●今私が気になる技術と人材
 NTT コムウェア株式会社
 ビジネスイノベーション本部
 ビジネス企画部 担当部長
 堂山 真一氏


さまざまな違いを越えて
最適なものを集めていくことで
より良い技術が創造されていく

EJBコンポーネントの普及・啓蒙をサポート

―はじめに、現在のお仕事についてお話していただけますか。

堂山 現在、NTTコムウェアでの業務と併行して、非営利団体「EJBコンポーネントに関するコンソーシアム(以下、EJBコンソーシアム)」の運営委員として技術者認定に関する研究・調査を行っています。

 EJBコンソーシアムは、Javaを基盤としたサーバアプリケーションのための共通プラットフォームJ2EE(Java2 Enterprise Edition)体系の中のコンポーネント仕様であるEJB(Enterprise JavaBeans)に基づいたコンポーネント(EJBコンポーネント)の流通性を高め、これを利用したアプリケーション開発とシステム構築の普及に貢献することを目的としています。

―EJBコンソーシアム設立の背景についてお話していただけますか。

堂山 近年、ビジネスのスピードはますます加速しており、競争も激化しています。しかし、ビジネスを支えるソフトウェア、中でもアプリケーションソフトウェアの部品化、再利用促進は長年の課題として残され、これまで多くの取組みが繰り返されてきましたが、広く普及するに至ってきませんでした。このような中、Java、EJBといった技術基盤が登場し、コンポーネント化されたソフトウェア部品による本格的基幹アプリケーションを短期間で開発できるのではないかという期待が高まっています。しかし、コンポーネント再利用ベースでのアプリケーション開発やシステム構築を普及していくには、業界全体でルールを策定し、普及・啓蒙していくことが必要です。そこで、EJBコンソーシアムが設立されました。2000年10月に設立されて、今年で3年目を迎えますが、現在、会員数は80社に達しています。

―どのような活動を行っているのですか。

堂山 EJBコンポーネントに関連した規約・テクニカルレポートの策定を行うとともに、特に今年は技術者の育成と増強のための活動とユーザー企業を巻き込んだ活動を展開していきます。また、市場での流通促進を目的とした調査・研究を行っていきます。具体的には、「技術者認定に関する研究会の設立」「ユーザー企業による研究会の設立」「市場流通のための研究会の設立」「EJB フォーラムの開催」を重点課題として取り組んでいます。この課題に対してそれぞれ4 つの部会、研究会が、各専門テーマに対して調査・研究を行っています。私は、この研究会の一つの「技術者認定に関する研究会」で主査を務めています。

技術者スキルの体系化と速成トレーニングが課題

―「技術者認定に関する研究会」の設立の背景と目的についてお話してください。

堂山 EJBコンポーネントの普及・流通を促進するためには、なんといっても技術者の数を増やしていかなければなりません。既存のEJB コンポーネントを理解し、組み立てや試験を行える技術者(使い手)の数は、オリジナル開発者(作り手)よりも多く必要になります。使い手となる技術者を速成するためには、「必要最小限のスキルセットを抽出できないか?」これが研究会発足の主旨です。というのも、従来の認定では、下から緻密に知識を積み上げていく体系が多く、それではEJB 技術者に到達するまでに大変な研修期間を要してしまうからです。

―再利用を取り巻く環境についてですが、現在、どのような状況にあるのでしょうか。

堂山 EJBコンポーネントを再利用するケースとして、ユーザーが社内のコンポーネントを再利用するケース、SIerが再利用コンポーネントを提供するケース、ベンダーから調達するケース、といった3つが考えられます。そのいずれの場合でも、再利用は、既存のEJBコンポーネントを理解し、組み立てて、運用試験までを行う技術者(使い手)が行います。そこで問題となるのが、再利用が技術的に可能だとしても、それに対応できる技術者がいるのかということです。EJBコンポーネントを開発した技術者(作り手)ならば、当然、再利用も行えるのですが、その技術者を個別案件に投入してしまうと、再利用の意義が半減してしまいます。そのため、EJBコンポーネントの再利用、組み立てに特化した「使い手のスキル」を整理し、速成できるトレーニングが求められているのです。

作り手が使い手のスキルを育成

―EJBコンソーシアムが、技術者の認定を議論・検討していくメリットとは、どのようなことなのでしょうか。

堂山 JavaやEJBといった先端技術の進歩は非常に速く、社内だけでの検討では各社「追いつかない」のが実状です。また、開発を外注するには、社内の技術者認定制度だけでは対応できません。Java、EJBはオープンな技術なので、この利点を活かして、認定制度もオープンに、業界全体で共通化したいものです。EJBコンソーシアムの会員企業は、その多くがEJBコンポーネントの作り手(開発者)です。つまり、各部会と研究会で「このようなスキルの人に使ってほしい」といった議論・検討の成果を、そのまま技術者のスキルやトレーニングの体系化に役立てることができるのです。現在、スキル領域として、「EJBのベースとなるJ2EE スキル」「EJBコンポーネントの利用スキル」「フレームワークのスキル」をターゲットに、詳細化を図っています。NTTコムウェアは、どちらかというとEJBコンポーネントの使い手サイドにあり、また多くの外注パートナーと協力して開発を進めていますから、ベンダー中立に認定制度を調整していく、最適な立場だと自負しています。

より良い技術を集めていく

―最後に、コンポーネントの再利用がどのように進んでいくとお考えですか。

堂山 EJBコンポーネントは、一定のルールさえ守れば、ほとんどのアプリケーションサーバ上で稼働しますから、技術的には流通は可能な段階にあります。しかし、最も大切なのは「多彩な技術の中から、最適なものを組み合わせる」という文化で、これはグローバルなトレンドです。より良いものを創造していくため、誰にでもオープンなルールとプラットフォームの上で、本来のアプリケーション開発のところで競争が展開されることが大切なのだと思います。

―本日はありがとうございました。

(聞き手:本誌副編集長 菊地勝由)

 

 


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