連載第14-2回
UMLの基礎と応用

(株)NTTデータ 技術開発本部 副本部長
山本修一郎


アセンブリライン図
 
アセンブリライン図はプロセス図と同じようにアクティビティ図を拡張した図である。組み立てラインとしてのアセンブリラインに配置されたオブジェクトとプロセスとの関係を表すのに適している。アセンブリライン図の下部には複数のアセンブリラインパッケージが配置される。アセンブリライン図の上部には一連のプロセスが左から右に関係付けられて配置される。プロセスによって読み書きされるアセンブリラインパッケージの内部にあるオブジェクトが、垂直方向の破線によって関係付けられる。

 アセンブリライン図の例を図4に示す。

図4 アセンブリライン図
図4 アセンブリライン図


 アセンブリライン図によって明示されるアセンブリラインパッケージのオブジェクトは情報システムの情報オブジェクトに対応するので、この情報オブジェクトとプロセスの関係は、ユースケースを導出するのに用いることができる。たとえば、情報オブジェクトとプロセスを結ぶ破線に対して、アセンブリラインの情報オブジェクトに関する操作を対応付けることができれば、この操作に対する機能名からユースケース名を導くことができる。したがって、アセンブリパッケージに関する情報オブジェクトの読み書きに基づいて情報システムへの要求を定義するユースケースを抽出することができる。

構造ビュウ
 構造ビュウでは、クラス図を用いて、リソースモデリング、情報モデリング、組織モデリングを記述する。ビジョンビュウの概念モデリングのクラス図との違いは、リソース、情報、組織という、より具体的なビジネスの構造に焦点をおいていることである。

 リソースモデリングではリソース間の関係をクラス図で表現する。情報モデリングでは情報構造を対象として情報間の関係をクラス図で表現する。組織モデリングでは具体的な組織構造をクラス図やオブジェクト図で表現する。オブジェクト図で組織構造を記述した例を図5に示す。

図5 組織図
図5 組織図

振舞いビュウ
 ビジネスの振舞いビュウでは、ビジネスにおけるプロセスやリソースの振舞いを記述する。たとえば振舞いビュウではオブジェクトの状態や、各状態における振舞い、可能な状態遷移、同期関係などのプロセス間の相互関係を示すことができる。状態モデリングでは、状態、イベント、アクション間の関係を状態遷移図で記述する。

 相互作用モデリングでは、プロセス間の相互作用とリソース間の相互作用を記述する。プロセス間の相互作用については、プロセス図で記述する。共有リソースを介して相互作用するプロセス間の関係については、アセンブリライン図で記述する。これに対してリソース間の相互作用についてはシーケンス図やコラボレーション図で記述する。

まとめ
 本稿ではUMLを用いたビジネスモデリング手法として代表的なエリクソンとペンカー法について、ビジネスモデリング手法の構成と、主要な表記法であるプロセス図やアセンブリライン図を紹介した。詳細な点や具体例については、同書を参照していただきたい。

 エリクソンとペンカー法は、ビジョン、プロセス、構造、振舞いという4つの視点でビジネスをモデル化できるだけでなく、モデリングの責任者を上級管理者、ビジネスアーキテクト、プロセスモデラというように定めている点にも特徴があると思われる。エリクソンとペンカー法を用いて実際にビジネスモデリングを実施していく上では、日本では、これらの職種が必ずしも定着していないと思われるので、これらの責任者を明確に意識する必要がある。また、TOWSマトリクス、クラス図、ゴール/問題図、プロセス図、アセンブリライン図、リソースクラス図、情報図、組織図、状態図、シーケンス図、コラボレーション図という11種類の多くの図式を用いることになるので、これらの図式間の関係を整理しておくことが課題になると思われる。また、情報システムの機能を表現するユースケース図やデータモデルを表現するクラス図といった、システム構築上のUML図式との関係も明確にしておく必要があるだろう。

 さて、エリクソンとペンカーの本ではビジネスパターンについてリソースとビジネスルールに関するパターン、ビジネスゴールに関するパターン、ビジネスプロセスに関するパターンに分類して紹介している。エリクソンとペンカー法のビジネスパターンについては次回説明することにしよう。

参考文献
[1] エリクソン、ペンカー著、鞍田、本位田監訳、UMLによるビジネスモデリング、ソフトバンクパブリッシング、2002.
[2] UML とプロセスモデリングシンポジウム予稿集、経営情報学会プロセスモデリング研究会、2002
[3]山本修一郎、UML の基礎と応用--第9 回、ビジネスコミュニケーション、Vol.39, No.5, pp.78-81, 2002

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