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ICTソリューション総合誌 月刊ビジネスコミュニケーション

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第121回 安全性証跡の追跡性国立大学法人 名古屋大学 情報連携統括本部 情報戦略室 教授 山本修一郎

国立大学法人 名古屋大学 情報連携統括本部 情報戦略室 教授
(前NTTデータ フェロー システム科学研究所長)山本 修一郎

今回は、今年開催された国際会議REFSQ2014「要求工学:ソフトウェア品質の基礎(Requirements Engineering: Foundation for Software Quality)」から、安全性証跡(Safety Evidence)の追跡性(Traceability)について紹介する。SafeTIM(SAFety Evidence Traceability Information Model)は、証跡情報によって作成・維持される必要がある追跡(Trace)を表現するためのモデルである。SafeTIMは、OPENCOSSのプロジェクトで開発されている(ww.opencoss-project.eu)。このプロジェクトは、自動車、航空機、鉄道に関する安全性保証と認証についてのEUの大規模研究プロジェクトである。

安全性証跡の追跡性

要求追跡性の管理モデルについては、本連載の第9回要求追跡性でも紹介した。ソフトウェア工学では、前工程の成果物と後工程の成果物との成果物間の関係の程度として追跡性が定義される。この定義に従って、Nairらは、安全性証跡として使用される成果物間の関係の程度によって安全性証跡の追跡性を定義している。Nairらの提案は、従来の追跡性の研究が、安全性証跡の追跡性を扱っていないという問題意識にある。証跡として用いられる成果物間の関係だけの追跡性では限界があるというのである。

追跡性の課題

Nairらは、要求追跡性についての研究論文を調べることで、以下の10項目の課題を明らかにした[1]

(1)要求の後方追跡性 (Post-requirement traceability)

下流の開発保守工程成果物に対して、仕様から要求を追跡する。

(2)追跡の自動化 (Traceability automation)

追跡の自動生成など、追跡活動を自動化する。

(3)要求の前方追跡性 (Pre-requirement traceability)

仕様から要求の発生源を追跡する。例えば、だれがその要求を望んだのかを追跡する。

(4)要求追跡の実践評価 (Traceability in practice)

産業界における要求追跡性管理手法を具体化する。

(5)変更管理 (Change management)

成果物の変更管理と影響波及分析で、要求を追跡する。

(6)モデル追跡性 (Model traceability)

要求モデル内および要求モデル間で要求を追跡する。

(7)法制度適合性 (Regulatory compliance)

法制度に対して適合していることを確認するために、要求を追跡する。

(8)追跡性保守方法の提案 (New approaches for main- taining traceability)

ビデオを用いて要求追跡を記録するなどの新たな手法の提案。

(9)競合分析(Trade-off analysis)

意思決定のための追跡性管理手法

(10)新たな開発環境に対する追跡性(Traceability in new deve- lopment contexts)

たとえば、自動車業界における化学・プラスチック開発に対する要求を追跡する。

安全性追跡情報モデルの目的 

安全性追跡情報モデルの目的には、表1に示す5項目がある[2]

表1 安全性追跡情報モデルの目的(クリックで拡大)

表1 安全性追跡情報モデルの目的

追跡性と目的の関係

SafeTIMでは安全性追跡関係として、表2に示す10個の関係を挙げている。これらの追跡関係は、成果物間、安全性証跡と主張、安全性証跡と議論、成果物と参照成果物、主張についての安全性証跡要素間、成果物の再利用、成果物と活動、成果物と技法、成果物・証跡要素と出所である。

表2では、追跡性関係の種類と目的の対応関係についても示している。

表2 追跡性と目的(クリックで拡大)

表2 追跡性と目的

安全性証跡の情報モデルSafeTIM

SafeTIM(Safety Traceability Information Model)に対するクラス図を図1に示す。

図1 SafeTIMの情報モデル

図1 SafeTIMの情報モデル(クリックで拡大)

SafeTIMの情報モデルには、成果物、証跡要素、主張、成果物証跡の出所、プロジェクト、版、議論、参加者、成果物関係、証跡関係、参照成果物、活動、技法がある。また、成果物や証跡要素の状況を管理するために、イベント型、状態型、確信影響型という3種類の型が定義されている。イベント型は開発保守ライフサイクルの中で発生する活動に対応している。状態型は成果物や証跡の状態に対応している。確信影響型は成果物や証跡に対する妥当性の確信度に対応している。



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第59回以前は要求工学目次をご覧下さい。


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