●ネットワーク・アプライアンスの革新的ストレージ製品戦略
 日本ネットワーク・
 アプライアンス
 代表取締役社長
 鈴木 康正氏


INTERVIEW 日本でのFASサーバーのビジネス展開
パートナー各社と連携、サービスと共に
統合ストレージ・プラットフォームを核に
ターンキー・ソリューションを提供

■ファイラーからファブリック接続型へ―新統合ストレージ・プラットフォームを発表―

――10月1日の米国での発表につづいて、日本でも新しい統合ストレージ・プラットフォームを発表されましたが、まず新製品の概要からお聞かせください。

鈴木 ネットワーク・アプライアンス(NetApp)社は、これまでNAS(ネットワーク接続型ストレージ)のアプライアンス製品として「F(ファイラー)シリーズ」を提供してきました。今回、「FAS(ファブリック接続型ストレージ)900シリーズ」というこれまでにない革新的なストレージ・プラットフォームを発表しました。実は、約3カ月以上前から特定のユーザーには出荷を開始しており、その評価を踏まえた上で10月1日(日本では10月9日)に発表したわけです。どこが革新的かと言いますと、従来のNASに加え、FCP(ファイバー・チャネル・プロトコル)によるSAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)接続をサポートしている点です。

――TCP/IPネットワークから直接、ディスクブロックへのアクセスを可能にするiSCSI(アイスカジー)もサポートされるのですか。

鈴木 iSCSIは、FCPの代わりにIPを介してディスクブロックにアクセスできることから、FC接続のSANに代わるアーキテクチャーとして注目されています。まだIETF(Internet Engineering Task Force)のドラフト仕様の段階であり現在は正式には未対応ですが、IETFでの仕様が確定し次第、正式サポートを開始します。

――FAS900シリーズのシステム容量はどのくらいですか。

鈴木 現状、デュアルプロセッサベースの最大モデルであるFAS960のクラスタ構成(FAS960c)で、最大48TB (テラバイト)までの物理容量をサポートしています。昨年9月に、最大18TBの物理容量をサポートするF880を発表してから1年弱で新しいプラットフォームに移行しましたが、容量的には一気に2.5倍強まで拡大しました。FAS製品ファミリーとして、従来のF820を企業向けエントリーレベル・バージョンに刷新したF825から、F880、シングルプロセッサのFAS940、そしてハイエンドのFAS960まで、お客様の規模・用途に応じた製品を取り揃えています(図1)。この4つのタイプのモデルでNASとSANの統合を実現します。


写真1 FAS960cの外観



図1 FASサーバー製品ファミリー


――ハードウェア的に専用のASICを使っているのですか。

鈴木 製品の中身は、スロット等を独自に機能強化したIAサーバーに独自OSの「Data ONTAP6.3」を搭載したもので、ハードウェア的には特殊性を排除しています。したがってハードの個々の素子の部分についてカスタマイズしたASICは一切使用していません。

■FAS900シリーズの主な特長

――FAS900シリーズの全体的な特長をお聞かせください。

鈴木 まず、これまでのどのデータ・ストレージ・アプライアンスよりも高いスループットとレスポンスタイムを実現しています。さらにこれまでネットワーク・アプライアンス社が提供してきた様々な機能、例えばディスク障害からデータを保護するRAID機能であるとか、リモート監視機能、ホストもしくはクライアントとの接続性(FC、Gbit Ether)、サーバー環境に対するプロトコルのサポート、あるいは冗長構成の際に2つのクラスタのCPUを結ぶ外部接続バスといった点をすべて拡張強化しています。一例をあげると、現状は光ケーブルで接続しながら冗長構成を実現している部分を、業界で初めて新しいI/Oインフラ技術であるInfiniBandによるクラスタコネクトを実現しています。それからリモート監視に関しても、FASサーバーのCPUに万一障害が発生してもEメールによる監視機能が生きるような特別な仕組みを実現しています。

――FAS900シリーズのコントローラ部分の主な拡張強化のポイントは?

鈴木 今回のFAS900シリーズから、コントローラ部分は日本の某メーカーに製造委託しています。非常に堅牢な製品を製造していただいており、バスの転送レートを3倍、NVRAM(不揮発性RAM)も2倍、メモリー幅も3倍、CPU速度もPentiumW搭載により3倍となっています。さらに可用性、運用性・保守性も大幅に向上しており、管理運用・サービスが極めてやりやすい設計になっています。これらを全て総合しながら、なおかつOSのチューンナップを行った結果、パフォーマンスも大幅に向上しました(図2)。SFS(システムファイルサーバー)ベンチマークテストで、FAS960のクラスタ構成の場合、約5万近いトランザクションに対し平均3msの応答時間を実現しています。したがって、我々の既存の最上位製品であるF880と比べてスループットで約2.5倍、しかも平均応答時間は短縮しています。


図2 NetApp NASシステムのパフォーマンス

■FASがユーザーにもたらす新しいSANソリューションのメリット

――NASとSANというまったく異なるストレージ環境の統合を実現するFASは、ユーザーにどのようなメリットをもたらすのでしょうか。

鈴木 NetAppが提供するFASによるストレージ統合ソリューションは、NASとSANを単に物理的に統合したわけではありません。既存の競合メーカーの製品とは完璧に異なっています。NetApp製品の基本コンセプトであるアプライアンスによる管理運用の容易性、例えばリブート、OSのバージョンアップ、ディスクの交換・増設など、現在NetAppがNASの製品として提供している単純さというものは全て今回のSAN対応への拡張の中でも継承しています。もう一つのポイントとしては、1つの共通アーキテクチャーの中でSANとNASを統合している点です。これにより、例えば1つのソリューションで、複数の異なるアプリケーション、例えばブロックアクセスしか許さないアプリケーションであれファイルアクセスを許容できるものであれ、どちらでもよいというものであれ全て収容することができます。もう一つ重要な点は、OSがまったく同じですから、既存のNetApp製品をお使いのユーザーにとっては、コマンドが1 つ増えた、あるいは対応するプロトコルが1つ増えたに過ぎません。

――トレーニングも極めて簡単ということですね。

鈴木 FCスイッチやHBA (ホストバスアダプター)、構成ファイルの変更等といった通常SANで必要になる部分のトレーニングは数日必要になりますが、基本的に中身的には単にFCPが増えた、HBAが加わったのに過ぎませんので容易に習得することができます。またSANとNASの再配置が容易に行えるという点も特長です。一例を単純に言いますと、NAS側であるアプリケーションでデータファイルを生成し、それを1コマンド叩いた瞬間に、SAN側から見ると単にローデバイスにしか見えない。つまり、全く物理的に同じディスクのブロックの中にあるデータが、接続形態が異なるために共用することができます。

――NASによるファイルレベルのデータとSANによるブロックレベルのデータを同時に利用することが可能ということですが、そういったニーズが強いのでしょうか。

鈴木 管理上の面からも一つの機器からSAN/NAS両方のデータにアクセスしたいというニーズは当然強いわけです。データの本質的な共用・共有を実現している製品は、現状我々の製品だけです。このような点から、業界で最も優れたTCO(総所有コスト)削減とROI(対投資収益率)向上を実現しています。シーメンス社、サウスウェストエアライン社、ブロードコム社などFAS900シリーズのファーストユーザーからは、既存のSAN製品と比べ管理・運用費が大幅(場合によっては1桁以下)に削減できたという高い評価をいただいています。

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(こちらは2002年11月号になります)

(この続きの内容)
■Brocade社とOEM契約を締結FCスイッチも合わせて提供
■NASかSANかの二者択一ではなく統合されたプラットフォームを提供
■柔軟性の高い統合ストレージ・ソリューションで、NAS/SAN完全一体型のストレージインフラの実現が可能

 

 


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