NTTグループのソリューションガイド

ICTソリューション総合誌 月刊ビジネスコミュニケーション

ビジネスコミュニケーション

自動車SCM改革への挑戦が生んだ
IT戦略デザイン手法

企画工程の重要性を痛感した2つの実験プロジェクト

皆さんのプロジェクトでは、狙いや目標、それからプロジェクトの結果をどのように評価するか明確になっていますか?メンバーはそれを正確に理解していますか?

残念ながら、狙い・目標・結果の評価について不明瞭なまま進んでいるプロジェクトが少なくないようです。

私が取組んでいる「IT戦略デザイン」は、そのような問題に対処する手法であり、プロジェクトの目的や目標を「見える化」する方法論です。

私がこのような取組みを行っているのは、過去に参画した2つの実験プロジェクトの影響が大きいと思います。

インターネット活用に関する川崎商工会議所様の取組み(平成8年~10年)と、「佐賀ビジネスマッチングプレイス」という、地元の企業に対する営業支援を、地域の金融機関と産業振興団体が共同で行うプロジェクト(平成12年~14年)です。

どちらも、コンセプト策定や、関連組織・メンバーの巻き込みなどの企画段階から関与しました。

プロジェクトの狙いや目標が不明瞭だと、プロジェクトが迷走すること、そして、メンバーのコミュニケーションが活発であるほど、それらの狙いや目標は明確になっていくことを痛感しました。

コラボレーションの作り方を方法論化

平成14年に、R&D部門で同様の実験プロジェクトを進めてきた5チームが合体し、「ビジネスコラボレーショングループ」ができました。

対象の業種・業態や技術に差はありますが、複数の企業や組織の連携(コラボレーション)を見直して新サービスを創出することを、お客様と一緒に企画段階から取組んできたのが共通点でした。

新グループでは、これまでの各チームのプロジェクトの進め方や検討のテンプレートを整理して、コラボレーションを作り出す方法論として体系化することになりました。そして、グループリーダーからのアドバイスで、バランス・スコアカード(BSC:Balanced Scorecard)を方法論の核としました。

BSCは、経営管理や戦略策定の手法で、複数の目標と評価指標をツリー状に整理できます。ITプロジェクトの狙いや目標を整理し、組織間の連携のあり方を議論・検討するのにマッチすると感じました。しかし、机上の議論だけで作成されたBSCは納得感が得られにくいなどの問題も抱えていました。

自動車SCM戦略の見える化に方法論の適用をトライ!

BSCを核とする方法論の適用先を探索中、物流管理(SCM)でのRFIDの活用に関して、自動車メーカー様と当社の勉強会が行われていることを知り、窓口部門に相談して参加させていただきました。ところが、数回参加しても残念ながら不明瞭だったのは、何に困っていて、何を解決したくて、RFIDを使うのかということでした。

数回目の勉強会で、「SCMでは、たくさんのKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を設定してはいるが、結局、どの部署にどんな問題があるのか、ハッキリしない」という発言をお聞きしました。

KPIは、BSCの手法の中で定義する情報です。ですから、我々の方法論を適用するチャンスがあると期待して、方法論の内容と期待効果をご説明しました。もちろん、まだ適用実績がないということもお伝えしました。その結果、共同研究として取組むことになりました。

ITシステムを利用する業務には、実際の担当者が存在します。当社が開発・提供するのはITシステムですが、現実の担当者の苦労や日々の工夫を肌感覚で理解しているか否かで、IT企画の良し悪しは変わると思っていました。

ですから、人の行動観察や分析に強い、富士ゼロックス(株)のKDI(Knowledge Dynamics Initiative)のメンバーにも参画してもらい、工場・物流拠点・販売店に出向いて、担当者の仕事を実際に観察し、問題や悩みを直接お聞きしました。

観察したことは「ファクトカード」というカードに記録しました。大量のカードを分類整理してBSCに目標やKPIを追加し、また、在庫量や物流費用などの業務データの相関分析も行ってBSCに反映し、SCM戦略を整理しました。

お客様からは、「従来は個別の議論が多かったが、全体戦略が具体化できた」、「KPI別のミクロな分析はやってきたが、KPI間の相関分析は目から鱗だった」、「現場の実態を再認識できた」との評価をいただきました。

ビジネス要件のモデリングと効果のモニタリング

自動車SCMでの取組みを13ステップの流れに体系化し、IT戦略デザイン手法FBCM(Fact based collaboration modeling)と命名しました。

現場での観察事象と、業務データの統計分析の「ファクト」に基づいて、BSCを拡張したテンプレートに戦略目標や業務要件をモデリングします。明確化するKPIは、IT導入やBPRの改善効果のモニタリング仕様となります。

ITプロジェクトは、システム要件定義から始まることが多いと思いますが、FBCMは、ビジネス要件の整理を主要なターゲットにしています。

それは、ビジネス要件の優先順位付けや、システム要件の合理性を高めることに繋がると考えています。すなわち、経営的に重要なIT投資テーマを、具体的な業務改善イメージに基づき検討することが可能になるということです。

FBCMを論文として、複数の学会で発表したところ、重要なテーマであり、また、実効的な手法であるとの反応を得ました。

ITプロジェクトの流れ

 

FBCMからBiz-Alive!へ
R&Dから実プロジェクトへ

平成17年度は、NTTデータ経営研究所と、FBCMのマーケティングや事業計画を検討しました。

その中で、方法論のコンセプトや特徴を明快に表現するため、名称を「FBCM」から「Biz-Alive!」に変えました。

お客様のビジネスと、参画するITプロジェクトをイキイキとさせる(Alive)という意味を込めています。

今年度から、実プロジェクトでBiz-Alive!を役立てるため、メンバーと共にR &D部門から事業部門に異動しました。「お客様の業務の現場と経営の関係を最適化するITの提供」が新たなチームミッションです。

会議室での議論だけではなく、お客様の業務の現場に許される限りお邪魔し、現場での現実の問題や工夫を生々しく把握していきます。それによって、お客様の経営部門やユーザ部門と、IT部門の橋渡しとなるIT企画を、お客様と同じ目線でご支援したいです。

多くの組織や人とのやりとりからBiz-Alive!は生まれました。しかし、未完成な部分も多いため、これからもお客様からのご指導を頂きながら、チームメンバーが切磋琢磨してより良い方法論に育てて行きます。

Biz-Alive!は、お客様の想いや、把握した「事実」を、BSCやファクトカードというツールで可視化します。それらの情報は、忘れていたアイディアを思い出させ、また、言いにくかった問題点を話しやすくしてくれると思います。

プロジェクトに携わる我々自身も、Biz-Alive!を使いながら、メンバーが想いや悩みを話しやすい雰囲気作りを心がけます。そうすれば、オープンなコミュニケーションが活発に行われ、狙いや目標が明確なプロジェクトを作れると思います。きっと、ワクワクするようなITシステムを、お客様と共に企画できるものと信じています。

ITスペシャリスト登場
“当てる見積り”から“見える見積り”へ

角谷恭一氏
(株)NTTデータ
製造・流通ビジネス事業本部
流通・サービスビジネスユニット
課長

角谷恭一氏

NTTデータがアピールしてきた「経営とITの賢い付き合い方」の解決編となるBiz-Alive!の入門書を出版

「IT戦略デザイン」
本体価格:1,000円(税込1,050円)
ISBN:4-89797-676-6
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