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要求工学 第11回:ジャクソンの問題フレーム
NTTデータ 技術開発本部 副本部長 山本修一郎
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技術開発本部
副本部長 
山本修一郎

基本的な問題フレーム

ジャクソンは問題構造を4つの基本的な型に分類している。

コマンド制御型(Command)
コマンド操作による振舞い
編集型(Workpiece)
ユーザーの指示に基づいて、テキストや図形などの生産物(Workpiece)を編集する
情報表示型(Information Display)
現実世界の情報を検知して、表示する
変換型(Transformation)
入力を出力に変換する振舞い

以下では、この4つの問題フレームを説明しよう。

コマンド問題フレーム

コマンド問題フレームは振舞いが オペレータのコマンドによって制御 されるような物理世界に対して適用 される。問題は「オペレータのコマ ンドを受理して、それに従って領域 を制御する」ような機械を作ること である。

制御領域は現実世界の一部として 制御の対象となる。原因領域を記号 Cで識別する。CはCause を表す。 その現象は物理的で因果関係があ る。制御領域と制御機械はインタフ ェースを共有する。このインタフェースには2つの現象がある。

C1:
制御機械によって制御される   現象である。CM!を現象の前につ けて区別する。
C2:
制御領域によって制御される。 CD!を現象の前につけて区別する。 インタフェースはこの2つのドメ インの導管として動作する。
・オペレータがコマンドを発行す る。コマンドはイベントとして表現する。
E4:
機械によって共有され、オペ レータが制御する。OP!をイベン トの前につけて区別する。この ような人に対応する領域を従順 (biddable)と呼び、記号Bで区 別する。
・コマンドの振舞いは、オペレータのコマンドE4 に対する制御ドメインの振舞いである。この振舞いは現象C3として表現する。

コマンド制御問題フレームの正当 性を確認するためには、制御ドメイ ンの因果関係を利用して、現象C1、 C2 を用いた機械の振る舞いが現象 C3 による制御ドメインにおける振 舞いに帰着することを示す。

編集問題フレーム(Work piece)

編集問題フレームはテキストや図 形などの生産物を編 集するためのツール を作成する問題だ。 ユーザーからの操作 要求に従って生産物 を編集することによ り操作に関する必要 な性質を満足させ る。受理されるコマンドは状態機械 に基づくコマンド系列の規則に従 う。実行可能なコマンドは対象とす る生産物に関する指定された不変条 件を守る必要がある。

図4 編集問題フレーム

編集問題フレームを図4に示す。

【機械】
編集ツール
【生産物】
編集ツールにより構成さ れる領域。たとえば生産物としての 文書は編集ツールに含まれる。した がって生産物に関する現象は編集ツ ールにより共有される。
【要求】
編集ツールの操作を要求す る領域。生産物に対する操作を指定 するためのイベントの系列である。

図4の記号の意味は次のようである。

(a)
ユーザーがコマンドを発行する 【要求】
(b)
コマンドを検出できなければツールが拒否する 【仕様】
(c)
あるいは有効でないため無視するか、そうでなければ対応する操作を起動する 【仕様】
(d)
操作の結果として生産物の内容を変更する 【領域】
(e)
要求された結果を実現する 【要求】

生産物の操作に関しては、存在しない操作は許可されないことや、生産物に対する操作は相互排他的であることなどの条件がある。

図5 情報表示問題フレーム

情報表示問題フレーム

情報表示問題フレームの例として天候観測のためのディスプレイを考える。

たとえば、次のようなシナリオを想定して見ることで、図5のような問題フレーム図を作成することができる。

(a)
天候が○○のとき 【要求】
(b)
気象センサが□□なので 【領域】
(c)
機械が△△の信号を検知する 【仕様】
(d)
そして▽▽のイベントを生成する 【仕様】
(e)
ディスプレイの表示が◇◇となるので 【領域】
(f)
ディスプレイの表示が◎◎の天候に対応する 【要求】
図6 変換問題フレーム

変換問題フレーム

変換問題フレームの例として入力を出力レポートに変換する問題を図6に示す。図6の各記号の意味は次のようになる。

(a)
入力系列を走査して 【仕様】
(b)
ある構造の値を発見して 【領域】
(c)
機械が指定された入力の値を確認する 【要求】
(d)
同時にレポートを走査して 【仕様】
(e)
構造化された値を生成する 【領域】
(f)
このような値からなるレポートを作成する 【要求】
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