ICTソリューション総合誌 月刊ビジネスコミュニケーション

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第112回 IREB国立大学法人 名古屋大学 情報連携統括本部 情報戦略室 教授 山本修一郎

国立大学法人 名古屋大学 情報連携統括本部 情報戦略室 教授
(前NTTデータ フェロー システム科学研究所長)山本 修一郎

国際要求工学委員会(Inter-national Requirements Engineering Board,IREB)[1]は、要求工学専門家を認定する制度を提供している。前回はIREBの概要と、提供されている要求工学知識に関する基礎レベルのシラバスから導入EU1、システム境界EU2、ツール支援EU9について紹介した。今回は、要求抽出EU3、要求確認EU7、要求管理EU8について紹介する。

基礎レベルのシラバスの構成

基礎レベルには、要求抽出、要求文書化、要求確認、要求管理についての共通知識が含まれている。さらに基礎レベルには、導入、システム境界、ツール支援についての共通知識がある。これらの知識に対するシラバスは、教育単位(Education Unit, EU)として整理されている。基礎レベルのシラバスの構成を図1に示す。

前回、EU1、EU2、EU9を紹介した。本稿では、EU3、EU7、EU8を紹介する。

今回紹介する基礎レベルのシラバスの内容をまとめて表1に示す。

以下では、教育単位EU3、EU7、EU8について説明する。なお、国際的な一貫性のある教育と試験ができるように、基礎レベルのシラバスには、①一般的な教育目標、②教育目標の説明と教育内容、③必要となる参考文献が記述されている。教育目標では、[L1]知っていること(knowing)、[L2]活用できること(mastering and using)、という2つの認知レベルが割当てられている。

図1 IREB基礎レベル シラバスの構成

図1 IREB基礎レベル シラバスの構成

表1 IREB 基礎レベル 講義項目

表1 IREB 基礎レベル 講義項目(クリックで拡大)

EU3 要求抽出

EU3の教育単位と目標をまとめると、表2に示すようになる。

◆EU3.1 要求の情報源 [L1]

開発すべきシステムに関する要求の抽出は、要求開発活動の重要な活動である。要求抽出の基礎はシステム・コンテクストと要求の情報源からなる。多様な種類の要求の情報源が区別されている。可能な要求の情報源には、ステークホルダ、ドキュメント、既存システムなどがある。

多様な要求の情報源から、ゴールと要求を集めることが要求開発のタスクである。もし情報源が無視されたら、プロジェクトの全工程に重大な否定的結果をもたらすことになる。要求の情報源の文書化では、ステークホルダについて次の情報を少なくとも含む必要がある。

  • 名称
  • 機能(役割)
  • 付加的な個人ならびにコンタクトのためのデータ
  • プロジェクト進行過程での時間的空間的可用性
  • ステークホルダの適合性
  • 専門分野と専門性の程度
  • プロジェクトについてのゴールと感心事

企業文化に応じ、ステークホルダとの合意において、口頭あるいは文書によって、タスク、責任、権限などを定義することが適切である。ステークホルダ合意から、各ステークホルダの権利と義務が生じる。ステークホルダに対応することで、動機の欠如や矛盾から要求抽出活動を効果的に守ることができる。プロジェクトによって影響を受けるだけでなく、ステークホルダをプロジェクトに参画させる必要がある。

◆EU3.2 狩野モデルによる要求分類 [L2]

要求抽出では、ステークホルダの満足について要求がどのような重要性を持つかを知ることが重要である。狩野博士のモデルに従って、この満足性を3つに分類できる。

  • 基本要因(必須)
  • 性能要因(満足)
  • 感動要因(魅力)

◆EU3.3 抽出技法 [L2]

意識的、無意識的、そして半意識的なステークホルダ要求を発見するという目的を、抽出技法によって達成することができる。抽出技法の選択に影響する重要要因には、要求についてのリスク要因、人間的影響、組織的影響、機能内容の影響、意図している詳細性がある。多様な要求成果物に対して多様な技法が必要になる。

  • 調査技法(インタビュー、質問項目など)
  • 創造性技法(ブレインストーミング、ブレインストーミングパラドックス、視点変更、類推技法など)
  • 文書指向技法(システム考古学、パースペクティブベースリーディング、要求再利用など)
  • 観察技法(現場観察、実習など)
  • 支援技法(マインドマップ、ワークショップ、CRCカード、音声映像記録、ユースケースモデリング、試作など)

適切な抽出技法の適用は、プロジェクトの重要なコンピーテンス要因である。多様な抽出技法の組み合わせによって最善の結果が達成される。

表2 EU3の教育と目標

表2 EU3の教育と目標(クリックで拡大)

EU7 要求確認

EU7には、表3に示した6個の教育目標があり、それぞれに対して下位の研修単位が用意されている。

◆EU7.1 システム・コンテクスト、システム境界、コンテクスト境界

要求確認の目的は、要求開発で可能な限り早期に要求に含まれる誤りを摘出して修正するために、定義された品質基準(たとえば、正当性や完全性)を要求が満足するかどうかを確認することである。要求文書が後続する開発活動の基礎になるので、後続するすべての開発活動に対して、一つの未検出な要求誤りを修正する労力が開発過程で大きく増加するように、要求誤りが影響する。この理由は、要求の実際の誤りを修正すべきであるだけでなく、詳細設計、実装、テストケースなど、この要求に基づくすべての成果物をやり直す必要があるからである。

表3 要求管理の教育単位と目標

表3 要求管理の教育単位と目標(クリックで拡大)



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第59回以前は要求工学目次をご覧下さい。


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