私が気になる3つの技術



NTT コミュニケーションズ
ソリューション事業部
第二営業部長
中川 雅行



IT −PFI

近年、公共事業は、「箱物(ハード ウェア)」指向から「ソフトウェア」 指向にシフトしている。しかし、ソフ トウェアは民間事業者の工夫による コスト削減効果が大きい分野である。 このような背景から、公共事業分野 において、民間事業者の資金や経営 ノウハウを活用し、社会資本を整備 する「プライベート・ファイナンス・ イニシアティブ」(PFI )に対する関 心が高まっている。特に技術革新の 早いIT 分野におけるPFI (IT −PFI ) への関心が高まっている。

このよう な動きの中で、平成11 年12 月、神奈 川県藤沢市は、総合防災センタ事業 において国内初のIT −PFI 事業を開 始した。主な事業内容は、「総合防災 センタ」の設計、建設および防災情 報システム、消防緊急通信指令シス テム等情報通信システムの構築・保 守・運用である。IT −PFI による公共 側の大きなメリットは、民間の分野 で培われた人材、ノウハウを包括的 に事業に投入することができること である。公共側は新たに専門的な人 材を確保・育成することから開放さ れ、事業全体の監視、指揮能力の向上 に傾注できるようになる。

今後は、公 共事業分野においてIT −PFI を採用 する動きがますます加速すると思わ れる。

BAS のオープン化

企業運営に大きな割合を占めるビ ル施設のコストを、構築から運営まで のライフサイクルコスト(LCC )で捉 えると、その半分をリニューアルや管 理運営が占めている。そのため、空調、 省エネ、セキュリティ等まで含めた BAS (ビルディングオートメーション システム)の低価格化、効率的な運用、 拡張性といった点に対する関心が高 く、そのためのオープン化は、IP (Internet Protocol )をベースとして、 必須の流れとなっている。このような 流れの中で、オープン化は、ベンダ間 の相互接続性や最適設計を行うシス テムインテグレータ(SI )の地位を上 昇させた。

マルチベンダ環境における 最適設計・構築、中央監視装置のWeb 対応、各種DB の構築、モバイルによ る遠隔監視等、オープン化に伴い、今 まで検討されていなかった技術分野 とBAS との融合が必要になってきて いるのである。

このような技術分野は まさに私達の得意とする分野である。 BAS の分野は今まであまり注視して いなかった分野ではあるが、今後ます ます拡大していくマーケットであり、 今後重点的に取組んでいく必要のあ る技術であると考えている。

アウトソーシング

アウトソーシングが、今までの人的 リソースの外部からの派遣、子会社へ の業務委託といった内的なものから、 専門性や市場イニシアティブを持っ た外部企業との提携といった外的な ものに発展してきている。さらに、ジ ョイントベンチャーという形式で、自 社の強みを活かしつつ、外部資源であ る他社の専門性とを掛け合わせた、全 く新しい価値(ビジネス)創造へ発展 しているケースが増えてきている。

このような動きは、情報通信分野に おいても顕著に表れている。私達は、 自分達の強みであるマルチベンダ環 境におけるネットワークマネジメン ト技術、認証・暗号化等のセキュリテ ィ技術、データセンタ運用ノウハウ、 市場ニーズを先取りするマーケティ ング力等の技術力だけでなく、アウト ソースする企業になり代わって、ある いは一緒になって、新たなビジネス展 開を提案し実現するための「知」の部 分をさらに磨き、電子メール利用を中 心とするイントラネットの運用や、イ ンターネットの経営戦略的活用に対 するコンサルティング、EC 等へ重点 的に展開し、新たな事業機会を創り出 して行きたいと考えている。




NTT データ
技術開発本部
情報科学研究所
中村 太一

光ネットワーク (Photonic Network )

1 芯の光ファイバに1 つの波長あ たり10 Gbps 伝送できるチャネルを 100 チャネル以上波長多重化する WDM は2 .8 Tbps で300 km を伝送で きるようになり、基幹ネットワーク の容量は驚異的に増えてきているの に比べて、他方、加入者線はISDN が64 kbps 、ADSL でも数Mbps であ る。

このアンバランスを埋めるため、 DARPA (Defense Advanced Research Project Agency)がス ポンサーのNGI-ONRAMP(Next Generation Internet-Optical Network for Regional Access with Multiwavelength Protocols)の支援 を受けたMIT Lincoln Laboratory 、 AT&T 、Nortel Networks などによ るコンソーシアムは、IP Internet へエンド・ユーザが高速アクセスで きる次世代の光WDM 地域ネットワ ーク・アーキテクチャを開発してい る。

この次世代の光WDM 地域ネット ワーク・アーキテクチャは、光デバ イス技術、特に光波長ルーティング 技術をもって、直接光を切り替えた り増幅する機能を有するI P Internet のアクセスノードを実現す るものだ。NTT の研究所もフォト ニック・ネットワークの研究に取り 組んでおり、今までの技術進歩の延 長線上から飛躍したネットワークが 提供され、それにより、新しいブロ ードバンド・サービス時代の到来が 期待される。

Collaboration

SCM (Supply Chain Management ) は非定形業務領域の生産性向上を期 待され、あらゆる業種業界に適用さ れようとしている。定義された業務 を記述したワークフローに従い、コ ンピュータ・システムで業務処理を 実行させることでSCM を実現でき るが、記述できない例外業務や責任 を問われ最終判断が求められる業務 には人とコンピュータあるいは人と 人との「コラボレーション」がつね に伴ってくる。

たとえば、最新の高可用性コンピ ュータ・システムでも、不測の事態 には人が介在して運用で対処してい るし、自然災害、事故や頻発するネ ットワーク経由の攻撃などに対する 危機管理には人が迅速に「意思決定」 行い、被害を最小限に抑えなければ ならない。このように人が関与する 「コラボレーション」がコンピュー タ・システムと社会を連携・協調さ せて「安定な社会システム」を実現 できると考えている。

「コラボレーション」の進展は情 報、思考プロセスおよびTV 会議の ような分散された空間を共有する技 術、種々のエージェント、自然なヒ ューマンインタフェースを形成する 自然言語理解、音声認識・合成技術 などの進歩に期待できる。
分散オブジェクトに基づく High Availability Computer System


コンピュータ・システムの障害 は、莫大な経済的損失を引き起こす だけでなく、現代社会の安全をも脅 かすが、頻繁にサービスが追加修正 され、見通しが付かない拡張性を備 えて24 時間「止まらない」高可用 性コンピュータ・システムを実現す ることは容易ではない。

将来のコンピュータ・システムは 汎用機やオープン・システムから分 散オブジェクトに基づくコンピュー タ・システムに変わっていくだろ う。このシステムは、高速で高信頼 なネットワーク環境を前提とする と、従来のコンピュータ・システム の概念と全く異なり、マルチメディ アのトランザクションを実時間で処 理でき、「コラボレーション」も提 供できる高可用性のアーキテクチャ が提案されると考えている。