NTTグループのソリューションガイド

ICTソリューション総合誌 月刊ビジネスコミュニケーション

ビジネスコミュニケーション
第17回:ゴール分析 応用編
NTTデータ 技術開発本部 副本部長 山本修一郎
NTTデータ 
技術開発本部
副本部長 
山本修一郎

チェックランドの形式システムモデル

概念モデルの妥当性を検証するために、チェックランドの形式システムモデルを利用できる。まず形式システムモデルの構造を図5に示そう。

図5 チェックランドの形式システムモデルの構造
図5 チェックランドの形式システムモデルの構造

(1)目標

人間活動システムの存在理由を記述する。目的を明確化することで具体的な変換を定義できる。

(2)結合性

活動間に存在する論理的な依存関係を記述する。これにより活動間の順序や情報の流れを明確化できる。

(3)パフォーマンス尺度

目的の達成度を測定するための尺度である。この尺度に基づいて活動の達成度を改善する。

(4)監視制御機構

パフォーマンス尺度により情報を収集し制御活動を実施する。制御活動により、活動内容のパフォーマンスを改善する。

(5)意思決定手続き

監視制御機構により指定された制御活動を実施するための、ある権限範囲内での意思決定手続きである。権限範囲外の活動については意思決定できない。

(6)境界

システムが活動できる権限範囲を定義する。意思決定権限があればシステム境界の内部である。逆に意思決定権限がなければシステム境界の外部である。

(7)資源

境界内で利用できる資源を記述する。システム境界内部には資源の確保、資源の利用が含まれる。

(8)階層性

システム境界にはある抽象度のレベルが対応する。「環境」はシステムの外部にあり、意思決定の対象外である。一方「構成要素」はシステムの内部だが、下位の階層で意思決定すればよくこのレベルで意思決定する必要はない。

【例】形式システムモデル分析

図3に示した「法令へのゴールグラフ作成方法に対する工学的活動の概念モデル」に対して形式システムの分析結果を次に示す。

(1)目標

活動A1でシステムの目的を定義している。

(2)結合性

活動A1~A6間に存在する依存関係の妥当性を確認する。ここで活動間の順序や情報の流れに問題がないことを確認する。

(3)パフォーマンス尺度

活動A6でパフォーマンス尺度に基づいて活動の達成度評価し制御活動を実施することでパフォーマンスを改善できる。

(4)監視制御機構

活動A6でパフォーマンス尺度に基づく情報を収集し制御活動を実施できる。

(5)意思決定手続き

活動A6の監視制御機構により意思決定手続きを持つことができる。

(6)境界

システムが活動できる権限範囲A1~A6について問題がないことを確認する。

(7)資源

境界内で利用できる資源についての明確な記述はない。しかし活動A1~A6の中で資源の確保、資源の利用が含まれると考えられる。

(8)階層性

図3では階層性を省略しているが、各活動をさらに詳細化していくことで階層性を定義できる。


今回はチェックランドのソフトシステム方法論の基礎となる「システム概念」について紹介した。基本定義、CATOWOE分析、概念モデルの基本的な構造に関してクラス図を用いて現代的な観点から整理することによりポイントをまとめた。また、基本定義と概念モデルをCATWOE分析とチェックランドの形式システムモデルの条件により、検証する手法についても紹介した。

次回はチェックランドのSSMの手順について紹介する予定である。

参考文献

前へ  1  2  3 
第59回以前は要求工学目次をご覧下さい。



会社概要 NTT ソリューション 広告募集 ページ先頭へ
Copyright:(C) 2000-2017 BUSINESS COMMUNICATION All Rights Reserved. ※本サイトの掲載記事、コンテンツ等の無断転載を禁じます。