NTTグループのソリューションガイド

ICTソリューション総合誌 月刊ビジネスコミュニケーション

ビジネスコミュニケーション
第16回:要求インタビュー
NTTデータ 技術開発本部 副本部長 山本修一郎
NTTデータ 
技術開発本部
副本部長 
山本修一郎

インタビューの分類フレームワーク

上述(前頁を参照)したように様々なインタビューがある。これらのインタビューを分類するための共通的な観点を整理すると、インタビューの目的、質問形式、手段、対象者、生産物、管理の6項目になる。

インタビューの目的

・理解:
話し手の人物や業務、技術知識を理解するためのインタビュー
・問診:
聞き手が話し手の病状や症状を診断するためのインタビュー
・報道:
記者がある切り口で社会や技術動向を取材して報道するためのインタビュー
・出版:
著者があるテーマで社会問題や技術などを取材して出版するためのインタビュー
・交渉:
話し手と聞き手とが取引するための意見を交換するためのインタビュー
・説得:
話し手と聞き手の一方が他方を説得するためのインタビュー
・意見照会:
ある提案に対して、関係者の意見や課題提起を収集するためのインタビュー
・要求抽出:
聞き手としての分析者が顧客や開発者からシステム要求や課題を抽出するためのインタビュー

質問形式

・構造的:
予め質問を用意しておき、回答を収集する
・半構造的:
用意した質問と回答に応じた新たな質問を用いて、回答を収集する
・非構造的:
予め質問を用意することなく、回答者に自由に発言させて、情報を収集する

手段

・対面:
話し手と聞き手とが顔を合わせてインタビューする
・電話:
電話によるインタビュー
・書面:
書面によるインタビュー
・電子:
メールやWebによるインタビュー

対象者

・個人:
特定の人物に対するインタビュー
・組織:
組織の構成員に対するインタビュー
・社会:
一般の人や地域、共同体に属する人へのインタビュー

生産物

インタビューして入手した情報をまとめるときに作成する生産物の種別を分類するためには、生産物の構成要素や公開範囲、話し手に対する作成した生産物の内容確認の有無を明らかにする必要がある。

・生産物の内容の種別には、文書もしくは映像・音声がある。文書としての生産物には、調査報告、作品、記事、Q&A集、要求定義書、要求仕様書などがある。映像・音声の場合にはドキュメンタリーやニュースがある。

管理

インタビューの管理では、一過性のインタビューと継続性のあるインタビューを考慮する必要がある。面接などでは一時的に話を聞いて終わるので厳密な管理は必要ないかもしれない。新聞や雑誌の取材でも、あるトピックスについて有識者の意見を聞いて記事にする場合なども同じだろう。これに対してノンフィクションやスクープ報道などでは、足を使った地道な取材を継続して行うことで「事実」に基づく「批判」を実現する。この場合は収集される情報も多くなるので継続的な情報管理が必要だ。要求インタビューも継続的に要求を管理することが必要になる。

インタビューの分類フレームワークを図1に示す。インタビューに先立って、どのようなインタビューを行うのかについて、このフレームワークを用いて検討しておくことで、インタビュに必要な準備ができると思われる。


図1 インタビューの分類フレームワーク

表1にいくつかのインタビューをこのフレームワークを用いて比較した結果を示す。

表1 インタビューの比較

インタビューのプロセス

一般的なインタビュー・プロセスを図2に示す。インタビューには、次の4つの基本的なプロセスがある。


図2 一般的なインタビュー・プロセス
  • (1)関連資料から分野知識を収集して質問のための課題を準備する
  • (2)課題について質問する。このとき課題の重要性に応じて質問順序を制御する
  • (3)事実を分析する。収集した事実と課題の因果関係を分析する
  • (4)事実を報告する。収集した事実に基づいてある観点から報告をまとめる

このうち1と3は、課題や事実を聞き手が理解し分析するプロセスである。これに対して2と4は聞き手が理解した内容や課題に基づいて、事実を収集したり、報告することによって話しての意見を聞くプロセスである。

このインタビュー・プロセスを良く見ると、実はデカルトの方法序説で述べられている科学的な問題分析の方法[8]とよく似ていることに気づく。

【明証】
即断と偏見を避けて自分が明証的に真であると認められることだけを受け入れる
【分割】
問題を解決可能なできるだけ小さな部分に分割する
【統合】
最も単純な要素から段階的に複雑な問題に、順序付けて統合していく
【枚挙】
全体的に課題を枚挙し抜けがないことを確認する

デカルトのこの4つの規則は自分の頭の中で、論理的に問題を証明するための方法であるが、インタビューにも適用できる考え方である。たとえば、明証を課題の質問、分割を課題の準備、統合を事実の報告、枚挙を事実の分析に対応付けてみてはどうであろうか?もちろん、この4つの方法を用いて収集した事実を分析することもできる。

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第59回以前は要求工学目次をご覧下さい。



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