブロードバンドアクセスが急速に拡大したことにより、バックボーントラヒックは、ここ数年で10倍に膨らんでいます。
 一方で、企業向けネットワークは、IPの柔軟性や手軽さを求めるお客様も増えていますが、やはりミッションクリティカルな業務に使われるということで、専用線並みの信頼性やQoSを求めるお客様が非常に多くなっています。そのため、専用サービスの高い品質・信頼性はそのままに、経済性と柔軟性を同時に実現した「ギガストリーム」の利用も拡大しています。

ネットワークの企画・設計・構築・
運用、SO処理まで一括して担当

―ネットワーク事業部の主要ミッションをお聞かせください。

矢挽 私どもの組織は、インフラネットワークとその上のサービスノードについての企画から設計・構築、オペレーションまでを行っています。
 また昨年4月からは、1回線1回線のオーダの受付から収容設計、開通、料金業務までも併せて行っています。その意味では、基盤作りからデリバリ、サービスオーダ(SO)までを一連のプロセスとしてみています。またインフラを、サービスを提供している事業部に社内で卸すと同時に、私どものリソースをNTTグループを中心に他の事業者にうまく活用していただくことによって、全体の利用ボリュームを大きくし、卸コストを下げるようにも務めています。

経済化が最重要テーマ

―IPマイグレーションとブロードバンド化の急拡大といった市場の動きに対し、貴社のインフラネットワークはどのように変化していますでしょうか。

矢挽 IP化の動きに対応して、IPトラヒックを効率よく集めて運ぶために、レイヤ2のMPLSをベースにしたIPインフラを構築しています。
 そこに各種IP系のネットワークサービスが統合されていますが、レイヤ2のMPLSネットワークでこれだけの規模を商用で使ってるのは世界でも私どもだけではないかと思います。もう一つは、ブロードバンド化を経済的に実現するため、コア・インフラについて最新のDWDM技術などを使ってパスの経済化に向けた取組みを行っています。光2心で10Gb/s× 80波ですから、800Gb/s、0.8テラ運べるコア・インフラを北海道から沖縄まで2004年度でつくりあげました。これにより、パスコスト(ビット当たりの単価)は、2000年度と比較し1/10化を実現しています。近い将来は、40Gb/sシステムの導入により、さらなるパスの経済化を目指しています(図1参照)。また、電話網についても、2001年度から2003年度にかけ、ワンノードアーキテクチャといって、一つのノードでVolPとの接続機能も含めた様々なサービスに対応できるものを開発・導入し、コストを大幅に削減することができました。
 一方で、お客様が減少傾向にある「フレームリレー」や「パケット」、「低速専用線」のネットワークを、品質を維持しながら収益に見合うコストで維持する取組みも地味ですが重要な仕事だと思っています。低収容になったノードの統合やパケット網の中継部分をIP化するなどの取組みを行っています。


            図1 パスの経済化に向けた取組み

コスト、リードタイム、品質のバランスが重要

―ネットワークを構築・維持管理するうえでのポイントをお聞かせください。

矢挽 一つはコスト。もう一つはリードタイムで、これが長いといくらコストが安くても意味がありません。それに信頼性を含めた品質。この3つについて、いかに上手くバランスをとっていくかが重要です。コストの観点では、新技術を積極的に採用してコスト改善を図る。リードタイムの短縮については、プロダクトごとのSOシステムやレイヤごとのネットワーク設計システムをそれぞれ統合して、複数プロダクトのSO/設計業務の一元化を目指したプロセス改革/ IT装備化を進めています(図2参照)。品質については、前述したギガストリームのように、無瞬断切替機能などネットワーク自身で高信頼・高品質を実現しているサービスもありますし、IP系でも例えばルート分散やノード分散を強化したり、サービスネットワークを複数面使ったり、というように冗長系をうまく作り込んで、設備が故障してもサービスに影響を与えないようにしています。


         図2 IT装備化によるリードタイムの短縮

コスト、パフォーマンス、柔軟性がインフラのキーポイント

―最後に、今後のビジョンをお聞かせください。

矢挽 コストパフォーマンスに優れた強力なネットワークで、かつ柔軟にいろいろなサービスが提供でき、オペレーションも単純化できるシンプルな構造のネットワークにしたいと考えています。それは全く新規に構築するということではなく、WDMの多重度を高めたり、新技術を積極的に導入することでパスコストを下げる。また、IPインフラに今よりさらに各種サービスを重畳させてコストを下げるような取組みを行っていきたいと思います。そういう形で、現在の様々なサービスネットワークを統合していけば、それがいわゆるGMPLSに発展していくのではないかと考えています。

―本日は有り難うございました。

(聞き手・構成:編集長 河西義人)




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