NTTグループのソリューションガイド

ICTソリューション総合誌 月刊ビジネスコミュニケーション

ビジネスコミュニケーション

~要求を可視化するための~
「要求定義・要求仕様書の作り方」

要求を可視化するための「要求定義・要求仕様書の作り方」

要求仕様化プロセスを定式化する
要求工学の基本概念を解説した好個の書

企業活動において重要な位置を占める情報システム。その開発にあたって、最初に行われるのが要求定義である。この段階では、解決したい問題や、何をしたいのかといった利用者のニーズを的確に把握し、必要な機能や性能などを検討し、要求をまとめ(定義し)、要求仕様書を作成する。要求定義に欠陥があると、システム完成後に、「こんなシステムでは使えない」「こんなシステムを頼んだ覚えはない」などと言われ、スケジュール遅延、予算超過、開発のやり直しといった事態を招く。開発プロジェクト失敗の原因の多くは要求仕様にあるといわれるが、要求定義は、開発に携わる人間と、発注者・利用者との円滑な意志疎通に負うところが多く、そこに難しさがある。

要求を可視化し、正しくまとめる(定義する)ための工学的なアプローチである、「要求工学」の基本概念を具体的に解説した『要求定義・要求仕様書の作り方』が、ソフト・リサーチ・センター(http://www.src-j.com)から出版された。著者は、本誌連載の「UMLの基礎と応用」(2001年9月~2003年4月)、「要求工学」(2004年10月~連載中)でお馴染みの山本修一郎(NTTデータ・技術開発本部副本部長)さん。

山本さんは、「最近の情報システム開発では、要求仕様に基づいて正しいソフトウェアを開発するということだけではなく、ソフトウェアを取り巻く経営環境や業務プロセスを含めた外部環境に基づいて正しい要求仕様を作成することの必要性が高まってきている」とし、「ビジネス情報システムは、ビジネス環境の変化の中で継続的に変化する要求に追随しなくてはならないという本質的な特性を持っている。要求工学では、このような曖昧で変化しやすい要求を工学的に扱うことで、品質の高い要求仕様書を効率的に作成する手法が提案されている」と指摘している。

本書は、要求定義プロセス、要求仕様化(仕様書の構成法、作成法)、要求仕様書の確認法、要求管理、要求仕様書の追跡法といった一連の流れ、可視化の方法をわかりやすく解説するとともに、オブジェクト指向システム開発のためのUML(Unified Modeling Language)による要求モデリング、さらにはシナリオモデリングやJacksonの問題フレームについても多くの頁を割いて解説している。開発者のみならず、発注者を含め、情報システムの開発プロジェクトに携わる方々の実務書・座右の書として、お手許におくことをお勧めしたい。

内容目次

第1章
要求工学の概要
第2章
要求定義プロセス
第3章
要求仕様書の構成法
第4章
要求仕様書の作成法
第5章
要求仕様書の確認法
第6章
要求管理
第7章
要求仕様書の追跡法
第8章
UMLによる要求モデリング
第9章
要求工学の動向
参考文献

(2006年4月号)