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救命率の向上を実現する
「モバイル・テレメディシン・システム」
プロトタイプで有効性確認


 循環器救急に関するモバイル・テレメディシン研究会(代表:国立循環器病センター、緊急部長:野々木 宏)は、救急車と病院をリアルタイムに結ぶ「モバイル・テレメディシン・システム」のプロトタイプを作成し、システムの有用性を確認した。

 同研究会は、国立循環器病センター、独立行政法人産業技術総合研究所、NTTコムウェア株式会社、日本光電工業株式会社、フクダ電子株式会社、松下電器産業株式会社が参画する産官学連携プロジェクトで、日本がリードする次世代移動体通信技術をフルに活用し、医療の質の向上を目指す。

■システムの概要

 「モバイル・テレメディシン・システム」は、救急車で搬送中の患者の血圧、呼吸、脈拍などのバイタル・サインや12誘導心電図、小型カメラからの動画等の緊急時に必要なデータを標準化し、救急車と病院の連携を変革するシステムである。救急車に取り付けた装置は遠隔操作が可能で、救急救命士は患者に集中することができる。

 現在用いられている消防無線や携帯電話に加えてブロードバンドによる病院からの支援が可能になるため、

@搬送病院の選択
A病院到着前診断
B早期治療


などを通じて救命率の向上となる。


モバイル・テレメディシン(緊急医療システム)

■システムの核

 データの伝送を可能にしたのが、NTTコムウェアが開発したブロードバンド対応の情報端末制御装置「L-BOX」。L-BOXは、心電図など全ての機器を接続することができ、モバイルカードを取り付けることで64Kbpsのモバイル通信が可能となる。通常、パソコンでも同様の通信が可能であるが、救急車の中は狭く、走行中の振動により操作性が著しく低下する。L-BOXのサイズは高さ119mm、幅62mm、奥行98mm、と厚めの文庫本サイズと小型になっており、操作を必要とせず、救急車搭載に適している。

■システム化の背景

 心電図データは、それぞれの医療機器メーカーで独自の仕様を決めており、伝送するには同じメーカーの受信装置が必要となる。今回開発したシステムでは、心電図データ伝送に医療用波形データ伝送の標準規格として期待されているMFER(Medical Waveform Encoding Rule)の採用で、メーカーを問わず、どの心電図計のデータでもパソコンモニターをビューアーとして視認可能にした。

■研究会構成メンバーの役割

 同研究会の中心組織である国立循環器病センターは、救急現場のニーズ(重症度を判断するトリアージと患者を適切な病院に振り分けるディスパッチおよび救急救命士が行う処置を支援するプレホスピタルケア)と、技術のシーズを結びつける橋渡しを行う。NTTコムウェアは一連のシステム開発、日本光電工業は12誘導心電計とそのインタフェース仕様情報の提供、フクダ電子は心電図、脈拍、血圧などのデータを表示するモニタとそのインタフェース仕様情報の提供、松下電器産業は小型カメラの提供をそれぞれ担当する。産業技術総合研究所は、会議の開催など、全体をコーディネートしている。

 参加メンバと代表者は次のとおり。

国立循環器病センター(大阪府吹田市)
 総長:北村 惣一郎
産業技術総合研究所(東京都千代田区)
 理事長:吉川 弘之
  ・同関西センター
   所長:請川 孝治
NTTコムウェア株式会社(東京都港区)
 代表取締役社長:松尾 勇二
松下電器産業株式会社(大阪府門真市)
 代表取締役社長:中村 邦夫
日本光電工業株式会社(東京都新宿区)
 代表取締役社長:荻野 和郎
フクダ電子株式会社(東京都文京区)
 代表取締役社長:福田 孝太郎

■学会発表

 4月29日、米国フロリダ州オーランドで開催された「米国遠隔医療学会」で、今回プロトタイプで確認した有用性について発表し、注目を集めた。特にモバイル・テレメディシンの分野でパイオニア的存在のアメリカの大学グループからは、共同研究を打診されるなど、プロトタイプの実現性の高さ、将来性が裏付けされた。

■救命救急の現状

 日本人の急性心筋梗塞症(心臓発作)の発病率は人口10万人あたり40〜50人と言われ、年を追うごとに増加傾向にある。病院到着以前に約半数が死亡しているのが現状であるが、専門的治療ができる病院での死亡率は5%にまで減少しており、迅速な搬送が求められている。また、最近注目をあつめている心室細動などの致死的不整脈については、治療が1分遅れる毎に生存率が10%低下すると言われている。2003年から救急救命士の判断で除細動(電気ショック)が可能となったことから、医師による指導・評価など、メディカル・コントロールの充実が急務となっている。

■今後の展開

 今年度末までに、同システムを救急車に搭載した実証実験を開始し、実用性・安全性を確認すると共に、病院内でそれぞれの医師が持つPDAとの連携も検討する。その後、救急医療現場への導入や救急救命士に対するメディカル・コントロールへの活用を働きかける。

お問い合わせ先
NTTコムウェア株式会社
広報室
kouhou@nttcom.co.jp

 

 


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