●理想的なビジネスプラットフォームを構築するEAIソリューション
 Kabira Technologies.,Inc
 ビジネス開発事業部 部長
 ダグラス・エリンレィック氏


【三井物産】
通信事業者の抱える課題解決に貢献する
次世代OSS統合基盤ソリューション“Kabira”


■通信事業分野におけるシステム統合の必要性が高まる

 一般的に通信事業者は、それぞれのサービスごとに独立して、システムの構築を行ってきている。現在では、個々のシステムが乱立、それぞれを業務ごとに単体で利用しているような状況だ。そのため、既存のシステムを有効活用しながら、システム間のギャップを解消していく、OSSの統合が注目されている。

 またDSL等の進展により、通信事業者のネットワークシステム自体が、複雑化してきている。多くのネットワーク機器メーカーが、多様なソリューション提供を行っているということもあり、単一ベンダーに依存したシステム構築だけでは顧客ニーズに対応できなくなってきているのが現状だ。

 さらに、通信分野への新規参入企業増加に伴い、システム構築の時間短縮化はもちろん、ソフトウェアの開発においても、多様化するニーズに柔軟に対応し、かつ短期間で実用化を図ることができる、新たな工法へのニーズが高まってきている。

 以上のような通信事業者が潜在的に抱える課題に対して、これまで多くのソフトウェア製品や、通信事業者向けの料金系システム、顧客管理システム構築を手がけてきた三井物産では、通信事業者向けのソリューション開拓を2000年頃から検討。グローバルで、メジャーと成り得る世界の最先端技術を保有するベンダーと提携し、日本の商習慣に合致したソリューション提供を積極的に行うことを基本方針としている。ソリューションの選定にあたっては、欧米通信事業者における実績とベンダーとしての技術力、また日本独特の業務事情にも、柔軟に対応できるという点に重点をおいた。

■短期間でのシステム構築を実現しネットワーク機能向上を実現する“Kabira”

 同社が、初めてKabiraに出会ったのは、2000年10月頃。システムインテグレーション業界での長年の経験から、既存のシステムを活用しなが ら、新たなOSS統合基盤となるような通信事業者向けソリューションを模索していた同社では、EAI分野に特化することなく、システム構築を短期間で実現し、かつ業務システム機能の向上を図ることのできるabiraに注目。度重なる製品評価を経て、通信事業者の既存の業務支援システムが直面している課題へ貢献できるものとして、Kabiraを高く評価し、日本での販売を決定した。

 Kabira社は、1996年、米国カリフォルニア州に元サイベースのエンジニアを中心に設立された。会社設立後約3年半は、今回紹介するソリューションであるKabira基盤サーバーの開発に特化。製品リリース後、飛躍的な業績を上げている(図1参照)


図1 Kabira社業績推移

 現在では、全世界60社以上に導入実績を誇り、世界的な製品展開を行っている。同社ビジネス開発事業部部長のダグラス・エインレィック氏は、同社の製品であるKabira製品ファミリに関して「電気通信事業者の抱える業務支援システム(OSS)の問題に着目し、この製品は開発されています。短期間で、かつ機能性の高いシステムソリューション構築を実現できると、全世界の電気通信事業者を中心に高い評価を得ています」と語る。

 それでは、OSSの課題解決に貢献するKabiraについて、さらに詳しく解説する。

 米国Kabira社の製品であるKabira製品ファミリは、通信事業者のBSSおよびOSS、またネットワークシステム周辺における、既存システムと柔軟に相互接続する機能を持つ。この観点からは、一般的なEAIに類する機能を持つといえるだろう。

 またKabiraでは、ネットワーク・エレメントとダイレクトに接続する機能も合わせて提供されている点が特徴だ。この点については、従来型のEAI との差別化が図られているといえる。

 Kabira製品ファミリの構成としては、超高速インテグレーション・ブローカとしてのKabira基盤サーバー。その上で動作する、アプリケーション開発を行うためのフレームワークとして、メディエーション、プロビジョニング、そしてKabira基盤サーバーからフロースルーで任意のアプリケーションの呼び出し制御やネットワーク・エレメントの制御など、ワークフローに従ったシステム統合が実現できるワークフロー制御機能を提供している(図2参照)。


図2 Kabira製品ファミリ

 Kabira基盤サーバーは、アプリケーション処理を共有メモリ上で行うシステム・アーキテクチャーを取っており「ソフトウェア・スイッチ」に例えることができる。高速EAIバスとしてシステム統合の中核となるKabira基盤サーバーは、特にネットワーク・エレメントとの相互接続にその優位性を発揮することから、単なるEAI というよりは、ネットワークとアプリケーションの統合を行うNAI(Network Application Integration)といえる。

 Kabiraでは、これらのEAI およびNAIを実現する機能分野として、アダプタを用意。特定のBSSパッケージやネットワーク・エレメント、またKabiraのアプリケーションとの相互接続の実現に貢献する。

■既存BSS/OSSを有機的に統合するKabira BPMソリューション

 昨今、前述のような独立したBSSおよびOSSをバンドルし、新たなサービス創出を効率良く実現するBPM(Business Process Management)が注目されている。TMF(テレマネジメントフォーラム)のメンバーであるKabira社では、このようなニーズに対応した、標準化の流れに焦点をあてた製品開発を行っている。

 通信事業者のシステムは、フロントシステム層(CRM層)、プロセス統合制御層(BPM層)、既存のBSS/OSS層(基幹システム)の3つのレイヤーに分けて考えることができる(図3参照)。ここでは基幹システム部分が独立しており、サービスごとに完結するような構成がなされている。このようなシステムにおいて、複数のサービスをバンドルして提供したり、またパーソナライズされたサービスを提供するために、ビジネスプロセスを統合するプラットフォームが必要となる。


図3 BPM基盤によるBSS/OSSシステム統合

 Kabira BPMソリューションでは、システム全体の中核としてワークフローに従ったビジネスプロセスの制御・管理を行うことが可能だ。図3のように、標準的なワークフロー定義を行うことにより、ビジネスプロセスの自動化を実現するプラットフォームをKabiraは提供している。もちろん、人による手作業をプロセスの中に取り込むことや、長期間のオーダ処理にも対応しており、プロセス処理状況のリアルタイム・レポーティングも可能だ。また既存のレガシィシステムでは、多種多様なプロトコルのインタフェースが活用されているが、Kabiraでは、柔軟なプロトコル変換による、スムーズな相互接続を実現することができる。ここでは、EAI機能を利用しつつ、BPMとして求められる業務プロセスの自動化が実現されるといえるだろう。

■多様な接続性を実現するマルチベンダ・プロビジョニング

 例えば、携帯電話で新しいサービスを開始する場合、単一の交換機だけでなく、メールの使用や、留守番電話の設定等、複数のネットワーク・エレメントの設定処理が必要になるが、これらの作業において、ワークフローに従った論理的な流れを実現することが可能だ(図4参照)。


図4 Kabiraのプロビジョニング

 通信事業者は、受注したサービスオーダに基づき、サービス提供に必要なネットワークを特定し、コマンドを発行、サービス・ネットワークの設定を行う。さらにネットワークの設定においては、ワークフロープロセスの定義や変更、エラー時の対応やリカバリ処理など、多くのことを考慮しなくてはならない。Kabiraでは特定のネットワーク・エレメント向けのアダプタを用意しており、短期間でのプロビジョニングシステム構築を支援している。これらは、携帯電話だけでなく、固定電話網はもちろん、ネットワークが複雑になりがちなDSLのネットワーク・エレメント等、様々なネットワークへのニーズに応えることのできるNAIソリューションといえる。

■コンバージェントメディエーション・システムの構築

 メディエーション・システムでは、適切な従量制課金を行うため、通話ログ情報を確実に処理するシステムの構築が必要だ。Kabiraでは、豊富なアダプタが用意されているので、ネットワーク・エレメントから個々の情報を直接取得することが可能だ。また、メディエーション処理で、典型的に必要とされるビジネスプロセス、例えば通話ログの重複検査、長時間コールの集約等は、あらかじめ用意されたコンポーネントを接続するだけで、利用することができる。

 既存のコンポーネントだけでニーズに対応できない場合は、テンプレートが用意されているので、ニーズに合致したコンポーネントを新たに作成することも可能だ。

 さらに、新たなサービスの提供に伴い、通話ログをネットワーク内の異なる交換機から取得するニーズに対しても、コンポーネントをダイナミックに追加することで迅速な対応が可能だ。Kabiraは昨今注目されているIPメディエーション・システムにも、対応している。たとえ複雑なネットワークに対するメディエーションであっても、非常に短期間で構築できるという点が特徴としてあげられるだろう。

 以上3点が、Kabiraが提供する、代表的なソリューションといえる。

・パッケージBSS/OSS の補完
 特定のソフトウェアベンダが提供しているパッケージ製品だけでは補いきれないきめ細かな機能をKabira上で新たに開発し、実行することが可能だ。例えば、プリペイド式携帯電話システムへの対応や、特定のイベントに応じて顧客へメッセージ配信を行うなどの処理を実現するシステムを短期間で開発、実行することが可能になる。

・大容量データ・キャッシング
 金融業向けソリューションとして活用されている機能で、Kabiraのサーバー・アーキテクチャーの1つであるソフトウェア・メモリキャッシュを応用することで、データへのアクセススピードを飛躍的に向上させることができる。

 以上のような2点のソリューションも、Kabira導入により、柔軟に実現可能だ。

■高性能・高機能なアプリケーションサーバーと最新ソフトウェア工法

 Kabiraで使用されている技術は、大きく分けて、ランタイム環境(実行環境)と開発環境の2つのコア・テクノロジーに分けることができる。最速の実行環境と最速の開発環境を提供する最新テクノロジーである。

ランタイム環境
 ランタイム環境は、近年低価格化と大容量化が進むハードウェア資源、とりわけメモリとプロセッサを余すことなく活用することで、サーバーの潜在能力を100%引き出すことを目的に設計された。Kabira は、このコンセプトをソフトウェア・スイッチと名付けた。すべてのデータ交換は、システムの共有メモリを介して行われるため、データ転送負荷が大幅に軽減される。あたかも、ネットワーク上の交換機のごとく、高速なデータ交換が可能になる。また、アプリケーション開発者は、マルチスレッド・プログラミングによる並列多重処理を特別に意識することなく、容易に実現することができる。さらに、一般に複雑で、設計・実装共に長期間を要する資源管理、障害管理など、ミッションクリティカルなアプ
リケーションに求められる信頼性は、ソフトウェア・スイッチがエグゼクティブ・サービスとして提供する。結果として、プロセッサを高効率で利用するアプリケーションを安全・確実に展開することができる。

開発環境
 このKabira基盤サーバー上で動作するアプリケーションを開発する環境として、洗練されたRAD環境が用意されている。これは、OMG(Object Management Group:オブジェクト指向システム技術の標準化団体)が提唱するMDA(モデル駆動型アーキテクチャー)参照アーキテクチャーを実現したRAD環境である。MDAにおいては、アプリケーション開発者に統合された共通のシステムビューを与える。TMFをはじめ、数多くの業界標準化団体がUML表記法を用いた共通データモデルを策定する中、時流にのった思想を実現しているといえよう。

 ここで各アプリケーションの動作は、UML表記法を用いてビジュアルに定義され、開発者は、ビジネスロジックだけに集中して設計することができる。設計後、GUIツールを使って各種のアダプタを接続することで、実装技術とのマッピングを行う。アダプタは、特定のプロトコルやプログラミング言語、すなわち実装技術を抽象化したソフトウェア・コンポーネントである。

 マッピングが完了すると、そのアプリケーションを実現するためのソースコードが自動的に生成される。これまでは、人の手を介してコーディングを行っていたが、この部分が自動化されることにより、開発期間の大幅な短縮を実現することができる。従来、人を介して作成されたコードの場合、設計書とコードとのマッチングは、プログラマに依存してしまうケースが多いため、時として、正確に反映されないケースがあった。Kabiraでは、完全な自動生成が行われるので、UMLで表現されるアプリケーションの設計は、100%コードに反映される。そのため、正確で保守性の高いアプリケーション開発に貢献することが可能になる。

 Kabiraでは、通信事業者の抱える課題に対して、既存のシステムやネットワーク設備、システム・コンポーネントを活用しながら、短期間で高機能な、より統合されたシステム環境を構築することが可能だ。またこの製品は、個別ベンダや特定技術に依存していないため、幅広いネットワーク・エレメントへの接続を実現することができるので、従来のパッケージ製品では困難であったシステム間の接続、統合を図ることができる。

 このように、ネットワーク環境やシステム環境が複雑になり、高速なトランザクション処理が要求されればされるほど、Kabiraの優位性が発揮されると考えられるだろう。

 さらにKabira本来の開発生産性の高さに加え、コンポーネント工法を促進するフレームワークを備えている。そのため、ソフトウェアJIT(Just In Time)、つまり完成したものから、順次活用していくことができるようなソフトウェア開発を実現することができ、短期間での効率的なシステム構築に貢献することが可能となる。

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(こちらは2002年12月号になります)

(この続きの内容)
全世界60 社以上の導入実績を誇り、大手通信事業者を中心に幅広く貢献
■フランステレコムの事例−NAI 基盤としてのKabira−
■AT&Tの事例 −サービス・オーダ処理の自動化−
■Omnitel の事例−プリペイド・ソリューション−

 

 


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