●アプリケーションサーバ市場でトップを目指すオラクルの新戦略

【INTERVIEW】
アプリケーションサーバは
アーキテクチャを売る日本オラクルの背骨


■すべてのチャネル戦略で販売を強化

―以上の3つのアクションプランを柱に、貴社のすべてのチャネルを通じて販売を強化するわけですね。

山元 アカウントセールス、パートナーセールス、クロスインダストリーセールス、Oracle DirectとすべてのチャネルでOracle9iAS Java Editionをフックとした販売を強化することで、Oracle9iASの市場でのポジションを一気に引き上げたいですね。今の時代、アプリケーションサーバも含めてUnbreakableなインフラでなければなりません。

 Oracle9iASは、企業情報システムに必要なすべてを提供します(図4参照)。データベースとインテグレートされた強み、さらには「Oracle9iReal Application Clusters」(RAC)に象徴されるクラスタリング技術、セキュリティ、シングルサインオン、ディレクトリーサービスなど、Oracle9iASの強みをより前面に出して、販売を強化していきたいと考えています。


図4 企業情報システムに必要なすべてを提供するOracle9iAS

■Unbreakable Linuxを柱に、Linux事業を大幅に強化

―アプリケーションサーバ製品に関する新戦略発表の数日前に、Linux事業の強化戦略も発表されましたね。

山元 5月14日に、Linux関連事業の大幅な強化を柱とする新戦略を発表しました。これは、私どもの中期経営計画「Oracle Japan Innovation2003」の重点施策の一環です。具体的な取組みとしては、エンタープライズ規模で導入可能な「Unbreakable Linux」ソリューションの推進、技術者育成プログラムの拡充、Linux対応製品の拡充、パートナーとの協業になる技術交流や検証、改良作業を行うLinuxパートナー協議会の設立の4つの施策を展開します。

―政府のオープンソース支援という追い風もあり、Linuxの市場が拡大する傾向にありますが、Linux市場における貴社のポジション及び今回の新Linux事業戦略の狙いについてお聞かせください。

山元 まずLinuxの市場について、サーバ出荷台数ベースでLinuxの割合は、2002年の7.1%から2006年には15 .1 %に拡大するという調査報告があります。また、2006年まで年平均16.1%のペースでLinuxサーバ市場が拡大するという市場予測があります。一方、国内Linux市場におけるLinux OSベンダシェアではミラクル・リナックスが37.2%、Linux RDBMS別シェアではオラクルが83%です。特に、ミラクル・リナックスは、3年前の会社創立以来、驚異的に伸びています。

 また新Linux戦略の柱は、「Oracle9i Database」「Oracle9i Application Server」「Oracle E-Business Suite 」「Oracle Collaboration Server」で構成する新ソリューション「Unbreakable Linux」です。さらに、Linuxをエンタープライズ・プラットフォームとして導入を促進するためには、強固な堅牢性を保証するLinuxソリューションと、それに付随するサポート体制、営業体制、技術者を育成する体制の構築が不可欠です。「Unbreakable Linux」を核に、コスト・パフォーマンス/信頼性の高いソリューションを提供することによって、ライセンスレベニューに占めるLinux版製品の割合を引き上げることが最大の狙いで、販売目標としては、Linux版製品のライセンスレベニューを2006年まで年間平均成長率50%以上のペースで伸ばしていきたいと思っています。

―Linux にかなりコミットしていく方向ですか。

山元 その方向です。私どもでは6月18日、「Oracle NeO(OracleNew extensible Offering)」という「Oracle E-Business Suite」のソリューションテンプレートを38種類発表しました。これは、中堅企業を対象に、日本オラクルのパートナー企業がこれまでの導入実績やノウハウに基づき業務・業種ごとに体系化したシステム構築のためのひな型を、ソフトウェアライセンス、ハードウェア、導入サービスと組み合わせて提供する、定額・短期間の導入ソリューションです。この推奨プラットフォームとして、低コストのIAサーバとLinux OSを提案していきます。また、7月にはコンピテンスセンタを設立し、すべての技術検証をLinuxで行っていきます。このように日本オラクルは、Linuxの導入を加速するようなムーブメントを自ら興し、Linuxにもっともコミットしたリーダ企業としての仕事を行っていきます。先ほどの調査会社のLinuxサーバ市場の予測データを覆したいと思います。

―到達度を前倒しにする…。

山元 到達度を早めるか、異なる値にするくらいの目論見で現在頑張っています。そのためには、Linuxもより堅牢な仕組みで、エンタープライズ・プラットフォームとして導入が加速するようにしていくことが重要です。私がよく例え話に使いますが、「自分は優秀なプログラマだと思っていた。それは何故かというと、私の書くプログラムは、1割がロジックで9割が例外処理です。システムのアーキテクチャも本当はそうでなくてはいけない。障害があってから驚いてはいけない。ディザスタリカバリもセキュリティもそうでなくてはいけない」ということです。

―ところで、山元取締役が非常勤取締役として経営に参画されたほか、新社長に常務執行役員の佐藤武氏が就任するなど、ミラクル・リナックス社との融合関係を強めていますね。

山元 ミラクル・リナックス社とは、戦略的協業を図っていきます。(図5参照)同社は、これまでのLinuxディストリビューション販売中心のビジネスにとどまらず、Linux版オラクル製品の販売をはじめ、コンサルティングやサポートなど、プロアクティブなプロフェッショナルサービス分野まで事業領域を拡張して、日本オラクルと共同でUnbreakable Linuxの普及促進を図っていきます。


図5 ミラクル・リナックス社との戦略的協業

■Unbreakable Linux ソリューション

―Unbreakable Linuxソリューションについてお聞かせください。

山元 Oracle9i DatabaseとOracle9i RAC で構成する、24時間365日壊れない・侵入できない「Unbreakable Linux」を、以下の4つの体制の下で展開します。

 まず第1は、技術サポート体制の確立です。オラクルのデータベース製品、アプリケーションサーバ製品、コラボレーション・ツール、ビジネスアプリケーション製品のLinux対応版を対象に、Miracle Linux、Red Hat LinuxやUnitedLinuxをベースとするLinux OSを含む統合的な技術サポートを提供します。ミラクル・リナックス社との協業体制を確立し、トラブルがあった場合、修正のプログラムも日本オラクルから直接ユーザーに提供します。この技術サポート体制の確立は高い信頼を得ています。実際、いろんな顧客から『日本オラクルと契約したい、そうすることでLinux に対する不安感がすべて払拭される』と、高く評価されています。

 第2は、Linux拡販体制の配備です。Linuxビジネスを推進する専門の営業組織「Linuxビジネス推進室」を日本オラクルのクロスインダストリー本部内に新設。また、Oracle DirectやOPNを通じて、ユーザーや販売パートナーへのLinux導入支援を行います。

 第3は、Linux技術者の育成です。Linux分野におけるオラクル技術者の育成を目的に、7月下旬からRAC TOP Gunと題し、「Oracle9i Real Application Clusters on Linux」(2日間、演習形式)などの育成コースを300名以上の技術者を対象に開催します。

 第4は、Unbreakable Linuxの検証済みハードウェアベンダによる推奨構成の提案です。ハードウェアベンダからOracle9i RACを利用したクラスタ化システムの推奨構成を提示することにより、ユーザーは推奨構成に基づいて最適なシステムをより効率的に構築できるよう支援します。

―Linux関連の協議会も設立された。

山元 Unbreakable Linuxの普及促進と技術者育成を目的に、主要ビジネス・パートナーをはじめ、Linuxディストリビューション企業など12社が発起企業として参画する「Unbreakable Linuxパートナー協議会」を設立しました。これはOPNが提供するサービスの一環として設けたもので、様々な技術交流やセミナーを開催したり、ハード/ソフト相互の対応や連携を促進して、ユーザーへの積極的なLinux版Oracle製品の提案と、Unbreakable Linuxの普及を図っていきます。

■アプリケーションサーバとEBSのライセンスレベニューを飛躍的に伸ばす

―最後に、今後のビジネス展開についてお聞かせください。

山元 日本オラクルは、改めて製品ビジネスを行う会社であるというフォーカスを、中期経営計画「Oracle Japan Innovation 2003」で発表しました。製品ビジネスは、大別して「ライセンス」と「サポート」の2つのビジネスがあります。ライセンスビジネスは、まず柱となるデータベースに関しては、論理レベルまで含めて定義したフレームをだしていきます。5,000個以上テーブルのある論理モデルを日本に浸透させることができれば、論理設計が不要になります。そのため、DatabaseとEBSの両方の販売に注力していきます。また、BI、EIP、OLAPツールなどを含め、企業情報システムに必要なすべての機能を提供するOracle9iASの拡販に努めます。日本オラクルとして、絶対に負けられないレイヤはアプリケーションサーバです。この3年間でアプリケーションサーバとEBSの売上げを飛躍的に伸ばします。

 もう一つのサポートビジネスについては、大きく変革していきます。スタンダードなプロダクトのサポートサービスに加え、アドバンスト・プロダクトサポートということで、お客様とネットワークで結び、リモートでのモニタリングサービスを行います。また、Oracle Collaboration Suite やEBSなどを含め、システム導入後に、低コスト・高効率のシステム運用を可能とするアウトソーシングビジネスも開始します。もちろん、パートナーとの協業という日本オラクルのビジネスモデルは崩さずに事業展開していく方針です。

―本日はありがとうございました。

(聞き手:本誌編集長 河西義人)

 

 


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