6. 企業のDXを支援するサービスを目指して
サービスクリエーション本部長 三澤 響
これまでの連載では、ビジネスプロセスサポートサービス(以下、BPaaS)」をご利用になる企業を取り巻く環境や課題、BPaaSを構成する「セールスサポート」「オペレーションサポート」の機能や課題解決事例を紹介した。最終回の今回はNTTPCコミュニケーションズ(以下、NTTPC)が目指している将来像を紹介する。
第1回から第5回までは、サブスクリプション時代における企業を取り巻く環境や課題、BPaaSを構成する「セールスサポート」「オペレーションサポート」の機能や課題解決事例を紹介した。
最終回の今回は、あらためて最近の動向を整理しつつ、NTTPCが考えるBPaaS将来像を紹介する。
NTTPCの取り組み
NTTPCは、主に、国内の中堅中小企業のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)支援を目的に、全国のパートナーさまを通じて、ネットワーク、セキュリティ、クラウドを中心としたICTサービスを提供している。
NTTPCの事業において、BPaaSは、パートナーさまが自社商材とNTTPCのICTサービスを組み合わせてサブスクリプションビジネスを効率的に展開するための仕組みとして位置付けられている。
現在、NTTPCでは、すべてのICTサービスについて、BPaaSとして標準化された機能の提供を推進している。それは、エンドユーザーさま、パートナーさまがDXの実現に向けて必要な機能であると考えているからである。
デジタルトランスフォーメーションの実現
今年に入り、多くの企業において、DXの取り組みが急務になっている。データマネジメントを軸に、社内の業務プロセスやシステムを変革し、新しい競争価値を生み出すことをDXと定義するならば、内部に残るレガシーシステムや業務プロセスを早急に改革することが喫緊の課題となる。しかしながら、表計算ソフトなど複数のオフィスツールを複雑に使いこなしている業務プロセスや、ドキュメントが存在せずにブラックボックス化してしまっているレガシーシステムを見直すことは、どの企業にとっても大変な重労働である。
これら改革の必要性は充分に理解しながらも、企業がそこに取り組めていない要因の一つが「人手不足」にある。現行業務にリソースが張り付き、改革を進める人員を捻出できないために、古いプロセスやシステムの見直しが進まない。そして、社員が大量の表計算ソフトを駆使する業務プロセスが残っているという現状が、多くの企業に共通する風景と思う。
サブスクリプション時代の到来
この混沌とした状況を更に複雑にしているのが、サブスクリプション時代の到来である。最近になり、高級車やビジネススーツの定額利用サービスが報道発表されるなど、経営安定化や顧客経験価値の拡大を目的に、多くの企業がサブスクリプションビジネスに進出している。既存ビジネスの運用だけでも、多くの手作業と時間を掛けているのに、新しいビジネスモデルへの変換といった課題が加わり、解決すべき問題は更に複雑化する。
ICTサービスのデータ管理
こうした複雑な状況を解決していく一助にすべく、ICTサービスのデータ管理を効率的に行える仕組みを提供し、パートナーさまやエンドユーザーさまのDX推進を支援するのが、NTTPCのBPaaSが果たすべき役割だと考える。これまで、NTTPCの多くのサービスでは、オフィスツールで作成した申込書を利用し、紙媒体に印刷されたサービス情報を郵送し、故障などの問い合わせも電話が中心であった。エンドユーザーさま、パートナーさま、NTTPCのそれぞれが人手を介した業務を行い、表計算ソフトでのデータ管理を行っていた。こうした業務を、NTTPCでは、データをシステムで管理・運用し、プロセスを自動化できるよう転換を図っている。それは、まさに、エンドユーザーさま、パートナーさま、NTTPCの3者のDXを推進するための取り組みである。
以降は、NTTPCのBPaaSの具体的取り組みについて紹介する。
①すべてのサービスに「BPaaS」
NTTPCでは、今回の連載で第2回目に紹介した「セールスサポート」や、第3回目に紹介した「オペレーションサポート」の機能を、NTTPCが提供する、すべてのサービスに実装する予定である。現時点では、SD-WAN、モバイル、光回線、セキュリティ、Office365等の一部サービスのみで提供しているが、順次、他サービスへの展開を予定している。
NTTPCのサービスは、APIを実装しており、パートナーさまのシステムから情報連携できるよう開発されている。また、システム開発においては、新たな要件を素早くビジネスに反映できるようアジャイル開発の手法を用いている。
②パートナーさま商材のサブスクリプション化
新たにサブスクリプションビジネスに取り組みたいパートナーさまのニーズにこたえるため、BPaaSの1つとして、「パートナー商材対応システム」をサービス提供する予定である。
「パートナー商材対応システム」は、「セールスサポート」や「オペレーションサポート」の標準機能をパートナーさまが保有する商材で利用できるシステムである。
例えば、通信機器販売等の売り切り型ビジネスを主力事業としていた企業がサブスクリプションモデルでの販売から請求までの業務を早期に立ち上げ、運営できるようになる。
③エンドユーザーさま向け請求機能の提供
パートナーさまからのニーズが高い機能に、エンドユーザーさまへの一元請求機能がある。この機能は、毎月のエンドユーザーさまへの請求金額を自動計算し、決済代行会社とシステム連携することで、クレジットカード、口座振替や紙の請求書による請求/入金確認業務をパートナーさまに代わって代行する仕組みである。
BPaaSの将来像
BPaaSはICTサービス管理に留まらず、マーケティングにも活用していくことが可能だ。CRMと組み合わせることで、パートナーさまは、BPaaSの継続利用により、自社の顧客情報と購買情報の関連性を可視化できるようになる。
これらの蓄積データの分析結果をBPaaSの「セールスサポート」や「オペレーションサポート」の機能へフィードバックすることで、デジタルマーケティングツールと連携し、販売活動の自動化が進んでいくであろう。更にBPaaSを利用する企業間での取引が拡大することで、他社の商材を自社の顧客へ販売するなど、新たな共創ビジネスが生まれやすくなる可能性がある。
このように、サブスクリプションビジネスの拡大、労働人口減少による人手不足を背景にビジネスプロセスサポートサービスは、更なる注目を浴びることになるであろう。
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