NTTデータカスタマサービス(株)
代表取締役社長
田下 佳彦氏
 
 全国一社体制・224箇所の拠点網による均質な工事・保守・運用サービスの提供をコア・コンピタンスに、CSバリューチェーンによるビジネス拡大に取り組むNTTデータカスタマサービス。「現場力の向上」をスローガンに、オペレーショナル・エクセレント・カンパニーを目指す同社の最近の取組み状況について、田下佳彦代表取締役社長にうかがった。

CSバリューチェーンを基軸に
ビジネス拡大を図る

―外部環境の変化を含め、経営の状況からお聞かせください。

田下 弊社は平成10年3月に、NTTデータの全額出資の子会社として設立されました。同13年にNTTデータの工事・保守・運用の現業部門を移管し、同14年には営業部門を含めたCS(カスタマサービス)業務の完全移管、さらには同15年7月の事業会社再編を経て、今日に至っています。事業会社の再編により、NTTデータ関西カスタマサービスとNTTデータ関西SMSを統合したNTTデータカスタマサービスは、全国1社体制によるワンストップで効率的かつ均質なサービスが提供できるという点で、非常に意味のある会社であると思っています。NTTあるいはNTTデータという冠のつく会社で、全国1社体制で工事・保守・運用を行っている会社は、私どもだけです。当初、非常にたくさんあったNTTからの仕事も年を追うごとに少なくなりましたが、それでも全体の売上が伸びているのは、社員ひとり一人の頑張りにあると思っています。特に、平成13年の現業部門の業務移管を契機に、競争力の強化、サービスの向上、新規ビジネスの拡大を図るため、「全社員経営参画(全員営業、全員SE、全員CE)」をスローガンに徹底的な意識改革を行いました。例えば、「全員営業」の一つのバロメータとして、IT関連製品の販売があげられますが、この物販だけで現在全社売上の約1割を占めるまでに成長しています。こういった地道な積み重ねが、現在の黒字経営の礎になっていると思います。

―ビジネスを取り巻く環境についてはいかがですか。

田下 ただ単に工事・保守・運用を行っていますというだけでは、受注できなくなっています。つまり、工事・保守・運用そのものの品質を高くすることと、工事・保守・運用ビジネスにつなげるために上流工程段階から参画することの2つが重要です。サービス品質の向上に関しては、ISO9001認証に加え、昨年4月にはISMS及びBS7799の認証を取得しています。また、私自身現場に赴いて、現場作業を垣間見ることにより、常に新しいツールの必要性などを感じ取るようにしています。これまでにも、工程管理システム「CAMMS」や、遠隔地にあるルータをセットアップするための「ネットワークフィルダーサービス(NFS)」をはじめ、現場作業の改善に向けたツールを多数開発してきました。現場の仕事が高品質であることが、次のビジネスにつながるわけです。一方、上流工程からの参画に向けては、人材育成に注力しています。この2つの課題解決に加え、弊社のビジネスは、工事・保守・運用というコアビジネスを中心に循環し拡大するというコンセプトである「CSバリューチェーン」によって、事業領域の拡大を図っています。

―CSバリューチェーンとは…

田下 例えば、物品を販売すれば保守がついてきますし、ITソリューションビジネスを展開すれば、新たな工事・保守・運用ビジネスの獲得につながります(図1参照)。コア・コンピタンスを活かし、CSバリューチーェンに基づく新たなビジネスを獲得することにより、コアビジネスも一層強化されるわけです。


             
図1 CSバリューチェーン

「CSウェイ」の実践で現場力を向上

―今後さらに成長するためには、何が重要だとお考えですか。

田下 「現場力の向上」が、ビジネス拡大のキーポイントだと思います。現場力の向上という点で、一つには当社の安定した工事・保守・運用サービスの提供があげられます。2007年問題に代表される熟練者層の退職が今後5年〜 10年に控えており、安定したサービス品質の提供が課題となっています。私どもでは、平成14年5月に工事・保守・運用業務のプロフェッショナルを派遣する(株)テクノパワーをビジネスパートナーと共に設立し、地域も含め全国の技術力の安定を図るよう計画しています。また、現場力を高めるために、技術者の育成及び公的資格・ベンダー資格の取得奨励、さらには作業品質を上げるツールの開発を積極的に行ってきました。しかし、昨年幾つかの作業ミスにより、お客様が私どもに求めているものはオペレーショナル・エクセレンスであり、オペレーショナル・エクセレンスこそが、ビジネス拡大の原動力であることを再認識しました。その反省から、社員ひとり一人が現場力の向上を目指す行動規範の検討を昨年から始め、その集大成である「CSウェイ」を今年の2月に制定しました。これは、高品質・高付加価値サービスの提供に向けた9カ条の行動規範になっています(図2参照)。


  図2 高品質・高付加価値サービスの提供に向けた行動規範「CS ウェイ」

NTTデータ外の売上を増やす

―最後に、今後の抱負をお聞かせください。

田下 親会社であるNTTデータへの依存度が売上の約2/3とまだまだ高いので、NTTデータ外の売上比率をもっと増やしたいと思います。新たなビジネスを獲得するためには、世の中の風を感じ(Feel)、風の方向や匂いを考え(Think)、そして行動(Act)するという「Feel⇒Think⇒Act」のプロセスが重要であると考えており、社員ひとり一人の行動のよりどころとなるよう、今年の年頭の挨拶でも呼びかけました。多くの社員から賛同のメールをもらい、私自身の励みにもなりました。

―来年度の重点施策としてどのようなことをお考えですか。

田下 装置価格の低下に伴う保守料の低減、競業企業との競争激化、現行業務の競争入札への移行など、事業を取り巻く環境は依然厳しい状況です。来年度は、現場力のさらなる向上を目指し「CSウェイ」を徹底させるとともに、NTTテfチ[テ^ハOの売上を伸ばすために、新規ビジネスの獲得に向けた新しい組織を設立し、重点的に取り組んでいきたいと考えています。

―本日は有り難うございました。

(聞き手・構成:編集長 河西義人)




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