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第30回:特性要因図とゴール思考分析 NTTデータ 技術開発本部 副本部長 山本修一郎

(株)NTTデータ 技術開発本部 システム科学研究所 所長 工学博士 山本修一郎

NFRフレームワークの構成要素

非機能要求を表現する基本単位がソフトゴールである。ソフトゴールには表2に示すように、次の3種類がある。ソフトゴールと相互依存関係はソフトゴール依存関係グラフ(SIG,Softgoal Interdependency Graph)を用いて表現する。

表2 ソフトゴール依存グラフ(SIG)図のゴール
表2 ソフトゴール依存グラフ(SIG)図のゴール
・NFRソフトゴール:
満足化の対象となる非機能要求を表現する。
・操作ソフトゴール:
満足化を達成する技術を表現する。操作ソフトゴールを対応付けることを操作化という。操作ソフトゴールが機能ゴールに対応付けられる。
・理由ソフトゴール:
意志決定や相互依存関係の根拠を表現する。

またソフトゴールを定義する場合、優先順位とNFR型名と話題名を次のようにして記述する。

優先順位記号 NFR型名[話題]{優先順位}

ここで、優先順位がcriticalの場合、優先順位記号!を付ける。

たとえば、次のようにして記述する。ここで、会員の属性としての個人情報を記号「.」を用いて記述している。

!信頼性[会員.個人情報]{critical}

ソフトゴール間の関係には洗練関係と貢献関係がある。

洗練関係(Refinements)

親ソフトゴールをサブゴールとしての子ソフトゴールに展開することを表す。洗練関係には次の3種類がある。

・分解(Decomposition)関係

同じ種類のソフトゴールに分解する。つまりNFRソフトゴール分解、操作ソフトゴール分解、理由ソフトゴール分解がある。

・操作(Operationalization)関係

NFRソフトゴールを操作ソフトゴールに対応付ける。

・理由(Argumentation)関係

対象とするソフトゴールが必要となる理由をソフトゴールに対応付ける。

貢献関係(Contributions)

親ソフトゴールの満足化に子ソフトゴールが貢献することを表す。AND関係とOR関係もSIGでは貢献関係であると考える。

SIGにおける関係の構成要素を表3にまとめる。

表3 ソフトゴール依存グラフ(SIG)図の関係
表3 ソフトゴール依存グラフ(SIG)図の関係

人馬一体に対するSIGの記述例

NFRフレームワークを用いて「人馬一体」特性要因図を記述した例を図4に示す。

図4 NFRフレームワークによる記述例(クリックで拡大)
図4 NFRフレームワークによる記述例
(クリックで拡大)

主なポイントを列挙すると次のようになる。

ソフトゴール名

NFRソフトゴールでは、何についてのソフトゴールなのかを「話題」で明記する必要があるので、ここでは話題として[ロードスター]を用いた。

AND関係

大骨から中骨、中骨から小骨への展開に対する関係は、すべて人馬一体を実現する上で必要な課題を導いていると考えられるので、AND分解とした。

話題の構成要素

ロードスターの構成要素として、デザイン処理、全体レイアウト、パワープラントおよびシャーシなどがあると考えて、[ロードスター.全体レイアウト]などとした。

また、居住空間、乗降空間、視界空間などを全体レイアウトの構成要素と考えて、[ロードスター.全体レイアウト.乗降空間]などの話題として詳細化した。

理由ソフトゴール

「あえて狭い居住空間」「スポーツカーとしての乗降性」「運転席からの視界検討」などは意志決定に関する制約条件を与えていると考えることにより、それぞれ居住空間、乗降空間、視界空間に対する理由ソフトゴールとした。

操作ソフトゴール

詳細な記述が入手できなかったので、今回は操作ソフトゴールの内容は省略した。

このように、NFRフレームワークを用いることで、特性要因図よりも論理的な分析が可能になることが分かる。

■参考文献
  • [1] 石井康雄、ソフトウェアの検査と品質保証、日科技連、1986
  • [2]野中郁次郎、勝見明著、イノベーションの作法-リーダーに学ぶ革新の人間学、日経新聞出版社、2007
  • [3]ALL-NEW MAZDA MX-5(日本名:マツダ ロードスター)
    http://www.media.mazda.com/product_info/jn/index1_j.html
  • [4]L. Chung, B. Nixon, E. Yu, and J. Mylopoulos. Non- Functional Requirements in Software Engineering. Academic Publishers, 1999.
  • [5] John Mylopoulos, Lawrence Chung, and Eric Yu, From Object-Oriented to Goal-Oriented Requirements Analysis, COMMUNICATIONS OF THE ACM, Vol. 42, No. 1, pp.31-37, 1999.
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第59回以前は要求工学目次をご覧下さい。


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