グローバルIoTソリューションとパートナーシップ

前号まで、日本国内でのIoT導入に対する課題を解決する取組みを紹介してきたが、本稿では、日本以外で企業がIoTを導入する際の課題を解決する取組みを紹介する。

企業がIoTをグローバル展開する際に、国によって端末の認証、回線利用環境や法規制が異なるなど、国内展開とは事情が異なるさまざまな課題に直面し、苦労していることがこれまでの取組みで分かっている。

これらに対し、グローバルでのIoTサービス導入が円滑にできるよう、海外展開時に想定される、お客さまの困りごとに対する解決項目をメニュー化したグローバルIoTソリューションのGlobiot(グロビオ)TMというマネージドサービスを2018年7月より提供している(本誌2018年9月号掲載)(図1)。提供開始以降、多数のお客さまから引き合いがあり、順次展開中である。

図1 Globiot(グロビオ)TMと海外パートナーシップ

なお、本サービスを提供するにあたっては、海外パートナーとの連携は必要不可欠であり、移動通信キャリアやSIパートナー等との提携を進めている。本稿では、その中で海外の移動通信キャリアとのパートナーシップについて説明する。

海外の移動通信キャリアとの連携

(1)IoT World Alliance

ドコモは、2012年から通信回線をお客さまのシステムと連携し、一元管理可能なdocomo IoT回線管理プラットフォームを提供している。ドコモは、Cisco Jasper社のIoT接続管理プラットフォームを採用しており、同プラットフォームを採用する30以上の移動通信キャリアの中から10キャリア間で「IoT World Alliance」を締結している。IoT World Allianceには、ドコモのほか、Telefonica(スペイン)、KPN(オランダ)、VimpelCom(ロシア)などが加盟している。IoT World Allianceは、現地サポートの提供、一括契約や請求の対応、技術協力などの連携を目的としたもので、eSIM※1相互接続の仕組みも加盟キャリアとの間で実現しており、eSIMを運用する仕組みを構築しているところである。

また、IoT World Allianceには加盟していないが、Cisco Jasper社のIoT接続管理プラットフォームを採用している、AT&T(アメリカ)、Vivo(ブラジル)、Orange(フランス)などは、お客さまのご要望により個別協議でサービス提供可能なパートナーである(図2)。

図2 海外通信キャリアパートナーのカバーエリア(ローミング提供エリアは含まない)2018年12月時点

(2)SCFA

SCFAは、「Strategic Cooperation Framework Agreement」の略で、2011年からドコモ、中国China Mobile Communications Group、および韓国KT Corporationの3社間の事業協力の枠組みで進めており、IoTを含めて幅広い分野において3社で協業している。

IoT分野については、サービスの共同検討や新技術の共同検証などの事業協力活動を進めている。例えば、中国国内で日系企業によるコネクテッドサービスの提供ニーズがある場合、中国国外からのサービス参入については、中国の政策に基づく規制があり、現地SIMの利用が必要となる。そのため製造時からSIMを差し替えずに現地の回線に切り替えることができるeSIMの活用要望がある。これに対し、ドコモとチャイナモバイルが連携し、eSIMによる日本(ドコモ)から中国(チャイナモバイル)への回線切り替えを可能にしたサービスを提供している(図3)。

図3 ドコモーチャイナモバイルによるeSIMソリューション

(3)ドコモ・アジアIoTプログラム

日系企業は、アジア地域への拠点進出の機会が多いことから、ドコモもアジア地域を中心としたGlobiotの展開を早急に強化する必要があった。これにより、アジア地域での移動通信キャリアと共にドコモのリードで「ドコモ・アジアIoTプログラム(AIP)」を2018年10月に立ち上げた。ドコモは本プログラムを通じてGlobiotの重要なメニューである、現地回線提供、現地のデバイス認証・規制調査、現地サポートなどのメニューを強化し、ソリューションの拡充を図る。また、本プログラムに参加する各移動通信キャリアは、日本やアジア市場のニーズをいち早く入手し、さらなる顧客獲得をめざすことができるようになる。

立ち上げ時には、15の国・地域から移動通信キャリアが参加を表明し、中には1つの国から複数のキャリアが参加するケースもあった。これにより、アジア地域での展開を検討している日系企業は、Globiotを通じ、進出予定国のIoT導入について、複数の移動通信キャリアの比較検討、スピーディな現地情報入手、回線調達などが可能になる。

本プログラムに参加する移動通信キャリアの国・地域名(2018年10月末時点)は、インド、インドネシア、オーストラリア、韓国、カンボジア、シンガポール、スリランカ、タイ、台湾、ネパール、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、香港、マレーシアとなる(図4)。

図4 ドコモ・アジアIoTプログラム(AIP)に参加する 移動通信キャリアの国・地域

これ以外にもアジアにおけるConexusアライアンスへの加盟やローミングパートナー、そして海外のSIパートナーとの個別協業といったパートナーシップを基盤に、Globiotを通じてグローバルIoTに関する総合的なソリューションをお客さまに提供拡大していく。

【用語解説】

※1 eSIM:「Embedded Subscriber Identity Module」(組み込みSIM)の略。SIMを抜き差しすることなく、リモート操作で通信キャリアの切り替えが可能。

<各プレスリリースの内容>

・IoT World Alliance:https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2012/07/10_01.html

・SCFA:https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/notice/2016/10/14_00.html

・ドコモ・アジアIoTプログラム:https://www.nttdocomo.co.jp/binary/pdf/info/news_release/topics_181101_01.pdf

<IoT活用のことなら下記へ>

https://www.nttdocomo.co.jp/biz/special/iot/