「DVCリアルタイム映像符号化技術」と「多視点映像スイッチング通信システム」を開発
OKI
OKIは「Distributed Video Coding(DVC)リアルタイム映像符号化技術」と「多視点映像スイッチング通信システム」を開発した。これは、DVC方式による映像のリアルタイム処理を可能とするために、リアルタイム符号量制御処理および復号の高速化(並列化)処理を施したものである。また、この技術を応用した多視点映像スイッチング通信システムは、省電力で映像符号化できるDVC方式の特長を活かし、多くのカメラを用いた多視点映像配信が実現できるシステムである。
現在、映像符号化において主流であるH.264方式は、圧縮率が高い反面、符号化の際に演算量、メモリなど多くの資源と電力が必要である。このため欧米を中心に、電力を十分確保できない携帯端末や多視点・自由視点映像など、多数のカメラを利用するシステム向けの省電力な映像符号化方式として、DVC方式の研究開発が盛んになっている。
一方、DVC方式による符号化では、動きベクトル探索は行わず、誤り訂正符号による符号化を行うため、H.264と比較して、数十分の1程度の演算量で符号化が可能である。しかし、現在、一般的に研究されているDVC方式では、符号量制御において復号結果に基づき追加の情報送信を要求する“フィードバック”を必要とするため、遅延が大きくなる点と、復号処理の演算量がH.264と比較して非常に多いという点が課題になっていた。これらの課題により、リアルタイムに動作するシステムは実現されていなかった。
そこでOKIは、送信側のみで符号量制御を行うことによりフィードバックを必要としない構成とし、復号処理についてはLDPC符号の処理を並列化することにより、リアルタイムに動作するDVCリアルタイム映像符号化技術を開発した。同技術の主な特長は以下のとおり。
◆送信側で符号量を推測する符号量制御技術を実現したため、従来必要であった受信側からの“フィードバック”を不要にしている
◆復号処理の大部分を占めるLDPC符号を並列化処理することで、高速な復号処理を実現している
◆LDPC符号に必要な相関推定を、少ない演算量で処理することで高速な復号処理を実現している
このような特長により、DVCリアルタイム映像符号化技術では、マルチコアプロセッサ(8コア)が搭載されたPCにおいて、QVGAサイズで45フレーム/秒の処理が可能となった。
またOKIは、DVCリアルタイム映像符号化技術を用いた多視点スイッチングシステムも開発した。同システムは、DVC方式の低演算量で符号化が可能という特長を活かし、複数のカメラ映像を配信するものである。受信側では送られた映像のうち、必要な映像のみを選択することにより、見たい映像をリアルタイムに表示することが可能なシステムとなっている。
今回開発した多視点スイッチングシステムの適用例のひとつとして、臨場感を伝えるテレワークシステムがある。例えば、このシステムを用いて遠隔地にあるオフィスを俯瞰する映像を配信し、そこに在席している複数の人の映像から必要な映像を選択することができる。遠隔オフィスや、仕事相手の状況をより早く確実に把握できるため、コミュニケーション相手への理解を深め、相手の置かれている状況に即した対応をとることができるなど、テレワーク環境において有効なシステムを構築することが可能になる。
今後OKIは、DVCリアルタイム映像符号化技術を利用した、ハードウェアモジュールを開発していく。同時に、多くのカメラを用いて多視点映像を配信するテレワークシステムや監視装置などへの応用についても検討していく。
お問い合わせ先
OKI 研究開発センタTEL:048-420-7073
NEWS(2009年6月)
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