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ICTソリューション総合誌 月刊ビジネスコミュニケーション

ビジネスコミュニケーション

これだけは知って欲しいSOA

第3回:SOA 導入のアプローチ

前回はSOAの技術特性に触れながら、その特性を活かした幾つかの事例を確認してきた。

今回は、SOA導入にあたってのアプローチをより詳細に見ていく。

SOA導入のドライバ

SOAとはシステム機能のサービス化であり、それを用いたプロセス連携であると説明してきた。前者は既存システムを含むIT資産を標準化・汎用化し、インテグレーションコストの削減に寄与する。これにより社外含め従来であれば個別開発に見合わなかった対象にまでサービスの提供が可能となり、結果としてシステムとしてのリーチが大きく広がる。そのように独立し汎用性の高いサービスを、個々のビジネス要件に応じて(マニュアルプロセス、社外プロセス含め)End-to-Endで組み上げ連携させる後者のソリューションが、新規のサービスやプロダクト展開、競業他社や市場変化への迅速な対応を可能とする。

したがってまずは、SOA導入の具体的なドライバを、上記いずれかの特性を鑑に見つけ出すことである。すなわち、既存システムの接続や運用における高コスト構造であるとか、新規のIT化におけるリードタイムの長さであるとか、あるいは、(部分的にあるいは全体に)システム化・自動化されていないがゆえの業務上の非効率・高負荷であるとか、何かしら具体的な課題を見つけ、それに対してSOAを適用した場合にいかなる効果を得られるか、という順序で発想するとよい。

どちらかといえば、サービス化重視のアプローチはコスト削減型、プロセス連携重視のアプローチは効果創出型ということができる。SOAとはシステム資源のサービス化であるのだから、まずはその基盤となるプラットフォームミドルウェア(ESB:エンタープライズ・サービス・バス)を導入し、アーキテクチャから変革しようであるとか、あるいは、SOAはプロセス連携なのだから最初に自社のコアプロセスを網羅的に整理しようであるとか、いずれも大切なことではあるが、それだけでは中途で頓挫する可能性も高くなるので、必ず具体的なドライバとなる要件・課題をセットで定義することが重要である。

具体的な進め方

次に、SOA導入の具体的な進め方を、フェーズ別に見ていこう。

(1)計画・組織化

サービス化重視のプロジェクトの場合、ベースとなるWebサービスのインフラとプロトコルを評価し、正しく標準サービスを設計開発するためのガイドラインや文書体系を整備することが第一となる。サービス化は複数のシステム(主管部門)にわたることが予想されるため、情報システム部中心にSOA推進の基盤部隊を立ち上げる必要があろう。

プロセス連携重視のプロジェクトの場合も、関連部門に業務、システム機能の要件整理が発生するため、領域横断組織の設置が必須である。それ自体は会議体でも合同機関でもかまわないが、連携効果が高く、(したがって)当事者である企業にとって死活的な業務プロセスであればあるほど、トップのコミットメントが高く求められることは言うまでもない。

(2)初期導入

サービス化重視アプローチでは、初期のサービス化対象を決定し、将来の連携可能性を考慮しつつ実装を行う。多くは既存システム機能をサービス化し、アドオンするような形式をとることになろう。

プロセス連携重視の場合には、自動化の対象となるプロセスを選び出し、BPM(ESBミドルウェアとパッケージされているものも多い)上にて実装を行う。初期導入においてはあまり多くのビジネスユニットにまたがるプロセスではなく、効果的でありつつも一定の範囲に閉じたものを対象に成功事例を作ったほうがよい。

(3)SOAアーキテクチャ確立

いずれのアプローチの場合も、単発に終わってしまってはSOAの本来のうまみであるIT資産化、再利用性といった相乗効果につながらない。初期導入後はESB、BPMといったコアプラットフォームの確立に努め、以後の開発がその上で行われるよう、ガイドすることが重要となる。特に、プロセス連携から初期導入を行った場合には、早期にサービス基盤構築へとシフトし、SOAとしての基本形を整えないと、(そのままでは)再利用不可能なサービスが量産されることになり、後戻りが利かなくなるので注意が必要だ(図1参照)。

図1 SOA導入アプローチ概観
図1 SOA導入アプローチ概観
図2 SOA化の流れ
図2 SOA化の流れ

バランスよく基盤整備を行えれば、ESBを媒介として、切り出した汎用サービスの自動連携による新業務プロセス創出が可能となり、またより複雑なプロセス連携も可能となるであろう。あるいは、ビジネスパートナーへ(から)サービスを公開したり、ビジネスユニットをまたがったプロセス連携を行ったりということも視野に入ってくる。

(4)SOAエンタープライズ

こうして徐々に変革される企業ITの究極の姿とは、結局どういったものであろうか。

それは、一企業のあらゆるIT資産がESB上にサービスとして公開され、可能な限り自動連携されて当該企業のビジネスを担っている状態である。そうしたIT資産が社内だけでなく顧客や、社外パートナーに対しても公開され、ビジネス上の協業や取引、顧客応対といったコミュニケーションが端的にそれらサービスの提供あるいは交換という形で実現されている姿である。

そこでは新規のビジネスプロセスも、コミュニケーションプロセスも、サービスの組み合わせという形で実現される。すなわちSOAの理想においてサービスとは企業のビジネス語彙そのものなのである。ITはもはやツールでも手段でもなく、直接に企業のビジネスリソースとなるのである。

いささか大仰な理想論まで踏み込んだところで、次回、本連載の最終回では再び現実に戻り、SOAの最新動向を現状の技術的制約や考慮点含めて概観することとしたい。

お問い合わせ先

アクセンチュア株式会社
通信・ハイテク産業本部パートナー
立花 良範
yoshinori.tachibana@accenture.com

同シニアマネージャー
松本 晋一
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