NTT研究所主導の広帯域音声符号化方式が、ITU-T国際標準に採用決定
-電話音声帯域に低域と広域をプラスすることで、明瞭度と臨場感をアップ-NTT
NTTは、ITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)において、音声符号化方式の国際標準化に積極的に取り組んできたが、NTTのサイバースペース研究所(以下、NTT研究所)が主導となり、ETRI(韓国)、FranceTelecom(フランス)、Huawei(中国)、VoiceAge(カナダ)と共同で提案した広帯域音声符号化方式がITU-Tの国際標準に採用され、正式な承認手続きの後、G.711Wideband Extension(仮称、以下G.711-WB)として成立することとなった。
NTTでは、本方式を次世代のVoIP電話機や音声会議装置等に搭載することで、明瞭かつ臨場感にあふれた高品質な通話が可能となる。また、インターネット上で利用しても、途切れの少ない通話ができるようになるとともに、従来の電話機と相互接続することも可能になるとしている。
従来のディジタル電話やVoIP電話には、ITU-Tの音声符号化標準G.711が最も広く用いられてきた。G.711は、300Hz~3.4kHzの電話音声帯域だけを再生するため、会話を行うには十分なものの、明瞭感や肉声感には欠けるものであった。また、50Hz~7kHzの広い音声帯域を再生できるものもあったが、相手の電話機も同じ方式である必要があり、普及にまでは至らないのが現状であった。この課題解決に向けNTT研究所では、広帯域で高品質かつ従来電話と相互接続可能な広帯域音声符号化方式の開発に取り組んでいた。
2007年1月、NTT研究所は従来電話と相互接続可能な広帯域音声符号化方式の国際標準化をITU-Tに提案。その後、NTT研究所が開発した方式を基本に他4社と共同検討を重ねた結果、国際標準に相応しい方式を確立するに至ったもの。本方式がITU-Tの要求品質を満たしていることが確認され、2008年2月1日、ITU-Tにて最終の承認手続きに進むことが了承された。
広帯域音声符号化技術G.711-WBの特徴
①7kHz広帯域音声を再生可能
従来の電話音声(300Hz~3.4kHz)よりも広帯域の音声(50Hz~7kHz)を再生できるため、明瞭かつ臨場感にあふれた音声で通話でき、鳥や虫の鳴き声も再生することができる。
②従来電話(G.711)との相互接続性を確保
G.711-WBは、G.711の符号データ(64kbit/s)に、広帯域化のための16~32kbit/sの符号データを追加して伝送するため、G.711の符号データだけを取り出して、従来電話と通話することができる。
③パケットが消失しても音声を復元
インターネット上でVoIPでの通話を行うと、音声符号データを含むパケットが途中で欠落し、音声が途切れることがある。G.711-WBは、そのような場合でも、欠落した部分の音声を高精度に復元する仕組みを備えているため、途切れの少ない快適な通話が可能である。
④少ない遅延による自然な通話
携帯電話やVoIPでは、音声信号をブロック単位(10ms以上)にして処理するため、音声が遅れて届く。G.711-WBは、半分以下の5ms単位で処理するため、データ処理による音声の遅延を抑えることができ、遅れの少ない自然通話が可能である。
⑤安価なDSP(ディジタルシグナルプロセッサ)に実装可能な少ない処理量
処理量が8.7WMOPS以下と、従来に比べて少ないため、安価なDSPにも実装できる。
NTTでは今後、本方式の実装に向けた検討を行っていく。また、NTT研究所では、7kHz以上の帯域を利用した、さらに高品質な音声符号化方式の標準化を目指し、研究開発を行っていくとしている。
NEWS(2008年3月)
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