●今私が気になる技術と人材
株式会社NTTデータ
ビジネス開発事業本部
GIS・ITSビジネスユニット長

和田 泰之氏


力のある“個”が結集した
活気のある組織の中から
優れた人材と技術が生まれてくる



GIS ・ITS の技術をベースに新たなビジネスの創出を図る

―はじめに、現在のお仕事につい
てお話していただけますか。

和田 GIS・ITSビジネスユニットには、2つの大きなミッションがあります。1つは、社内で特定の分野や業界ごとに設置されているCR(Client Representative)に対して、GIS(Geographical Information System)、およびITS(Intelligent Transport Systems)ソリューションを紹介、顧客に提案をして開発を行うこと。もう1つは、GIS およびITSの技術をベースに、新たなビジネスを創出していくことです。

―GIS、ITS、それぞれのビジネス展開についてお話ください。

和田 GISビジネスは、「ハードインフラ」、「コンテンツ」、「コンテンツ流通プラットフォーム」、「業務アプリケーション」という4つのレイヤーに分けて捉えることができます。その中では、特に「コンテンツ流通プラットフォーム」を核としたGISシステムの開発と新規ビジネスの開拓を、公共、法人、不動産、GPS(Global Positioning System)の4つのグループに分かれて展開しています。具体的なソリューションとしては、地方自治体における統合型GISの実現に向けた「GEOINTEGRATION」、携帯電話向けの「デフォルメ道案内サービス」、住まい情報やサービスを、売りたい方、買いたい方の2つのサイトから提供する「HOME4U」、複数のGPS受信機を利用して地殻変動や地すべりの監視、ダムや橋梁等の構造物の監視をリアルタイムに実現する「GPSリアルタイムネットワークシステム(RTD)」などがあります。
 ITS ビジネスについては、「交通関連のソリューション提供」という観点で、多岐にわたるソリューションやサービスを提供しています。現在は、特に3つのビジネス領域に注力しています。1つが、交通情報に付加価値を付けて提供したり、コンテンツを蓄積して渋滞を予測するサービスを提供するVICS(Vehicle Information and Communication System)関連ビジネス」。2つ目が、高速道路のETC(自動料金収受システム)で利用されているDSRC(狭域無線通信)技術を利用したIBA(ITS・DSRC Business Planning Association)事業。3つ目が、電車やバスのICカード汎用乗車券・定期券システムです。
 GISビジネスは、私共のGIS技術をベースにパートナー企業のさまざまなコンテンツを利用して開発したソリューションが多く、ITSビジネスは、私共が全て開発を行う企画型のソリューションが多くあります。

実行力のある人材を
育てていける組織づくりを

―このようなビジネスを展開して
いく中で、GIS ・ITS ビジネスユニットをどのような組織にしていきたいとお考えですか

和田 私は、GIS・ITSビジネスユニットを1つの会社として捉えていますし、メンバーにもそう伝えています。また、メンバーそれぞれがイノベーションを起こしていけるような、力のある“個”が結集した、活気ある組織にしていきたいと思っています。そのため、メンバーそれぞれの目標を実現していけるような、極めてフラットな組織形態と、組織が一丸となって目的を実現していける統率力のとれた体制づくりを心がけています。前回のW杯サッカーで日本の指揮をとったフィリップ・トルシエ監督は6:4で個よりチームを優先させたが、当ビジネスユニットでは、その逆で、個の強い組織の方が将来に寄与すると見ています。

―そのような取組みの中で、どのような人材を求めていますか。

和田 まず営業については、情熱のある人材を求めています。目標を「絶対に達成させる」という強い意志が必要です。次に、コンサルティング能力。ここでいうコンサルティング能力には、会計の知識、ノウハウをベースとした経営判断力やパートナー企業との連携を密に行えるコミュニケーション力を含んでいます。そして、国際的な視点から物事を考えられる国際感覚。このような資質を身につけるためには、各人の業務それぞれにテーマを与え、達成感を持たせることと、このような人材を育てられる環境を提供し続けることが大切です。

―開発者についてはどうですか

和田 開発者は、「品質」「納期」「コスト」をバランスよく、コントロールできる人材が必要です。また、開発者にもある分野のスペシャリストになる、という情熱のある人材に魅力を感じます。
 さらに、プロジェクトを成功へと導くためには、本などで読んだ既存の知識に頼るのではなく、その環境に応じてビジネスを展開できる実行力を身につけていくことも必要です。特にGISビジネスでは、自分たちが開発した技術と、パートナー企業がもっている技術やコンテンツを組み合わせていくことで、1 つのプロジェクトが実現することが多いので、個々の現場に応じて活かすことのできる能力でなければ意味がありません。ただし、実行力を身につけるには、組織のバックアップが必要です。私も、この点を十分に考慮した組織づくりを心がけています。

自らのビジネスとの連携を想定してみる

―現在、どのような技術に関心がありますか。

和田 RFID(無線ICタグ)などユビキタスを実現する技術に関心があります。また業務に関連したものでは、GPSやLBS(Location Based Service)など、位置情報に関連した技術やサービス、ICカードに関連したビジネスに関心があります。これらの技術に注目して、GIS およびITSにおける今後のビジネスの展開を考えていきたいと思っています。

―今後必要となってくる技術と資質について、選択のポイントとは、どのようなことでしょうか

和田 単に注目するのではなく、周囲の状況を理解した上で、常に自らのビジネスと組み合わせた場合にどうなるのかを考えていくことが大切です。たとえば、GIS・ITSビジネスユニットでは、フラットな組織形態を実現できるよう、グループ単位でビジネスを展開しています。各グループにはビジョンとともに売上や利益、販売管理といった数字(目標)を設定し、各グループが1つのビジネスユニット、1つの会社として動いています。このため、グループ長には経営センスが求められてきますし、グループ自体には、数字を意識した取組みが必要であるだけではなく、ビジネスを大きくしていくため、他社、他のグループと連携をして、自分たちのテリトリー以外の技術や人材を導入することで問題を解決していくことになります。このような場合の、柔軟な発想やSpeedyな判断力と実行力が必要です。これらは今、多くの企業にも同様に求められていることではないでしょうか。

―本日はありがとうございました。

(聞き手:本誌副編集長 菊地勝由)


 

 


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