連載第16-2回
UMLの基礎と応用

(株)NTTデータ 技術開発本部 副本部長
山本修一郎


ビジネス・プロセス・パターン

 ビジネス・プロセス・パターンには、高品質なビジネス・プロセスをモデル化するためのモデリング・パターン、ビジネス・プロセスの実行時のインスタンスに関するインスタンス・パターン、ビジネス・プロセスを支援するためのアプリケーションに組み込まれるプロセス支援パターンがある。モデリング・パターンには、次の7個がある。

表4 プロセスパターン
表4 プロセスパターン

・基本構造パターン(BP1)では、ビジネス・プロセスのゴールと必要な資源ならびに生成されるオブジェクトとプロセスとの関係をモデル化する。図3に基本プロセス構造パターンの例を示す。

図3 基本プロセス構造パターン
図3 基本プロセス構造パターン

・プロセス相互作用パターン(BP2)では、共有資源を用いることにより異なるプロセス間の連携をモデル化する。アセンブリライン図を用いる。

・プロセス・フィードバック・パターン(BP3)では、ビジネス・プロセスの実行結果に基づいてプロセスを調整する。

・顧客への時間短縮パターン(BP4)では、資源供給プロセスを前段におき、生産プロセスによるリードタイムを短縮する。

・プロセス・レイヤー供給パターン(BP5)では、供給資源を仲介させることにより、一次プロセスと二次プロセスから順次的な一連のプロセスからなる価値連鎖を構成する。図4 にプロセス・レイヤー供給パターンの例を示す。

図4 プロセスレイヤー供給パターン
図4 プロセスレイヤー供給パターン

・プロセス・レイヤー制御パターン(BP6)では、プロセスの実効制御情報を供給する制御プロセスにより、上位プロセスが下位プロセスを制御する階層的なプロセス構造をモデル化する。

・アクション・ワークフロー・パターン(BP7)では、相互作用するプロセス間のアクティビティを、準備、交渉、遂行、受領からなる反復的な状態遷移によりモデル化する。基本的な相互作用の構造はフローレスとビノグラードによって提案された議論行為に関するコミットメントネットワークモデルである[7][8]

・プロセス・インスタンス・パターン(BP8)では、プロセスとプロセス・インスタンスの関係を明確にモデル化する。インスタンス・パターンである。

・資源利用パターン(BP9)では、プロセス・インスタンスで使用される資源をモデル化する。支援パターンである。

・プロセス・インスタンス状態パターン(BP10)では、プロセスのインスタンスの実行状況を提案、廃棄、開始、完了などの状態によってモデル化する。インスタンス・パターンである。


まとめ

 本稿ではUMLを用いたビジネス・モデリング手法として代表的なエリクソンとペンカー法について、ビジネス・パターンを紹介した。エリクソンとペンカーはUMLによるビジネス・モデルには、次のような利用法があるとして、例をあげている。

・ビジネス・モデルから、ビジネスを最も有効に支援する情報システムを発見する

・機能要求を発見する

・非機能要求を発見する

・システムの分析・設計で利用する

・再利用可能な部品を発見する

 ただし、具体的な手順まで示しているわけではないので、今後、UMLを用いたビジネス・モデルの利用法の研究・開発が進むことが望まれる。

参考文献
[1] エリクソン、ペンカー著、鞍田、本位田監訳、UMLによるビジネス・モデリング、ソフトバンクパブリッシング、2002.
[2]山本修一郎、UML の基礎と応用--第14回,
ビジネスコミュニケーション、Vol.40,No.1, pp.152-156,2003
[3]山本修一郎、UML の基礎と応用--第15回,ビジネスコミュニケーション、Vol.40 , No.2 , pp.114-119, 2003
[4] Erich Gamma, Richard Helm, Ralph Johnson, and John Vlissides, Design Patterns--Elements of Reusable Object-Oriented Software, Addison-Wesley, 1994
[5] Frank Buschmann, Regine Meunier, Hans Rohnert, Peter Sommerlad, Michael Stal.,Pattern-Oriented Software Architecture-A System of Patterns, Wiley and Sons Ltd., 1996
[6] Books about patterns, http://hillside.net/patterns/books/
[7]テリ-・ヴィノグラード、フェルナンド・フローレス、平賀譲訳、コンピュータと認知を理解する, 産業図書, 1989
[8]Flores,F., Gaves, M, Hartfield, B.,Winograd, T., Computer Systems and Design of Organizational Interaction, ACM trans. On Office Information Syatems, 1988

●執筆者にメールを出す
yamamotosui@nttdata.co.jp
連載第17回へ >>
・連載第1回

・連載第2回

・連載第3回

・連載第4回

・連載第5回

・連載第6回

・連載第7回

・連載第8回

・連載第9回

・連載第10回

・連載第11回

・連載第12回

・連載第13回

・連載第14回

・連載第15回

・連載第16回

・連載第17回