はじめに

NTTドコモ法人ビジネス戦略部長として、多くの企業等と日々コミュニケーションしている。また前職では人事部の立場から「働き方改革」に携わってきたので、この2つの経験をもとに「働き方改革の現状」を解説した上で「お客様の導入事例」を紹介するとともに、「ドコモの取り組み」にも触れていく。

「働き方改革」の現状

「働き方改革」は現在、多くの経営者や社員に注目されている。先進的な取り組みを行い成功した企業は「働きやすい職場」や「ワークライフバランスを重視する会社」などの評価を得て、企業ブランドも向上する傾向にある。

一方、大企業の「働き方改革」のしわ寄せで多くの中小企業が大企業から短期間での納期を迫られるなどの理由により、長時間労働につながっているとの調査結果も公表されている。

「働き方改革」の目的

「働き方改革」には、主に2つの視点がある。2017年OECD調査によると日本の1人当たりの労働生産性が加盟36カ国中21位という低い水準にあることからも分かるように、労働生産性の向上という企業の視点と、長時間労働の是正や多様な働き方ができる環境整備、同一労働同一賃金といった個人の視点となる。

「働き方改革関連法案」について

「働き方改革」は現政権における重要施策と位置付けられ、2018年6月に「働き方改革関連法案」が成立した。

人口減少という構造的な問題から起こる労働力不足で、日本の生産年齢人口(15〜64歳)は1995年をピークに減少し続けており、今後の経済成長への不安要因として、労働参加率の向上が喫緊の課題となっている。加えて、日本の労働生産性は前述した通り、国際的に低い水準が続いており、投資やイノベーションを通じた生産性の向上が求められている。

とりわけ、2030年には生産年齢人口が2017年より約700万人減少することが予想されるため、年齢・性別等を問わずに働きやすい社会をつくり労働参加率を向上させるために、「働き方改革関連法案」が2019年4月より順次施行されている。

法律の改正で特に注意するべき規制は、「時間外労働の上限規制」である。従来は臨時的な特別な事情がある場合で労使の合意があれば上限なく時間外労働可能になっていた特別条項に労働基準法による規制が導入された。

具体的には、「時間外労働の上限規制」は従来、労働基準法で1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけない(32条)一方、36条に規定されている「特別条項付36協定」により実質的に年間6ヶ月までは時間外労働の上限がなくなっていた。今回の改正により、特別条項が適用された場合の時間外労働についても年720時間以内、月100時間未満、2〜6ヶ月の平均80時間以内という明確な上限が設けられた。

この法律の施行は、大手企業が2019年4月1日、中小企業が2020年4月1日となり、違反した場合の罰則は内容によって30万円以下の罰金または6ヶ月以内の懲役となっている。

企業と個人、2つの視点から考えた「働き方改革」

企業の視点から考えたとき、「働き方改革関連法案」の施行をきっかけに、業務の効率化を図り適材適所により生産性の向上を図るとともに、労働時間の透明性・適正化を含めて積極的なICT化を促進するべきだろう。

スケジューラや勤怠管理アプリケーションなどのICTソリューション導入により、法令遵守を含めた直接的な効果をもたらすと言える。

個人の視点から考えると、多様な働き方ができる環境整備として、子育て世代の支援や介護離職の防止、在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィスなどがある。導入企業はまだ少ないが、モバイルワーク(89.3%)、サテライトオフィス(83.6%)、在宅勤務(77.7%)の順番で効果実感が高くなっている(図1)。

図1 商工中金「中小企業の働き方改革」に関する調査(2017年1月)

※「プラス効果が十分にある」、「ややプラス効果がある」の合計(商工中金「中小企業の働き方改革」に関する調査〈2017年1月〉)。

グループウエアやFMCサービス、Web会議などのICTソリューション導入により、多様な働き方の環境整備を推進できるだろう。

「モバイルワーク」の活用事例

今回は効果実感が最も高い「モバイルワーク」の活用事例として2つのケースを紹介する。1つ目は沖縄県那覇市に本店を置く沖縄銀行である。お客様の課題は、外出先からも社内外とのコミュニケーションをセキュアな環境で活性化したいということだった。

これに対して、NTTドコモのクラウド電話帳を搭載した高機能FMCサービス「オフィスリンク+」を提案し、生産性が向上した。

具体的には、導入前は外出中の担当者に電話が来ると掛け直しや帰社後の折り返し電話が必要だったところ、導入後は外出先でも転送を含めて電話を受けることが可能となりスピーディな対応を実現した。加えて、隙間時間の活用と業務の効率化を実現しワークスタイルも変化した。

2つ目は東京都板橋区に本社を置く中央軒煎餅である。お客様のニーズは効率よく営業の情報を収集してかつ共有し、適切でスピーディな戦略を立てたいということだった。

これに対して、統合型グループウエアである「G Suite」を導入し迅速な情報共有を図り戦略に反映させた。

具体的には、導入前は日報作成のため担当者は毎日帰社する必要があり時間と手順に無駄があったところ、導入後は外出先からいつでも日報登録できコメントや写真も活用した生きた情報を共有することができるようになった。「G Suite」を働き方改革の中心に据えることで、経営の可視化・効率化を実現した。

「モバイルデバイス(携帯電話)」の特徴について

最後に「モバイルデバイス(携帯電話)」の特徴を解説する。

「モバイルデバイス(携帯電話)」の働き方と切り離せない特徴として、「24時間起動」や「幅広いエリアカバー率」、「インターネットに常時接続」がある。「働き方改革」の推進に向けては、「時間」、「場所」、「情報」が大きなポイントとなるので、モバイルデバイス(携帯電話)の活用がとても重要である(図2)。

図2 モバイルデバイスの特徴

次回は「ドコモの取り組み」を中心に紹介していく。

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