光技術の進展もMANの拡大に欠かせないポイント

 MANを含めたWAN(Wide Area Network)を構成している光技術の進展も、MANの拡大に欠かせないポイントである。WAN を構成する光技術は、これまでさまざまなものが用いられてきたが、基礎となるのは、SONET(Synchronous Optical Network)/SDH(Synchronous Digital Hierarchy)である。SONET/SDHは、電話回線などの低速な回線をTDM(Time Division Multiplexing)と呼ぶ方式で高速な回線に積み上げていく階層的な多重方式である。SDHは、かつて日本、北米、欧州等で独自に用いられていた3つの多重方式を統一した世界標準だが、北米では世界標準のSDHではなく、米国標準として決めたSONETを用いている。SONETとSDHは、異なる部分もあるが、ほとんど同一の規格で相互接続も可能である。

 SONETは52MbpsのOC-1を、SDHでは156MbpsのSTM-1を基本として、それぞれを階層的に多重する構造が決められている。その後、SDHでもOC-1相当のSTM-0が追加された。OC-1/STM-0は、電話回線1本分となる64kbps を24本束ねた1.5Mbpsの回線を、さらに28本分多重したものである。それを3本多重したものがOC-3/STM-1というように高速側に多重していく。バックボーン・ルータなどは、1.5Mbps 等の低速回線ではなく、直接SONET/SDHの高速インタフェースで接続するPoS(Packet over SONET)を用いている。

 SONET/SDHには運用管理に関連したさまざまな機能が含まれているが、中でも最も重要な機能が、信頼性を高めるプロテクション(切り替え)機能である。SONET/SDHをリング型に構成し実現する「リング・プロテクション」は、その代表的なものである。リング・プロテクションには、UPSR(Unidirectional Path Switched Ring)と、BLSR(Bidirectional Line Switched Ring)と呼ばれる2つの方式がある。

 UPSRは、通常時にはリングの両方向へ現用、予備として同一のトラフィックを流し、現用に障害が発生した場合に、受信側で予備に切り替える方式である。MANでは、構造が簡単なUPSRが主に用いられている。

 BLSRは、通常時は現用として片方向へ流しているが、障害時はその区間を避けるように折り返して、反対方向で確保された予備を使用して迂回する方式である。双方とも切り替えは50ミリ秒以内という非常に高い信頼性を提供しているが、すべてのトラフィックを救済するには、SONET/SDHリングの半分の帯域しか用いることができない。BLSRは、障害時に救済を行わない代わりに、通常時に利用可能なエキストラ・トラフィックを運ぶこともでき、北米ではこうしたトラフィックを安価なサービスとして提供しているところもある。

 日本では、アクセス網に独自のSDH光伝送装置を用いてきたが、MANでは、北米製のSONET光伝送装置が多数導入されている。それは、北米の低速の基本速度が日本と同じ1.5Mbpsなため、SONET光伝送装置に日本向けの機能を追加するだけで、従来のSDH光伝送装置同様の製品として使用できるからだ。つまり、多くのSONET光伝送装置が既存のサービスを収容するとともに、ベンダー独自の方法でイーサネットを代表とするデータ系のトラフィックを収容できるのである。また、ダークファイバーを借りている通信事業者は、同時に機器を置く場所も借りなければならないため、コンパクトな北米製のSONET光伝送装置を用いたようだ。

複数の波長をもつ信号を1つに束ねる「WDM」

 MANでは、最大OC-48(2.4Gbps)、あるいはOC-192(10Gbps)まで多重できる製品が主流となっており、長距離向けのSONET/SDH光伝送装置では、OC-192よりさらに高速なOC-768(40Gbps)などが採用されている。また、より太い帯域幅が必要な場合は、OC-48/OC-192のSONET/SDHを、1本の光ファイバーに異なる波長をもつ信号を多重して、1本あたりの伝送速度を増加する「WDM(Wavelength DivisionMultiplexing)」技術を用いて多重している。WDM とは、「波長分割多重方式」の意味で、多重には光カプラや光スプリッタといった電気駆動を必要としない受動的な光合分波器が用いられている。またWDMは、多重できる波長数によって、16波以上を多重する「DWDM(Dense WDM)」、8波程度を多重する「CWDM(Coarse WDM)」、4波程度を多重する「WWDM (Wide WDM)」に区別されている。光信号は、光ファイバーを通る距離に応じて減衰するので、伝送距離が制限されるが、WDMでは、光アンプと呼ばれる光信号を増幅する技術を用いて、多重したままの状態で一括して信号を増幅できる。そのため、非常に簡単な構成で伝送距離を延ばすことができ、MANで必要な伝送距離を延ばすのに向いている。

 さらにWDMは、単に波長を変えているだけなので、イーサネットなどのSONET/SDH以外のどんな光信号でも多重できることから、イーサネットとWDMとの組み合わせが、MANでは多く使用されている。たとえば、WDMでは伝送距離が長くなると位相のずれが大きくなるため、長中距離はSONET/SDHを、中短距離はWDMが使用されている。

 一方ギガビットイーサネットは、標準には含まれていないが、ベンダー独自のMANで使用可能な数十kmの伝送を実現できるため、ギガビットイーサネットとレイヤー2スイッチだけを用いたイーサネットMANを、ダークファイバーを使用して構築できるのである。

 昨今のMANは、実質的には「広域イーサネット」と呼ばれる通信サービスになっており、レイヤー2のスイッチで構成されている「イーサネット方式」と、イーサネットフレームをSONETリングに直接収容する「SONET直収方式」の2つに大別される。イーサネット方式は、スイッチのVLANを使用してユーザーを区分けする極めてシンプルな仕組みだが、イーサネットの伝送距離制限から半径数十km程度が適用範囲といえる。一方SONET直収方式は、距離の制限はなく、WWDMや
CWDMといった中短距離のWDM装置を組み合わせてMANをカバーしている。

MANを構成するポイントと今後の展開

 MANのバックボーンは、光ファイバーで構成されているが、とくにダークファイバーの利用は、コストに直結するため、提供する側にとっては重要なポイントである。その光ファイバーを多重化装置で2重のリング型につなぎあわせ、そのリングによって都市部をカバーするのが、地域限定型MANの典型的な構成である。多重化にあたっては、WWDMやCWDMなどの波長の数が多くなく、小型で低コストの多重化装置を採用したり、ギガビットイーサネットの多重化装置や10Gbpsイーサネットの採用が多くなっていくだろう。

 ユーザーとは多重化装置の各インタフェースに接続された機器によって接続されるが、イーサネットインタフェースに接続されたスイッチを使用して、ユーザーのイーサネットフレームを直接収容する広域イーサネットサービスとして提供されることが多くなるだろう。

 IP-VPNで広く知られるようになったMPLS (MultiProtocol Label Switching)は、SONET/SDHとATMという組み合わせの従来型基幹網がもっていたさまざまな問題点を解消し、IP-VPNという通信サービスを実現したが、このMPLSにイーサネットのフレームをカプセル化して、そのまま転送してしまうのが、「EoMPLS(Ether over MPLS)」である。EoMPLSでは、イーサネットのフレームは、カプセル化されてラベルが付けられた上でサービス網に送り出され、網内ではラベルによって転送される。

 広域イーサネットサービスで重要なポイントになっているVLANでは、識別するためのIDをイーサネットフレームに拡張タグとして埋め込んでいるが、その長さは12ビットである。この識別IDの代わりを、昨今、MPLSのラベルが果たしており、セキュリティや帯域制御などの課題の解決が進んでいる。また、IP-VPNと広域イーサネットサービスをMPLSで統合することも行われている。

 イーサネットやSONET/SDH、WDM、IP/MPLS、EoMPLSなどの技術が融合されていくMANは、今後も注目が必要である。

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