NTTコミュニケーションズ

Silicon Valley Startupの発掘とパートナリング

Silicon Valley Startupとお客さまとの間の新規ビジネス創出に向けた架け橋としてパートナリングをサポート

(2019年8月号掲載)

NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)の技術開発部は、市場での競争優位を獲得できる技術開発戦略の策定やその戦略に沿った新技術の開発、検証、技術者の育成などを行っています。数年先を見据えた技術開発戦略の策定に向けて、市場や最新技術の動向を調査する他、シリコンバレーに社員を送り、数多いスタートアップ企業(以下、Startup)の中から、特に特徴的で高い技術力を持つ企業を発掘し、NTT Com社内やお客さまとの間の新規ビジネス創出をサポートする取り組みを行っています。

Silicon Valleyのエコシステムに深く入り込み
Startupと連携した新規ビジネスを創出

Silicon Valleyには、世界規模でビジネスを展開しているIT関連企業に加え、成長が期待されている数多くのStartupが集まっています。そしてStartupの周辺は、そこに投資をするベンチャーキャピタル(以下、VC)や共に市場の開拓を挑む大学、企業などのさまざまなプレイヤーにより、イノベーションを生み出すためのエコシステムが形成されています。
Silicon Valleyへの進出を試みる日系企業の多くが、まずは情報収集目的で社員を送りますが、カンファレンスや日本人向けコミュニティへの参加にとどまり、真のシリコンバレーコミュニティに入り込めずにいます。この原因の一つが、おおよそ2~3年と設定された短い駐在期間にあり、個人としてStartupと構築した良好な信頼関係を、帰任後にうまく継続できないことにあります。そこでNTT Comでは、一度帰任させた同じメンバーを再度Silicon Valleyへ送り出す決断をし、Silicon Valleyの代表的なアクセラレータであるPlug and Play(以下、PnP)を拠点に、Silicon Valleyのエコシステムに深く入り込みながら、Startupの技術の目利きやStartupと連携した先進的なサービスの市場開拓に取り組んでいます(写真1参照)。

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写真1 Silicon Valley にあるPlug and Play(PnP)のオフィス

 

Silicon Valleyにいる“ピッチャー”から投げ込まれた情報を
日本の“キャッチャー”が受け止めて展開をサポート

NTT Comでは、Silicon Valleyの情報を日本サイドに投げ込む(提案する)“ピッチャー”と、投げ込まれた情報を受け止める(展開する)“キャッチャー”で役割を分担し、両者が一緒になってStartupとの新規ビジネス創出に向けた双方向のコミュニケーションやパートナリング構築をサポートしています(図1参照)。

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図1 Silicon Valley Startupの発掘体制

 

Silicon Valleyに常駐して“ピッチャー”を担当している小室智昭担当課長は、PnPのイベントや全米各地で行われているイベント等でStartupの発掘を行い、年間で1,000社を超えるStartupと接しています。その中から今後発展の可能性が高く、NTT Comやお客さまとの協業を期待できるStartupを絞り込み、“キャッチャー”に紹介します。“キャッチャー”は紹介されたStartupの技術が、お客さまのどのような課題を解決し、どのような活用が考えられるのか検討を重ねてユースケースを具体化し、営業組織と連携しながらお客さまへのデモンストレーションやPoC(Proof of Concept)推進をサポートします。
“キャッチャー”に紹介されるStartupは年間100社程度ありますが、実際にお客さまとの協業がスタートしたり、PoCを進められるStartupは、年間を通じて2~3社程度です(図2参照)。

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図2 Silicon Valley Startupとのパートナリングに向けた活動例

 

この数値は低いように感じられますが、Startup投資に特化したVCファンドが公表している「ビジネスにつながるベンチャーと面談できる確率」は1.0~2.0%ですから、さらにPoCまで進む企業の数を考えれば、決して低い数値ではありません。これまでStartupの何社かが、NTT Comのサービスにも組み込まれています。

迅速な新規ビジネス創出に向けた
「PoC as a Service」を展開

Startupの技術に関心を持ったお客さまが、真に有用な技術かどうかを評価するためには、PoCを実施する必要がありますが、PoC環境の構築やPoCのゴール設定、Startupとの信頼関係の構築などPoCを進めるためにはいくつもの壁をクリアする必要があります。また、Startupにとっても、日本のお客さまとの関係構築や言語や文化の違などの障壁があり、迅速に進めることが難しいのが現実です。NTT Comは、お客さまがPoCを推進するために必要なサポートを「PoC as a Service」の形で展開しています。これによりPoCを開始するための障壁を下げ、お客さまが本来取り組むべき検証や評価に時間を割くことを可能とし、次の段階へとスピーディに検討を進めやすくするための取り組みです。
今後も、オープンイノベーションの一つの方法としてStartupとの協業を考えているお客さまと、日本に進出を考えているStartupの架け橋となり、新規ビジネス創出における新たなエコシステムを構築していきます。

NTTコミュニケーションズ 
技術開発部 技術戦略部門
【左から】担当課長 島村 健、主査 金児 裕美
平尾 明子、部門長 貞田 洋明

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