社長インタピュー

NTTインフラネットのめざすもの


鰍mTTインフラネット
代表取締役社長 工学博士
高島征二


<お問い合わせ先>
NTT インフラネット株式会社
ニュービジネス部
Tel 03- 5645- 1035
URL http://www.nttinf.co.jp


NTT インフラネットは、情報通信 用地下設備の技術専門家集団企業と して、平成11 年1 月に発足した。 NTT インフラネットは、NTT の基 盤設備関連業務だけでなく、他の企 業が利用することも可能なオープン な設備を提供するという。

そこで、島社長に、会社設立の 経緯からビジネス戦略まで、幅広い 内容について伺った。

わずか9 ヶ月間で過去13 年分の 2.5 倍の営業を達成!

――会社設立から1 年が経ちました が、売り上げ状況はいかがでしょう か?

高島 通信の自由化にあわせて NTT が民営化され、さまざまな企業 が情報通信の分野に参入できるよう になりました。特に最近は、インタ ーネットの普及に伴うアクセス系の 高度化、多様化が進み、参入企業が 格段に増えています。

たとえば、NTT 民営化以降NTT インフラネットが発足するまでの13 年間に相互接続目的で設備共用に供 した地下管路の総距離は950 Km で すが、NTT インフラネットが発足し た昨年4 月から12 月までの9 ヶ月間 で受け付けた地下管路共用の申し込 み距離は2250 Km に達しています。 過去13 年分の2 .5 倍分をわずか9 ヶ 月間で達成したことになります。

――地下を見ていれば、経済の動き が分かるということですね。(笑)

情報通信用地下設備の 技術専門家集団企業

――会社設立の背景についてお話く ださい。

高島 背景の1 つは「NTT がグルー プ事業経営に変わることになった」 ということだと思います。

NTT はコモンキャリアとして、東・ 西の地域会社と、長距離・国際の会 社に分かれました。それに合わせて、 グループ経営の基本としてこれまで NTT 1 社体制の中でやってきた様々 な業務を、明確なミッションを持っ た各種専門会社を立ち上げ、事業と して遂行していくことにしました。

NTT インフラネットは、従来 NTT の内部業務として行なってき た情報通信地下土木設備に関する総 合エンジニアリング業務をNTT か ら一元的かつ全面継承し、専門家集 団企業として独立しました。さらに、 これまで培ってきたスキル・ノウハ ウの分散・弱体化をさけることに配 慮して、全国一本の会社をつくるこ とになったわけです。

3 つのタイミング

高島 もうひとつの背景に3 つのタ イミングがあります。

1 つは、情報通信の自由化の進展 です。通信市場への新規参入が進展 し、各社が積極的にネットワークの 相互接続をするようになりました。 当然参入各社は独自のネットワーク を構築される訳で、これに伴い地下 スペースを使いたい、借りたい、とい う非常に強いニーズが出てきました。

2 つ目のタイミングとして、光フ ァイバ技術が本格化したことがあり ます。これだけの情報ニーズの高ま り、伝送容量、トラヒックの爆発的増 大の見通しに対して、もし従来技術 の銅心線メタルケーブルを使ってい く状況の流れのままであれば、当然 新たな莫大な地下スペースを必要と します。しかし、光ファイバという技 術が出てきて、これからのメガから ギガ、あるいはテラという3 桁単位 のトラフィックの増大があったとし ても、光ファイバにかかわるさまざ まな技術を駆使すれば、管路スペー ス、地下スペース的には現在の見通 しの中で十分にこなせるであろう。 そうした確信が出てきたから、余裕 のある地下土木設備については他の 事業会社にも使っていただこうとい う気持ちになれたということです。

3 つ目のタイミングとして、競争 が進展してコスト競争力が本格的に 問題となってきたことがあります。 コモンキャリアとしていかにコスト を削減し、あるいは効率化するかが 大きなテーマになってきました。主 要コスト構成要因の一つである地下 土木設備も例外ではなく、それをい かに効率的に使うかということが具 体的テーマになってきました。そう いう流れの中で、元々は一企業とし て自分たちのサービス提供のために 長期の需要予測をベースに建設し、 所有してきた地下土木設備であって も、もっとオープンにしていこう、 みんなで有効に使っていこうと、そ ういう展開になってきました。

NTT インフラネットはこんな顔

――NTT インフラネットとは、ど のような会社なのでしょうか?


高島 まず、NTT グループ内におけ る位置付けからお話ししましょう。

昨年7 月にNTT 再編成があり、 NTT は多くの会社からなるグループ 企業集団になりました。これらグル ープ企業は1 つは、サービスを提供 する会社、もう1 つは、経営資源を 活用する会社に分類されます。

NTT インフラネット社は典型的な 資源活用会社に位置付けられます。 これは先輩会社であるNTT ファシ リティーズ、NTT-ME/TE 、NTT コ ムウェアなどと同じ位置づけです。

次に会社名の由来についてお話し しましょう。地下土木設備はインフ ラのなかのインフラということで、 インフラストラクチャ、それに加え て情報通信用地下土木設備をポイン トからポイントへネットワークとし て提供していくことを使命とすると いう思いが込められて、インフラス トラクチャとネットワークを組み合 わせてインフラネットという名称に なりました。

――かなり大規模な会社と聞きまし たが…。

高島 営業エリアは全国をカバーし ていまして、北は北海道から南は九 州まで、9 つの支店があります。営 業拠点は県単位に配置しており、全 部で61 拠点あります。支店・営業所 はNTT 東西地域会社の技術総合セ ンター並びにGPU 支店の所在位置 に対応して配置してあります。

社員数は1550 名で、営業は平成 11 年4 月に開始しました。資本金 は20 億円で、NTT 100 %出資でスタ ートしました。営業規模は初年度と して、2 百数十億円の売上げになる と思っております。

――業績も好調で将来性もあります から、ドコモのように上場も考えて おられるのですか?

高島 2 つの考え方があると思いま す。1 つは、上場して世の中の評価を 受け、利益を追求していくという考え 方、もう1 つは、地下設備を社会資本 としてさらに公共性を高めていくと いう考え方です。後者の場合は、上場 最優先の方向ではないでしょう。最近 は上場がブームですが、どちらの方向 を指向するか、もう少し時間をかけて 見極めることとなるでしょう。

NTT 設備の運用管理と対外的 なニュービジネスが2 本の柱

――ビジネスはどのように展開され るのでしょうか?

高島 この会社の事業活動は大きく 分けて2 つの柱からなります(図1 )。

図1 インフラネット社の経営基本方針



1 つはNTT からのアウトソーシング 事業、これがベースロードとなりま す。2 つめは新たな事業領域の拡大・ ニュービジネスという分野です。

NTT の情報通信用地下土木設備 としては、とう道は約1000 km 、管 路は67 万km 、マンホール数で言え ば70 万個、簿価での資産額約1 兆8 千億円、NTT 設備全体の約20 %に あたる膨大な設備を持っています。 これらの資産は元々NTT が建設・ 保有していまして、引き続きNTT 東西、コミュニケーションズ各社が 継承していますが、これら全てに関 する総合マネジメント、即ち長期計 画、単年度計画の策定、具体的各工 事のエンジニアリング、施工発注支 援、保全・維持管理、運用、さらに 建設・保守運用に伴う対外折衝を、 一元的、全面的に継承して発展させ るという事業です。これが私達のベ ースロードになっています。

ニュービジネス事業は、今日まで 培ってきた、技術力、ノウハウ、人的 チャネル、種々のデータベース、 NTT 研究所の研究開発成果等々を対 外的に展開、事業化していくという 分野です。ニュービジネスですから、 あらゆる可能性を追求したいわけで すが、はずしてはいけないこととし て、私達の強み、コアコンピタンスを 軸足にして展開していくべきである という事です。この分野は文字通り ゼロからの立ち上げでありますので 会社としても社員1 人1 人としても 新たな事業展開に必要な技術力・営 業力の育成、それに公的な資格の取 得等、大車輪で取り組んでいます。

地下管路貸与をワンストップ ショッピングとして実現

――地下管路を借りるに当たって は、今までは結構難しい手順を踏 まなければならなかったようです が…。

高島 NTT 管路等へのケーブルの 共同収容事業は、以上お話しした2 つの事業の柱の両面にまたがったき わめて重要な新しいミッションであ るといえます。

通信の自由化、ネットワークのオ ープン化の流れから、管路設備等の 利用ニーズが新規参入の各社を中心 に非常に高まっています。あわせて、 道路占用に関する、行政サイドから の規制緩和等が進んできており、管 路設備等の二次占用が許されるよう になりました。

これまでこの管路等の設備共用に 関する受付業務はNTT の各支店で 行っていましたが、平成11 年4 月1 日のNTT インフラネットの営業開 始以来、すべての対外的業務を、 我々NTT インフラネットで一元継 承し、実施しています。我々は、独 立した専門会社として、公正・守 秘・迅速・信頼を基本ポリシーとし て事業に取り組んでいます。お客様 が必要とするルート構成について、 NTT が所有する地下土木設備は勿 論のこと、それ以外の設備の利用の 可能性を含めて、伝送路全体のルー ト選定に対する総合的コンサルティ ングを行っています。

更にはルート決定後は、NTT 地下 土木設備の借用手続きは勿論のこ と、道路管理者対応業務、お客様自 前の土木設備建設のための設計・施 工管理等のエンジニアリング業務、 ケーブルの布設に関する全面的なご 協力、更には将来の設備の保守受託 も行える体制を整えています。

国内でこのような幅広いサービス 提供ができる企業は今のところない でしょう。これがNTT インフラネ ットの強みでもあります。

徹底的なBPR とIT 利用で 業務を効率化

――非常に変化の激しい時代です が、どのように対応されるのでしょ うか?

高島 まず、私は、常々「うちの会 社には度数計は付いていませんよ、 この会社では度数計は回りません よ」と社員に伝えています。普通に 従来通りの仕事をこなしさえしてい れば自動的に度数計が廻り収益が上 がり給料がもらえるといったカルチ ャーから一刻も早く決別しようと呼 びかけています。

次に事業運営の展開として事業の 2 本の柱に関して、まずNTT から のアウトソーシング事業、これは 我々の専門分野ですからお手のもの なのですが、この分野の仕事を徹底 的に効率化・合理化をはかり、それ により生み出したと言うか創り出し たと言うか、人・物・金・時間とい った経営資源をニュービジネスにシ フトし投入していく構図を具現化す る事に全力を上げています。

――具体的には?

高島 徹底的に情報技術(IT )を採 用し使い込んで、あわせて、ビジネ スプロセスリ・エンジニアリング (BPR )を徹底的に推進していくと いうことです。

幸い、以前から着々と準備し、営 業開始と同時に、NTT アウトソーシ ング事業分野の基本業務に関し、受 発注のシステム、地下スペースの管 理システム、中長期の基本計画シス テム、値決めのサポートシステム、 支障移転のシステム等、13 のシステ ムを導入することができました。こ れは極めて強力でありまして、ネッ トワーキング、いわゆる、イントラ ネット、エクストラネットを用いて 仕事をまわすことができます。

また電子メールを使って、経営ト ップ陣と社員が直接情報交換するこ とでオープンでフラットな、風通し の良い組織づくりを実現していま す。実際に私からも節目節目に、経 営方針等を全社員に直接メールで伝 えておりますが、その度に相当数の 返答が返ってきます。

――コンピュータのキーボード文化 に対する抵抗はありませんでしたか?

高島 社員の平均年齢は他のNTT グループ企業より高い方ですが、社 員全員が会社発足に対する使命感を 持っていたため、特に抵抗はありま せんでした。そもそもシステム自身 もインフラネット社のエキスパート が設計しました。

お陰様で、昨年4 月の営業開始時に、 全国一斉にシステムを切り替えて会 社を立ち上げることができました。

――仕事のスタイルは?

高島 NTT からのアウトソーシン グ事業においては、「付加価値を付 ける」ということをキーワードとし ています。NTT のコスト競争力の強 化とサービスの向上に貢献できなけ ればなりません。

業容拡大・ニュービジネスについ ては、「お客様へのソリューション の提供」をキーワードとしていきま す。インフラネットに相談すればい ろいろな良い情報を得られる、絶対 におかしなことにならないと言われ るようになりたい考えています。 社内の仕事のスタイルは、IT の 駆使とネットワーク化で「スピード」 と「オープン」をキーワードとして おります。

ニュービジネスの芽

――役立つおもしろい技術をいろい ろお持ちのようですが…。


高島 たとえば電柱などの架空設備 の地下化事業は我々の最も得意とす る分野です。都市景観の問題は、欧 米から見ると日本はかなり遅れてお り、このような中で国や地方自治体 の計画する環境整備事業において、 我々のノウハウが十分お役に立てる と考えております。また、通信の技 術開発で培ってきた成果物、たとえ ば光ファイバを、歪センサとして使 い、道路、がけ、河川等の安全監視 システムとして利用する技術も商品 化しています。その他、水質改良等 の技術の商品化にも取り組んでいま して、環境問題にも、かなり貢献で きると思っています。

2 つの経営目標

――将来計画はいかがですか?


高島 情報通信の分野では昨今アメ リカの技術が優勢のように見えます が、地下管路の質では、ニューヨー クよりも東京の方が格段に上です。 この強みを生かせば、日本がアジア の情報通信のハブになることも夢で はありません。そのような仕事のお 役に立ちたいと思っています。 会社の当面の目標として、次の2 つをあげています。

1 つは「初年度から絶対に赤字に しない」、もう1 つは「ニュービジ ネス事業売上の極大化」です。 変化が激しい時代ですから、新規 事業分野では、受注量とスピードの かけ算が私達の力のバロメータにな ると思います。従って、一刻も早く はずみを付けて、ニュービジネスを 最大限に立ち上げたいと思っていま す。

――本日は、どうもありがとうございました。

(聞き手:本誌編集長 黒田幸明)