NTTデータ
技術開発本部
副本部長
山本修一郎
基本的な問題フレーム
ジャクソンは問題構造を4つの基本的な型に分類している。
- コマンド制御型(Command)
- コマンド操作による振舞い
- 編集型(Workpiece)
- ユーザーの指示に基づいて、テキストや図形などの生産物(Workpiece)を編集する
- 情報表示型(Information Display)
- 現実世界の情報を検知して、表示する
- 変換型(Transformation)
- 入力を出力に変換する振舞い
以下では、この4つの問題フレームを説明しよう。
コマンド問題フレーム
コマンド問題フレームは振舞いが オペレータのコマンドによって制御 されるような物理世界に対して適用 される。問題は「オペレータのコマ ンドを受理して、それに従って領域 を制御する」ような機械を作ること である。
制御領域は現実世界の一部として 制御の対象となる。原因領域を記号 Cで識別する。CはCause を表す。 その現象は物理的で因果関係があ る。制御領域と制御機械はインタフ ェースを共有する。このインタフェースには2つの現象がある。
- C1:
- 制御機械によって制御される 現象である。CM!を現象の前につ けて区別する。
- C2:
- 制御領域によって制御される。 CD!を現象の前につけて区別する。 インタフェースはこの2つのドメ インの導管として動作する。
- ・オペレータがコマンドを発行す る。コマンドはイベントとして表現する。
- E4:
- 機械によって共有され、オペ レータが制御する。OP!をイベン トの前につけて区別する。この ような人に対応する領域を従順 (biddable)と呼び、記号Bで区 別する。
- ・コマンドの振舞いは、オペレータのコマンドE4 に対する制御ドメインの振舞いである。この振舞いは現象C3として表現する。
コマンド制御問題フレームの正当 性を確認するためには、制御ドメイ ンの因果関係を利用して、現象C1、 C2 を用いた機械の振る舞いが現象 C3 による制御ドメインにおける振 舞いに帰着することを示す。
編集問題フレーム(Work piece)
編集問題フレームはテキストや図 形などの生産物を編 集するためのツール を作成する問題だ。 ユーザーからの操作 要求に従って生産物 を編集することによ り操作に関する必要 な性質を満足させ る。受理されるコマンドは状態機械 に基づくコマンド系列の規則に従 う。実行可能なコマンドは対象とす る生産物に関する指定された不変条 件を守る必要がある。
編集問題フレームを図4に示す。
- 【機械】
- 編集ツール
- 【生産物】
- 編集ツールにより構成さ れる領域。たとえば生産物としての 文書は編集ツールに含まれる。した がって生産物に関する現象は編集ツ ールにより共有される。
- 【要求】
- 編集ツールの操作を要求す る領域。生産物に対する操作を指定 するためのイベントの系列である。
図4の記号の意味は次のようである。
- (a)
- ユーザーがコマンドを発行する 【要求】
- (b)
- コマンドを検出できなければツールが拒否する 【仕様】
- (c)
- あるいは有効でないため無視するか、そうでなければ対応する操作を起動する 【仕様】
- (d)
- 操作の結果として生産物の内容を変更する 【領域】
- (e)
- 要求された結果を実現する 【要求】
生産物の操作に関しては、存在しない操作は許可されないことや、生産物に対する操作は相互排他的であることなどの条件がある。
情報表示問題フレーム
情報表示問題フレームの例として天候観測のためのディスプレイを考える。
たとえば、次のようなシナリオを想定して見ることで、図5のような問題フレーム図を作成することができる。
- (a)
- 天候が○○のとき 【要求】
- (b)
- 気象センサが□□なので 【領域】
- (c)
- 機械が△△の信号を検知する 【仕様】
- (d)
- そして▽▽のイベントを生成する 【仕様】
- (e)
- ディスプレイの表示が◇◇となるので 【領域】
- (f)
- ディスプレイの表示が◎◎の天候に対応する 【要求】
変換問題フレーム
変換問題フレームの例として入力を出力レポートに変換する問題を図6に示す。図6の各記号の意味は次のようになる。
- (a)
- 入力系列を走査して 【仕様】
- (b)
- ある構造の値を発見して 【領域】
- (c)
- 機械が指定された入力の値を確認する 【要求】
- (d)
- 同時にレポートを走査して 【仕様】
- (e)
- 構造化された値を生成する 【領域】
- (f)
- このような値からなるレポートを作成する 【要求】