複雑化するネットワークの品質と信頼性を左右する計測ツール

 インターネットやブロードバンドの普及に伴ない、ネットワークを流れる情報は、音声からデータへ、あるいは音声とデータを統合したものへと移行している。また、大容量ファイルの送受信、リッチコンテンツの配信といった業務のIT化が進み、ネットワークに流れるトラフィックやパケット量が急激に増加し、これらのネットワークへの負荷から生じる「遅延」や「停止」による重要なサービスへの影響が懸念されている。そのため、通信事業者や企業等のネットワークと、それを構成する機器には、より一層の信頼性と安全性が求められている。
 たとえば、企業のネットワークは、これまで主流であった専用線接続サービスから柔軟性や費用対効果の高いIP-VPNサービスや広域イーサネットサービス等への移行が進んでいる。IP-VPN は、MPLS(Multi Protocol Label Switching)ベースのものが主流となり、RFCなどの規格も進化を続けている。また、レイヤー2レベルで提供される広域イーサネットサービスは、多様なネットワークの構築が可能な反面、ネットワークを構築する際には、正確な評価、測定に基づいた十分なスキルが必要になってくる。そして、大規模なキャリアネットワークは、IPVPNサービスや広域イーサネットサービスの他、さまざまな通信サービスやプロトコルが複雑に連携し、数百台ものルータやスイッチが接続されるなど、複雑化を増している。
 このようなネットワークの発展に対応するために、ネットワークパフォーマンスを正確に評価、測定、解析する計測ツールの重要性が高まっている。ネットワークの品質と信頼性を維持していくには、カタログスペックに頼るのではなく、サービスレベルの観点でルータやスイッチを実践的に評価することが必須である。また、サービスや製品の開発を進めていく中でも、あらゆるケースを想定した計測が必要である。
 以下では、IPネットワークや導入が進むVoIPネットワークの評価や解析とともに、ネットワークの安定運用をサポートする解析ソリューション、次世代プロトコルである
 IPv6 対応製品のパフォーマンステスト、そして、次世代の光伝送技術としてITU-T G.709で標準化されたOTN(Optical Transport Network)に準拠したOTN伝送装置におけるFEC(Forward Error Correction)機能評価など、各計測ツールメーカーの取組みについて紹介する。

【アジレント・テクノロジー】
最新の技術をいち早く取り入れてネットワークを広範にサポート

 通信やエレクトロニクス、ライフ・サイエンスなど、幅広い分野のユーザーに対して革新的な技術やソリューションを提供しているアジレント・テクノロジー(株)(以下、アジレント)は、1999年に設立されて以来、めざましい進歩を遂げてきた通信業界の中で、世界トップクラスの通信企業をサポートする測定機器メーカーとしての地位を確立してきた。アジレントの通信計測事業の取組みは、大きく、IPネットワークでのプロトコル試験機の開発とネットワークを構築する際の機器の測定ツールを提供する「ルータテスト系」と、通信事業者や企業におけるネットワークの導入評価やサービス品質測定、トラブルシューティングを行う「プロトコル系」に分けられる。
 ルータテスト系は、これまでネットワークのコア部分の評価、解析を中心としてきたが、最近ではエッジ部分である企業向けの評価、解析にも取り組んでいる。製品としては、コア&エッジルータの開発・評価における各種測定を行う「ルータテスタ」がある。同製品は、ルーティングとパフォーマンスの試験を統合したテスタで、コアルータをはじめ、メトロ/エッジ・ネットワーク機器や光スイッチなどの開発・評価で威力を発揮している。たとえば、既存の負荷試験器では行えなかったルーティングのエミュレーションと、トラフィック・ジェネレーションおよびパフォーマンス測定の統合により、現実的で大規模なネットワークをシミュレートして、その上で機器のパフォーマンスを測定する。また、IP-VPNサービスや広域イーサネットサービスに対応した機能を追加し、レイヤー2スイッチやブロードバンド・ルータ、BAS、伝送装置などの各種機器の測定も行える。さらに、次世代プロトコルであるIPv6 に対応したルーティング試験や光ネットワーク上の信号をルーティングする技術として注目されているGMPLS(Generalized Multi-Protocol Label Switching)に対応した試験もサポートしている。
 アジレントでは、新たな技術のサイクルがスピードを増している状況の中で、「ベンダーよりも速く情報とスキルを取り入れることが必要です。そのためにも、各標準化団体の取組みや、相互接続実験等に積極的に参画し、新たな技術が市場に投入される前に、徹底的にチェックしておくことが必須です」(アジレント・テクノロジー(株) データ・ネットワークス・ディビジョン 田口高之氏)と語っている。
 一方プロトコル系では、現在、VoIP音声品質管理とモバイル系のプロトコル解析に力を入れている。
 「VoIPの音声品質管理では、使用している回線を邪魔せずに、電話端末個々の音声品質を測定することが求められています。アジレントでは、このニーズに対応するために、エージェントと呼ばれるソフトを電話端末に見立てた場所に設置し、それが仮想的な電話端末の動きをして、センターと拠点間、拠点とユーザー間の音声品質を自動的に測定することで、分散集中型の音声評価と1ヵ所あたりのコストを抑えた測定を実現しています」(アジレント・テクノロジー(株)通信計測本部 平沼陽二郎氏)。その代表的な製品として、音声品質を世界共通のアルゴリズムにより客観的に評価し、遅延、エコーなどの音声の認識に影響を与える要素を数値的に解析する「VQT(Voice Quality Tester)」がある。
 モバイル系のプロトコル解析では、モバイルのネットワークの有線区間でのプロトコル解析を中心とした、基地局における交換機や新規サービスを開始する際のパフォーマンス評価等を行っている。また最近では、分析結果を視覚化して、効率よく多面的に解析できる機能をプラスした製品の提供も行っている。
 今後は、「これまでの計測器には“BOX型”のイメージが強くありましたが、これからは、ソリューションによるネットワークの評価とともに、ネットワークの設置・運用・保守を管理するトラブルシューティングにも力を入れていきたい」(前出平沼氏)と語っている。この取組みをアジレントでは「セントライズド・トラブル・シューティング」と総称し、ネットワーク機器の設置やインストール、運用・保守などを、現地に技術者が行かなくても解析・評価できる分散管理型ソリューション「ネットワーク・トラブルシューティング・センター(NTC)」の実現を進めている。

【イクシア】
レイヤー1から7 の試験機能を1つのユニットでトータルサポート

 マルチポートトラフィック・ジェネレーションおよびパフォーマンス解析システムにおけるリーディングプロバイダーであるイクシア(株)(以下、イクシア)は、1997年に設立されて以来、正確で信頼性の高い試験・解析を行う製品を提供している。
 主なユーザーは、通信事業者や研究所、ネットワーク機器メーカー、インターネットおよびネットワークサービスプロバイダーなど。10/100、ギガビット、10Gbイーサネットをはじめ、POS/SDH対応のルータ&スイッチ、WDM、SANなどに対応した負荷試験やパフォーマンス測定、ルーティング・プロトコル・エミュレーション等を行うトラフィック・ジェネレータ/アナライザを提供している。また最近では、企業向けにアプリケーションレベル(レイヤー4-7)の検証、評価を行う製品も提供しており、金融機関をはじめ、ミッションクリティカルなネットワークをもつ大手企業に採用されている。
 イクシアの製品の特長は、1 つのプラットフォームでレイヤー1からレイヤー4 - 7の試験を行えることと、拡張性に優れていることである。
 たとえば、イクシアの代表製品であるトラフィック・ジェネレータ/アナライザ「IXIA1600T/400T/250/100」と「Optixia」は、最大256台のシャーシをディジチェーンできるので、10/100Mbsモジュールをフル搭載(128ポート)した場合のポート数は、128×256=32,768にもなる。
 また、ソフトウェアについても独自の技術を導入している。たとえば、各筐体の中にはインタフェースカード(TXSカード)が搭載されている。このカードの特長は、「従来のカードは、ワイヤースピードまでレイヤー2/3 のトラフィックを出すため、FPGAを搭載してFPGAからトラフィックを出してレイヤー2/3のルータ&スイッチの評価を行っていました。しかしイクシアでは、TXS技術を活用して、各ポートにパワーPCとLinuxカーネル、キャプチャメモリが搭載してあり、なおかつFPGAの送受信を行えるようになっています。これにより、LinuxとパワーPCを使用してレイヤー4-7のプロトコルスタックをサポートしています」(イクシア(株)営業部 大久保純仁部長)。同社のソフトウェア「IxWeb」は、この機能を活用したレイヤー7試験用アプリケーションで、HTTPトラフィックを生成し、Webサーバやロードバランサ等の評価を行っている。


図1 IxChariot : VoIP、アプリケーショントラフィックエミュレーション(イクシア)

 また、LinuxのSDKを使用して、3rdParty や独自開発のLinuxアプリケーションのプロトコルをイクシアのポート上のLinuxにインプリメントして、イクシアの製品の中でサポートされていないプロトコルを動かすことができる。たとえば、NECが開発した10Gbイーサネットスイッチ「GOE」は、このLinuxのSDKを使用して、GOEのプロトコルをイクシア側にインプリメントして独自のテスタを作成し、開発が進められたそうである。さらに、3rdParty のアプリケーションの例としては、Oracle やSAPなどのビジネストランズアクションやVoIPエミュレーションを行うソフトウェアであるNetIQ社の「Chariot(シャリオット)」をインプリメントしたテストも行える。そして、標準機能やオプションとしてもっていないものに関しては、Tclプログラミングのカスタマイズに対応した専門チーム「ICE( Ixia CustomEngineering)」が対応している。このICE がカスタマイズしたプログラムは、Webサイトで公開しているそうである。

【東陽テクニカ】
IPv6 対応ルータの処理能力を正しく測定・評価


 インターネットの発展に伴ない、IPv4アドレス枯渇問題が指摘され、これを解決するために、アドレス空間がほぼ無限のIPv6 が標準化された。しかし、IPv6浸透のスピードは予想よりも遅れている。その要因としてさまざまな問題が考えられるが、中でもネットワーク機器のパフォーマンスに関する懸念が大きいようである。IPv6 環境は、これまでのIPv4 環境と複雑に絡み合い、それを構成するルータ群に対して多大な負荷を与えるものになっている。
 このようなトラブルを未然に防ぐためには、機器がどれだけのスペックまで対応できるのか、十分に把握しておく必要がある。
 このような状況の中、企業およびキャリア向けに最先端の測定器とテストソリューションを提供している(株)東陽テクニカ(以下、東陽テクニカ)は、IPv6 対応ルータの処理能力を正しく測定・評価するために、ネットワーク・パフォーマンステストにおけるデファクト・スタンダード・ツールである、米国SPIRENT Comunication 社の「SmartBits」を使用した、IPv6 のQoS測定・ルーティングテストと、IPv6のマルチキャスト・ルーティングテストを提供している。具体的には、キャリア向けに、「OSPFv3 」、「MLD(Multicast Listener Discovery)v1・v2」、「PIM( Protocol Independent Malticast)-SMv6/SSMv6」といったテストニーズに対応した性能測定分析試験を行っている。
 OSPFv3テストは、コントロール/データプレーンを同時にテストできるルータ・パフォーマンステスタ「SmartBits TeraRoutingTester」を使用して、QoSとフェイルオーバー時間、復旧時間を測定するIPv4/IPv6ルーティング性能測定試験である。また、MLDv1.v2テストとPIM-SMv6/SSMv6 テストは、米国SPIRENT Comunication社の「TeraMetricsカード」を利用して、IPv6 マルチキャスト・デバイスの比較解析、平常時および過剰トラフィック・ロード条件下でのパラメータ・パフォーマンス評価や限界性能の検証を測定するIPv6マルチキャスト性能測定・エミュレーション試験である。
 「TeraMetrics カードを用いた性能測定ソフトウェアは、「ルータ&スイッチのIPv6マルチキャスト・パフォーマンスを測定するテストツールで、ISPやキャリアなどのメーカーおよびベンダーの開発者向けに設計されています」(株)東陽テクニカ ネットワーク評価システム部 伊藤佳明氏)。東陽テクニカでは、以上のようなテストソリューションとともに、通信ネットワークに関連した最新の評価測定技術を身に付けるセミナーを定期的に開催している。
 「SmartBits やAX/4000等の測定器の動作の仕組みとともに、ネットワーク性能測定・分析の本来の役割について確認し合うことを目的としています。そして、我が社の技術をインテグレートすることで、より実践的なテスト手法を身に付けていただきます」(株)東陽テクニカ 情報通信システム部SPIRENT Labグループ 有地博幸氏)。
 さらに、東陽テクニカ内のLabを使用して、同社と米国SPIRENTCommunication社の技術を提供する検証・コンサルティングサービスを提供している。同サービスでは、豊富なスキルと経験を持つテストエンジニアが、使用説明から測定ノウハウを提供し、レポートも作成する。


図2 OSPFv3 の性能測定分析手法例:フェイルオーバー時間(東陽テクニカ)


【アルチザネットワークス】
VoIP ネットワーク全体をサポートする運用管理ツールを提供


 通信サービスの実現に不可欠な通信プロトコルの試験や検証を行う通信計測機を開発し、通信事業者、通信機器メーカーおよびネットワーク・インテグレーター等に提供することで、通信インフラの開発から、導入、保守・運用等を側面からサポートしている(株)アルチザネットワークス(以下、アルチザネットワークス)は、現在、VoIPネットワーク関連のテスト機器と、IPネットワーク機器の性能を評価するパフォーマンステスタの開発に注力している。
 VoIPネットワーク関連のテスト機器の取組みについて、アルチザネットワークスでは、「VoIPネットワークの導入が進む中、ユーザーからは、これまでの音声品質測定に加えて、ネットワークおよび関連機器の品質評価や検証が求められており、そのため、新たに負荷試験というニーズが発生しています。このような動きに対して、わが社では、VoIPネットワーク全体をサポートする運用管理ツールの開発と提供を進めています」(株)アルチザネットワークス代表取締役社長 床次隆志氏)と語っている。その代表的な製品が、複数の拠点のVoIP音声品質を遠隔地から集中監視する「Artiza VoIP SOFTWARE PROBE」である。同製品は、VoIPプロトコル解析や音声品質測定で定評のある「ArtizaVoIP Analyzer」をベースとしたVoIPネットワークの保守、運用管理ソリューションである。VoIP品質を測定する「ソフトウェア・プローブ(SP)」と、複数のSPを同時にコントロールできる「SP-マネージャ」を組み合わせることで、複数の遠隔地のVoIP音声品質、接続品質をリアルタイムで集中監視する。
 また、Artiza VoIP Analyzer(音声品質測定機能付き)1ライセンスと、ソフトウェア・プローブ2ライセンス、SP-マネージャ1 ライセンスをパッケージとして提供し、品質管理や障害の発見から原因の解析までを幅広くサポートしている。そして、従来の音声品質測定に接続品質測定をプラスすることで、実環境における音声品質と、呼の接続動作の検証を合わせてできるようになり、VoIPネットワークの障害・劣化傾向の把握・予測を実現している。
 一方IPネットワーク関連のテスト機器では、スイッチやルータ等の機器の性能を評価するパフォーマンステスタ「ANPro-800」を提供している。同製品は、広域イーサネットやIP-VPNなどのWANサービスで利用されるルータ&スイッチに対して、負荷試験や遅延の測定、スループットやフレームロス等の統計解析を行う性能評価測定器である。8スロットの本体に10BEASE-Tから10Gbイーサネットまで、最大3つのインタフェースモジュールを組み合わせて格納し、OSPFv2 ・BGP-4 ・RIPのルーティングプロトコル検証とリアルタイムテストを行う。
 同製品の開発コンセプトは、「広域イーサネットやIP-VPNサービスの市場は拡大を続けており、この動きに併行して、付随するサービス技術もVLANタギングやMPLSなど、多様化しています。このような状況の中では、安価で効率的な性能評価システムへのニーズが高くあると考え、それに対応した測定器として開発しました」(株)アルチザネットワークス プロダクト統括本部 大辻尚氏)。同製品の最大の特長は、新たなコンセプトをベースに実現された操作性である。グラフィカルで操作性に優れたインクリメントカウンタ配置設定や、VLANタグの簡単設定によるネットワーク評価、自由度の高い送信パケット定義等により、開発や評価にかかる時間を大幅に削減することができる。
 ユーザーサイドの視点から各種テスト機器を開発してきたアルチザネットワークスでは、2003年11月には、IPネットワーク上におけるさまざまな端末の擬似・負荷試験を実現する「Artiza VoIP Multimedia Traffic Generator」の販売を開始した。同製品は、同社が注力してきたVoIPテスト製品の技術をベースに、「IP電話など各種IP端末をネットワーク上で擬似したい」といったニーズに応えて開発されたトラフィック・ジェネレーション製品である。IPv6 とIPv4の両方に対応し、今後は、ストリーミング端末やメッセンジャー端末等のIPネットワーク上でさまざまな端末ノードからのトラフィック生成機能を順次追加して、ユビキタスネットワークの標準試験機となるよう、開発を続けていくそうである。

【フルーク・ネットワークス】
ネットワークの状況を可視化して安定運用を実現していく


 ネットワークの進化とともに、ネットワークの運用管理に費やす時間が増加している。企業にとって新たなテクノロジーの導入は、企業のミッションとなっているが、管理者がその管理を完璧に行うことは不可能である。経験と勘に頼った管理では、トラブルシューティングの時間ばかりが増加するだけで、TCOの観点から考えると、確かな測定・評価に基づいたネットワークの運用を管理するツールの導入が不可欠である。
 このような状況の中、多くの企業では、各種管理ツールを一元的に管理する、統合運用管理ソリューションの導入が進められている。ネットワークの運用を統合的に管理するメリットは、統合プラットフォームとの密な連携と、アプリケーションレベルでの連携、全社統一の管理ポリシーの適用、といったことがあげられるが、デメリットとしては、厳密なバージョン整合性、全社統一の管理ポリシーが適用しにくいユーザー企業への適用、広範なユーザーニーズに対応するための過剰機能とコスト、そして、物理層の障害への対応、といったことがあげられる。以上を踏まえて、ネットワークの安定運用を実現するソリューションのフレームワークを考えた場合、ユーザー企業のニーズに合わせた最適な組合せによる、“Best-of-Breed”なソリューションの構築が必要である。
 国内のケーブルテスタ市場で圧倒的なシェアを誇るフルーク・ネットワークスは、LAN/光ケーブルの物理的なテストからネットワーク監視/管理用アナライザといったレイヤー1から7までをカバーするネットワークソリューションを提供している。現在は、企業におけるネットワークの安全稼働をテーマとした、トラブルシューティングと運用管理の連携を最適化するソリューションの提供に注力している。同社では、Best-of-Breedの要件として、個々の機能が優れていることに加えて、「データ、規格レベルでの整合性、ベンダー間での連携動作保証、連携ソリューションとしてワンストップ提供できるコンサルティング・ベンダーの存在と、導入立ち上げのランニング・コストの低減といったことがあげられるでしょう」(株)フルーク ネットワーク営業 山本通武氏)と語っている。このような要件を実現するものとして、図3のようなソリューション・フレームワークを提案している。また、このフレームワークの鍵を握るソリューションとして、トラブルシューティングとネットワーク・トラフィック管理をあげている。そして、ネットワークの安定運用を実現するには、ネットワークの可用性の向上が必要だが、そのためには、MTTR(ネットワーク障害発生から復旧までの平均時間)の最小化が必要である。フルーク・ネットワークスでは、MTTRを最小化するために、トラブルシューティングを効率化することで、「障害検出時間の削減」「障害解析時間の短縮」「障害復旧と検証時間の短縮」を実現しようとしている。
 「現在、多くの企業ではMTTRの最小化に向けて、ネットワーク・マネジメント・システム(NMS)とプロトコル・アナライザを利用しています。しかし現状としては、『さらに詳しい情報がほしい』(NMS)、プロトコル・アナライザについては、『どこに接続すればいいのか、スイッチに接続して何を見ればいいのか?』(プロトコル・アナライザ)といったケースが多くあります。このような課題を解消するために、わが社では、『ネットワーク・マネジメント』、『ネットワーク・モニタリング』、『ネットワーク解析』、『パケット解析』、これらの4 分野の機能連携を実現することで、ネットワーク安定運用の最適化を図ります」(前出 山本氏)。具体的には、ネットワーク・マネジメント:OptiViewコンソール、ネットワーク・モニタリング:OptiViewエージェント、ネットワーク解析:ハンドヘルド・ツール、パケット解析:OptiViewプロトコル・エキスパート、OptiView LinkAnalyzer、といったソリューションを提供している。
 高速化、複雑化していくネットワークを安定運用していくためには、ネットワークおよびシステムの運用状況を常に“目に見えるようにする”ことが必要である。フルーク・ネットワークスが提供する各種ソリューションは、ネットワークやシステムの稼働状況を可視化(正しい測定と評価)することで、問題の事前予知を可能にしている。


図3 Best-of-Breed ソリューション・フレームワーク(フルーク・ネットワークス)

【アンリツ】
FEC機能評価に最適なランダムエラー挿入機能を実現


 ブロードバンドの急激な進展は、PC内部のアーキテクチャやネットワークの高速化も進めている。たとえば10Gbイーサネットでは、XFP(10Gigabit Small Form Factor Pluggable)などの10Gb/sのビットレート電気信号を直接扱うなど、高周波信号がネットワークのあらゆる分野で使用されるようになっている。この高周波信号は、内部回路や送信器、ケーブルや基板のラインの伝送路といった、さまざまな要因が絡み合い、データ信号の時間揺らぎである「ジッタ」や「ワンダ」を生じさせている。このジッタやワンダが増えていくと、デジタル信号の「0」と「1」が判別できなくなり、ビット誤り率の悪化を招くこととになる。そのため、ジッタやワンダを正確に抑えて、必要な対策を施し、信号品質の高い伝送を確保することは、高速デジタルネットワークの開発・評価を行う際の必須条件となっているのである。
 オリジナルかつハイレベルな技術をベースに、モバイル&インターネット関連市場等に電子・情報通信・計測ソリューションを提供してきたアンリツ(株)(以下、アンリツ)は、このジッタおよびワンダを正確に測定するテストソリューションにおいて、業界唯一の豊富な技術とノウハウを蓄積している。
 「ITU-T内の測定器に関する規格を作成するグループに参画し、ジッタを含めたネットワーク評価に関連した各種規格の作成に取り組んでいます。ここでの経験とノウハウを活かして、ネットワークおよび機器に関連したあらゆるケースの測定を行い、真の信頼性についての検証、評価に取り組んでいます」(アンリツ(株) 計測事業統轄本部IP ネットワーク事業部 石部和彦氏)。
 アンリツのジッタ測定の取組みは、製品の開発だけでなく、測定規格の作成からはじまっているのである。
 2003年11月、アンリツは、ジッタ測定とともに、次世代の光伝送技術であるOTN(Optical Transport Network) に準拠し、FEC(Forward Error Correction)と呼ばれるエラー検出・訂正機能を備えたOTN伝送装置の評価を行うネットワークパフォーマンステスタ「MP1590A」の販売を開始した。ネットワークを流れる情報が音声からデータへ移行するに従い、次世代ネットワークは、より一層の高性能化とコスト効率化が求められている。
 このようなニーズに対応するためには、FEC機能は必要不可欠であり、FEC機能を正確に評価するためには、周期的なエラー(サイクリックエラー)ではなく、実運用に近い統計的手法によりランダムに発生させたエラー(ランダムエラー)を挿入する機能が必要である。アンリツは、この問題を解決するために、業界で初めてOTN伝送装置のFEC機能評価に最適なランダムエラー挿入機能を実現したMP1590Aを開発したのである。
 MP1590Aは、1台でPDH、DSn、SDH/SONET、OTN装置の試験やジッタ測定を行える測定器で、ランダムエラー挿入機能と光出力可変機能を備えたことで、FEC機能がもつ「ランダム性のエラー訂正能力」の評価を可能にした。つまり、複数の測定器を用意する必要がなく、MP1590A 1台で効率よくFEC機能を評価することができるのである。
 また、ジッタ測定については、10/10.7Gジッタユニットを装着することにより、SDH/SONET、OUT1、OUT2、10.3GHzのジッタ発生と測定を行い、ITU-T Rec. G.783、G.825、G.8251、Telcordia GR-253に準拠したジッタ耐力測定やジッタ伝達特性測定を可能にした。アンリツでは、今後はIPのインタフェースを追加し、IPのジッタ測定にも取り組んでいくそうである。


        図4 FEC デコーダ試験(アンリツ)

「後追い型」から「事前予知型」へ

 欧米の通信事業者や企業では、計測ツールに対して、SLA(サービス品質)を重視したニーズが中心なため、トラブルを未然に防ぐ“事前予知型”の取組みが主流である。しかし、わが国では、ユーザーからの声に反応して動く“後追い型”の取組みが多い。拡大と複雑化が進むネットワーク上で高い通信品質を実現するためには、カタログスペックに頼るのではなく、SLAの視点から、正しい測定・評価・分析を行っていくことが不可欠である。ネットワークの品質と信頼性の鍵を握る計測ツールの重要性が、今後ますますクローズアップされていくことだろう。


<取材協力・資料提供>
アジレント・テクノロジー (株)
イクシア (株)
(株)東陽テクニカ
(株)アルチザネットワークス
(株)フルーク
アンリツ (株)








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