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ICTソリューション総合誌 月刊ビジネスコミュニケーション

ビジネスコミュニケーション
第32回:i*フレームワークの危険な曲がり角 NTTデータ 技術開発本部 副本部長 山本修一郎

(株)NTTデータ 技術開発本部 システム科学研究所 所長 工学博士 山本修一郎

デペンダム関係の整理

i*フレームワークではアクタ間の依存関係を分析するのだが、実際にはデペンダム間の関係で迷うことが多いものだ。i*フレームワークにおける関係には表2に示すように次の4種がある。

依存関係

受益者から提供者に対する意図や期待に関する依存関係。

相互依存関係

下位に対する洗練関係、上位に対する貢献関係。NFRフレームワークにおけるソフトゴール間の関係と同様である。

手段目的関係

達成すべき目的としてのソフトゴールやゴールと、そのために必要となる選択可能な手段としてのゴールやタスクとの関係。

タスク分解関係

タスクを、ソフトゴール、ゴール、タスク、資源に分解する関係。

表2 i*関係の整理
表2 i*関係の整理

デペンダム間で使うことのできる関係は貢献関係、目的手段関係、タスク分解関係の3つだ。この3種の関係をデペンダム間のどのような親子関係で使うことができるかを整理すると表3のようになる。

表3 デペンダム間の可能な関係
表3 デペンダム間の可能な関係

たとえば、ソフトゴールの子もソフトゴールにすることができるのは貢献関係と目的手段関係だけである。同様にゴールを親とした場合、子もゴールにすることができるのは目的手段関係だけだ。タスクが親の場合、タスク分解関係しか用いることはできない。

注の1)で示したように、ゴールをソフトゴールで洗練することはない。また注2)3)に示したように、資源が親になることはないし、(※)資源がタスク以外の親になることはないし、資源がソフトゴールやゴールに貢献したりその達成手段になることもない。

(※:2009/9/20 この部分の記述、および表3を訂正しました。編集部)

依存関係と他の関係

アクタの依存関係は図7に示すようにタスク分解関係や目的手段関係と同じような働きを持つ。つまり他のアクタから入ってくる依存関係によって目的手段関係と同じことを表現できる。また他のアクタへ出て行く依存関係を使うことでタスク分解関係と同じことを表現できる。こういうことを理解して使うのは便利なことだが、逆に知らないと分析する上では混乱する原因になるかもしれない。

図7 アクタ依存関係を用いた目的手段関係ならびにタスク分解関係
図7 アクタ依存関係を用いた目的手段関係ならびにタスク分解関係

今回はi*フレームワークを利用する上での図の書き方のポイントとUMLの図式と対比することでSD図やSR図の役割を紹介した。


ところで、2007年5月15日に「ゴール指向による!!システム要求管理」を出版した[4]。この本ではゴール指向の基本概念だけでなく、本稿でも紹介したi*フレームワークやNFRフレームワークなど実務に役立つと思われる主要な手法を解説したので興味のある方はぜひごらん頂きたい。

■参考文献
第59回以前は要求工学目次をご覧下さい。


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