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インタビュー:キャリアグレードのネットワークアプリケーション領域までビジネスを拡大 日本オラクル㈱ インダストリー第二統括本部 通信・公益営業本部 本部長 関屋 剛氏
日本オラクル㈱ 
インダストリー第二統括本部
通信・公益営業本部
本部長 関屋 剛氏

専門性を活かし、ビジネス・アプリケーション製品の販売拡大を主軸に、主要顧客に 対しデータベースおよびアプリケーションサーバを中核とするミドルウェア基盤製品 のより一層の浸透を図る「通信・公益営業本部」の取組みについて、関屋剛本部長に 聞いた。

The Information Company 実現に向け製品軸中心の組織体制に再編

―6月1日に組織改編されましたが、まずはじめに、新組織の概要からお聞かせください。

関屋日本オラクルは、この6月 1日に、戦略立案から製品出荷まで 製品軸を強く打ちだした「システム 事業統括」「インダストリー&アプ リケーション事業統括」の2つの製 品ビジネスグループを新設し、製品 ごとに専門性の高い製品知識・スキ ルを有する組織体制を構築しまし た。「システム事業統括」は、デー タベース・テクノロジー製品の戦略 立案、製品出荷、販売支援、販売活 動を行う組織であり、「インダスト リー&アプリケーション事業統括」 は、ビジネス・アプリケーション製 品の戦略立案、製品出荷、販売支援、 販売活動とともに、インダストリー ごとの主要顧客に対してのデータベ ース・テクノロジー製品の販売支 援、販売活動を行う組織です。

私共の通信・公益営業本部は、イ ンダストリー&アプリケーション事 業統括のインダストリー第二統括本 部に属しており、テレコム事業者様 および公益企業体様に対し、ビジネ ス・アプリケーション製品の販売を 拡大するというミッションを重く担 っています。と同時に、システム事 業統括と連携しながら、データベー ス・テクノロジー製品のより一層の 浸透を図ることが主なミッションで す。

―新組織での戦略をお聞かせください。

関屋新たな企業ブランドとして、 「The Information Company」の確 立をめざすオラクル社全体の戦略が あげられます。これは「Oracle Fusion Middleware(Fusion MW)」 を中核に、“情報を効率的に管理し、 情報をビジネスの価値として最大限 に活用できる包括的なソリューショ ンを提供できる唯一のソフトウェア カンパニーになる”というオラクル 社の強いメッセージです。FusionMWとそのコンポーネントである Data Hubによって、あらゆるシス テムとの統合が可能になります。さ らに、データ統合を実現するために、 データモデルの提供も行います。ま た、Fusion MWによって最終的に はトランザクションデータの統合を 行い、経営層の方々が求める真の BI(Business Intelligence)が実現 できます。このFusion MW は、 “Oracle Application Server”を中 核コンポーネントとして、あくまで も標準技術をベースにOpenな環境 でご利用いただけます。

Oracle Application Server をベースにしたOracle Fusion Middleware に注力

―もはやデータベース専業ベンダーではないと…。

関屋データをデータベースに格 納するだけではなく、情報として有 効活用することが重要です。そのた めには情報の統合ソリューションが 必要で、オラクル社ではデータベー スに加えミドルウェア基盤層におけるデータ統合に向けた取組みを積極 的に行っています。現在、我々の提 供する製品は、大きく3つのカテゴ リに分けられます。1 つは、 “Oracle Database”、2つめは、 “Oracle Fusion Middleware”、3 つめは、“Oracle Applications”で す。Oracle Applications には、EBusiness Suite、PeopleSoft、JDE が含まれています。お気づきとは思 いますが、現在、アプリケー ション・レイヤでは、3つの ERP製品をご提供しています。 これらをミドルウェア・レイヤ で統合していくソリューション がFusion MWです。もちろん、 SAPやLegacy Applicationとの 統合も可能です。このミドルウ ェア・レイヤでのプロセス統 合、データ統合をFusion MWで 実現し、情報を有効活用いただ くことに注力をしていきます。 さらに、ミドルウェア・レイヤ とデータベース・レイヤの統合 管理を行うソリューションの提供も行います。

図1 OIA フレームワークに基づく製品マッピング例

―データベースとミドルウェアを統合して、お客様に使っていただこうと…。

関屋それが基本的な狙いです。 データベースの上にFusion MWと いうことで、Oracle Application Server をベースに展開していきま す。統合という観点でいいますと、 データベースとOracle Application Server を横串で管理する「OracleEnterprise Manager」をベースに データベース層とミドルウェア基盤 層の統合を図っていきます。さらに、企業が業務の連携を容易に行えるよ うFusion MWでは、SOA(Service Oriented Architecture)に対応した 標準的なアプローチを採用しています。


図2 オラクルが提供するSOA(Service Oriented Architecture)基盤

― Fusion MW の中核製品である Oracle Application Server についても、機能追加を図っているのですか。

関屋従来のJ2EEのエンジンとし ての役割に加えて、BPEL(ビジネ ス・プロセス・エクゼキューショ ン・ランゲージ)によって各システ ムのインテグレーションを行う 「Oracle BPEL Process Manager」、 統一されたセキュリティ管理と確実 なIT 管理機能を提供する「Oracle Identity Management」、ビジネ ス・フローをあらかじめ調査・分析 してビジネスのプロセスを設計する BPM(ビジネス・プロセス・マネージメント)のための「Oracle BPM」 とプロセスを監視するビジネス・ア クティビティ・モニタリング(BAM) ツールである「Oracle BAM」、BI (ビジネスインテリジェンス)プラッ トフォームの「Oracle Business Intelligence」、企業ポータル「Oracle Application Server Portal」、さらに は「Oracle Data Hub」といった新し いコンポーネントを提供することに よって、図2に示したようなSOA基 盤を実現しています。

キャリア向けネットワークアプリケーション領域でのビジネス拡大に注力

図3 通信事業者のアプリケーションプロファイルの概要

―そういった状況を踏まえ、通信・公益営業本部として、特にキャリア向 けビジネスをどのように展開していくお考えですか。

関屋通信事業者様を取り巻くビジネスの環境として、いくつかのポ イントがあります。まず、ネットワークのIP化・光化に向けてNTT東 日本および西日本様が大規模投資を 2010 年まで行おうとしています。 また、携帯事業への新規参入を目指している事業者様も我々にとって大 きなビジネスの対象になると捉えています。さらに、固定と携帯の融合ということで、FMC(フィクスド・モバイル・コンバージェンス)の領域でもビジネスが期待できそう です。こういった市場のトレンドと、日本オラクルの製品戦略を踏まえ、 我々が従来から行ってきたビジネス のポジションを少し変えていこうと 考えています。従来は、キャリア様 のエンタープライズ領域でビジネス を展開していましたが、ネットワー クのレイヤまで落としてビジネスを 拡大していこうと考えています。これは、従来のようにエンタープライズ領域とネットワーク領域におい て、別々のアプリケーションプラットフォームが存在していた状況から、全て共通のアプリケーションプ ラットフォームに統合することを指向しています(図3参照)。

―ビジネスの軸足をネットワークの レイヤまで拡大していくということですが、具体的にはどのようなことをお考えですか。

関屋基本的には、SDP(サービ ス・デリバリー・プラットフォーム)の領域と、我々が「キャリアグレードフレームワーク」と称している従 来専用の交換機で行っていた領域で もビジネスを展開していきたいと考 えています。SDP では、Oracle Application Server 10gをSIPプロト コルに対応させることで、ビジネス が展開できるのではないかということで、現在取り組んでいます。中長 期的には、米国本社にSIPの機能追 加を要求して製品に実装する取組み を開始したところです。

―実現すれば、Oracle Application Server 10g がVoIP 連携機能を備えたアプリケーションサーバになる…。

関屋そうです。短期的な取組みとしては、国内でSIPのソリューションをお持ちのベンダー様と我々のア プリケーションサーバのソリューシ ョンを組み合わせてブランディングしていきたいと考えています。既に現在、パートナー様との協調ソリューション展開プログラムである「On Oracle」で、NEC様がWEB/ITアプリケーションをSIP対応にするミ ドルウェア「SIPHIA」を提供して います。SIPHIAは、J2EEアプリ ケーションに組み込むコンポーネン トである“SIPHIAクライアント” と、標準的なSIPサーバとSIPで通 信する“SIPHIAサーバ”から構成 され、J2EEアプリケーションから SIPHIA のAPI を呼出すことによ り、SIP を利用したIP 電話システ ムにおいて、電話機同士の接続制御 や、電話機への音声ガイダンス配信 等の機能が実行可能です。開発者は SIPによる呼制御やVoIPの知識を 必要とせず、さらにはVoIP側のシ ステム構成等をまったく意識するこ となく、アプリケーションやサービ スを開発可能です。

―キャリアグレードフレームワークについては、どのようなことをお考えですか。

関屋従来専用機で行っていた部 分にオラクルのテクノロジーを実装 していくことを考えています。今年 の6月9日にオラクルがインメモリ のデータベース・ベンダーである TimesTenを買収することを発表し ました。このインメモリの機能をベ ースに、キャリアグレードの領域で ビジネスを展開していくことをグロ ーバルに考えています。日本市場で は、主要な通信機器ベンダー様との アライアンスを視野に、取り組んで いくことを考えています。

―NTTドコモのビジネスFOMAに、データベースが搭載されますね。

関屋携帯デバイスに軽量のデー タベースを搭載するという点では、 ビジネスF O M A に対応する 「Oracle Database Lite 10g」の提 供を7月1日より開始しています。

―従来のエンタープライズ領域に関 して、新しいソリューションの提供も含め、どのような取組みを行っていますか。

関屋前述したように、データベ ース+Fusion MWをコンセプトに 新しいビジネスを拡張していきま す。また、アプリケーションのビジ ネスについては、特に新規参入の通 信事業者様に我々のテレコムソリュ ーションをお届けすることを考えて います。そのソリューションも、グ ローバルに同期をとったものから、 日本市場の特性に基づいてブラシュ アップしたものまでいくつかありま す。代表的なものが、「TSO(テレ コム・サービス・オーダリング)」 という基幹系のシステムです。また、 巨大な先行投資をしながらサービス を提供している通信事業者様やユー ティリティ事業者様向けに、ファイ ナンシャルのモジュールをベースに した「Oracle CPM(コーポレート・ パフォーマンス・マネージメント) ソリューション」を提供しています し、ネットワーク設備のライフサイ クル全般にわたる管理を効率化する ための「NLM(ネットワーク・ライ フサイクル・マネージメント)ソリ ューション」も提供しています。

さらに、「Oracle Database 10g Release 2」を今秋より提供開始す る予定です。Release 2では、パフォーマンス、可用性、運用管理、セキュリティなど企業システムにとって重要な機能の強化、開発生産性の 向上、BIやコンテンツ管理機能の拡充を図るなど、ファンクションが揃っていることから、私共にとってご提案の幅を拡げることができると考えています。

ERPソリューションの積極展開で売上拡大に貢献したい

―最後に、通信事業者での最近の主 なOracle Application Server 導入実績と、今後のビジネスの抱負についてお聞かせください。

関屋最近の特徴的な事例として は、NTT西日本およびNTT東日本 様の、IPv6フレッツネットワーク向 けのブロードバンド映像サービスと して「オンデマンドTV」がありま すが、このサービスのプラットフォ ームとして、データベースに加え、 Oracle Application Serverもご採用 いただいております。ビジネスの抱 負については、各事業者様の投資の 方向性を正確に見極めながら通信・ 公益企業体向けのビジネスを拡大す ることです。例えば、通信事業者様 向けテクノロジー製品のライセンス 収入の割合は、現状は日本オラクル 全体の約10%程度です。過去には、 20 ~ 30 %を占めていた時代があり ましたので、できれば20%程度には したいと考えています。また、ERP ソリューションの積極展開によっ て、通信キャリア様のお役に立てる ようになればと思っております。

―本日は有り難うございました。

(聞き手・構成:編集長 河西義人)


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