Society5.0におけるG空間情報のプラットフォーム化における期待

政府において、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させ、IoT/AIを駆使したシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する新たな社会としてSociety5.0を提唱し、実現に向け、SIP(戦略イノベーションプログラム)など様々な研究開発にかかる施策が実施されているところである。Society5.0の社会においては、様々なデータを融合させ、新たな価値が産み出されていくことを想定している。中でも様々なデータを検索・整理するために共通的な要素として、G空間情報が果たす役割は大きい。具体的には、インフラ維持管理・交通・防災など異なる分野の情報を組み合わせるためには、住所やランドマークなどを含む位置情報やデータが発生した時刻情報は情報を紐付けるキーとなってくる。また、その位置情報を共通的に紐付けるための基盤となるプラットフォームも重要な構成要素となってくる。

位置情報を組み合わせることにより生まれる付加価値は、すでにGoogle Map等を活用した新たなサービスが多く提供されており、その有用性は主にto Cの領域において、広く認知されているところである。こうした仕組みをデータの信頼性や鮮度を保証されたデータとして利用できることで、to Bやto Gの中でコアとなる業務での効率化や付加価値を高められることが期待されているところである。

日本国内においては、政府や自治体等が保有するオープンデータを中心にその流通を促進させるG空間情報センターが2016年に設立され官民データのオープン化におけるハブとして位置付けられている。G空間情報センターでは、災害時に通行可能な情報の提供や航空写真の提供といった国民生活を支える情報から、屋内地図情報や歩行者ネットワークといった新たな情報の提供や、地理空間情報の先進事例の紹介といった情報発信が積極的に行われているところである。

図1 G空間情報センターが提供する機能 (出典:G空間情報センターHP)

3次元地図プラットフォーム化に向けた取り組み

自動運転を支えるダイナミックマップにおける高精度道路3次元地図や建設・測量分野におけるBIM/CIMといった3次元モデルの活用など、様々な分野で3次元データの有効活用が進んでいる。当社ではSIPにおける取り組みとして3次元地図共通PFの仕様検討にも取り組んでいる。例えば、地形データや建物データを組み合わせドローンの運行計画・管理に活用することや、自動走行向けに計測された道路3次元データの道路インフラの点検データとしての活用、建物の3次元データ(BIM)から屋内地図やAEDの位置検索を活用することなど、情報を掛け合わせることでのユースケースから、その利活用を支えるため、情報流通に向けた検索や取得にかかるAPI提供などの仕組みの構築に向け検討を進めている。

図2 3次元地図共通プラットフォームの検討(出典:国立情報学研究所)

衛星画像活用におけるプラットフォームに向けた取り組み

衛星画像サービスも従来の撮影された画像の提供から、ICTを活用し大量の画像情報から生み出される情報を提供するプラットフォームサービスへサービスモデルが大きく変わっている領域である。

当社では大量の衛星画像から、AIを活用した自動処理技術を開発し、全世界を対象とした高精度3次元地形データであるAW3Dを提供しており、そのデータの活用範囲は国内外に拡大を続けているところである。

AW3Dのプロダクト生成では、DigitalGlobe社が提供する開発プラットフォームであるGBDXを活用している。これまでは衛星画像の提供を撮影した単位で受け自身の環境にてデータ処理を行っていたが、GBDXでは、クラウド上に保管されている画像データの活用が可能となり、画像処理に多くの枚数の画像を活用できるようになり、より付加価値性の高いプロダクトを生成することが可能となってきている。

日本国内においても、「政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利用環境整備事業」の取り組みが推進されており、政府が保有している大量の衛星データを広く情報提供事業者に開放するとともに、そのデータ解析をサポートする環境を用意することで、新たなサービスを生み出す環境作りが進んでいる。

G空間情報の活用は高度化する社会システムの鍵に

交通分野は、プラットフォーム化の流れが著しい分野である。鉄道・バスの最適ルート案内などのナビゲーションサービスや、Uber、Lyftといった新たなシェアリングサービスも浸透してきているところであるが、今後は、高度にクルマがつながるConnected Carの活用や、複数の交通手段を統合して活用することを可能とするMaaS(Mobility as a Service)への取り組みなど、より一層プラットフォーム化したサービスが出てくることであろう。また、歩行者向けのナビゲーションや人流や混雑情報の把握や予測をもとに最適化された環境のもと、さらに円滑な移動支援が図られるものと考えられる。

海外では、欧州自動車3社の地図子会社であるHERE社は、位置情報基盤であるOpen Location Platformを提供し、グローバルな地図基盤のもと交通情報を中心とする位置情報の活用を軸としたプラットフォームサービスにより、多くの企業と連携した取り組みを始めているところでもある。

このような先進技術を活用し高度化される都市や社会は、「SmartCity」 とも表される。私たちは、これまで培った空間・交通分野の知見とAI&IoTを中心とする最先端のIT技術を組合せたG空間情報基盤の構築やサービスを通じ、人々の生活を豊かに、また、質を向上できるような「SmartCity」の実現に、これからも貢献していきたい。

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清水 邦彦 shimizuknh@nttdata.co.jp

礒 尚樹 ison@nttdata.co.jp