NTTグループのソリューションガイド

ICTソリューション総合誌 月刊ビジネスコミュニケーション

ビジネスコミュニケーション
第17回:ゴール分析 応用編
NTTデータ 技術開発本部 副本部長 山本修一郎
NTTデータ 
技術開発本部
副本部長 
山本修一郎

ゴール分析の事例(続き)

RPPG-4(電子タグの読み取りに関する消費者の最終的な選択権の留保)

【記述】

事業者は、消費者に物品が手交された後も当該物品に電子タグを装着しておく場合において、消費者が、当該電子タグの性質を理解した上で、当該電子タグの読み取りをできないようにすることを望むときは、消費者の選択により当該電子タグの読み取りができないようにすることを可能にするため、その方法についてあらかじめ説明し、もしくは掲示し、又は当該物品もしくはその包装の上に当該方法について表示を行う必要がある。

【分析のポイント】

この記述では、「することを望むときは」という記述に着目する。望むということは、願望であり目的を示すと考えることができる。また、このすぐ後に「消費者の選択により当該電子タグの読み取りができないようにすることを可能にするため」という記述がある。「するため」の前半には、目的が記述されていて、後半にはその手段が記述されているはずである。したがって「消費者の選択により、物品に装着された電子タグの読み取りをできないようにする」ことを親ゴールとする。そうすると、「その方法について」以降の記述を読むことにより、サブゴールを抽出できるだろう。

このとき、方法について説明するだけではなく、実際に読み取りをできないようにする方法も必要になることに気づくと、親ゴールのサブゴールとして「電子タグの読み取りできないようにする方法を消費者が選択する」を追加することができる。

【ゴール図】

RPPG-4に対するゴール図の例を図5に示す。親ゴールは「消費者の選択により、物品に装着された電子タグの読み取りをできないようにする」である。サブゴールには「電子タグの読み取りをできないようにする方法を消費者が認識できる」と「電子タグの読み取りできないようにする方法を消費者が選択する」がある。

図5 第4(電子タグの読み取りに関する消費者の最終的な選択権の留保)
図5 第4(電子タグの読み取りに関する消費者の最終的な選択権の留保)

「電子タグの読み取りをできないようにする方法を消費者が認識できる」のサブゴールは「消費者にあらかじめ説明する」「消費者にあらかじめ掲示する」「物品に対して表示する」となる。「物品に対して表示する」のサブゴールは「物品の包装上に表示する」と「物品に表示する」である。

またRPPG-4には「電子タグの読み取りができないようにする方法の例」として、次の3項目が記述されている。

  1. アルミ箔で覆って遮断できる場合はアルミ箔で覆うなど電子タグと読取機との通信を遮断する。
  2. 電子タグ内の固有番号を含む全部もしくは消費者が選択する一部の情報を電磁的に消去し、又は当該情報を読み取ることを不可能にする。
  3. 電子タグ自体を取り外す。

そこで、RPPG-4のサブゴール「電子タグの読み取りできないようにする方法を消費者が選択する」に対するゴール図を記述すると、図6のようになるだろう。このサブゴールへの詳細化は、場合分けによるゴール展開の例である。

図6 電子タグの読み取りができないようにする方法
図6 電子タグの読み取りができないようにする方法

ゴール分析の留意点

ゴールを記述する際の詳細化の粒度やゴールの抽象度については、今回のような良く吟味された文章記述がすでにあるときは、あまり問題にならないだろう。しかし一方で、文章記述の曖昧さがゴール図を記述することで、顕在化することにも気づいていただけたのではないだろうか?たとえば、今回紹介したガイドラインでは、「しつつ」「・・し」「及び」などの接続詞の扱いに解釈の差が出ると思われる。

また、自然言語で記述された文章に対してもゴール図が簡単に適用できることもお分かりいただけたのではないだろうか?文章の意図を把握するためにも、ゴール図が有効であると思われる。逆に、ゴール図を書いたり、頭の中で想定しておくことで正確な文章を記述できるようになると考えることもできる。


今回は「電子タグプライバシー保護ガイドライン」を対象として、ゴール図の作り方を具体的に紹介した。4つの規則までしか紹介できなかったので、第5から第10までについては次回までの読者への宿題としよう。ぜひ自分でゴール図を書いてみていただきたい。

参考文献

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第59回以前は要求工学目次をご覧下さい。



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