IoTネットワークの動向

ドコモのIoT向け回線提供の歴史は、20年前に遡る。1999年頃に第2世代通信サービス(PDC、DoPa※1)によって、商用車の車両管理、自動販売機のオンライン管理、そして建設機械の遠隔管理等の用途で利用が始まった。その後、2001年から第3世代通信サービス(FOMA)、2010年からLTE(Xi)サービスが始まると、回線の高速・大容量化に伴って画像や映像が扱えるようになり、ユースケースが拡がっていった。一方で、小容量・省電力化という低速度で電池が長持ちして欲しいという要望が出てきた。この要望に対しては、LPWA(Low Power Wide Area)という新たなネットワーク技術が標準化されて登場し、ドコモもLTE Cat.1、LTE-M、NB-IoT など、小容量・省電力用途に対応するセルラーLPWAを提供開始した。また、非ライセンスバンドであるが特定エリアにおける低消費電力通信に対応するLoRa® SPN(Small Private Network)やLoRaWANTM、ウエアラブル機器などには、極低消費電力で、至近距離の無線通信を可能とするBLE(Blue tooth Low Energy)技術を使ったソリューションなど、個々のユースケースに応じて適材適所のIoTネットワークを用意している(図1)。

図1 適材適所のIoTネットワーク

セルラーLPWAネットワーク

セルラーLPWAの中でも、LTE Cat.1は、LTE開始当初に低コストチップ向けに標準化されたIoT向け規格で、他のLTEに比べてピークレートが制限され、eDRX技術※2を併せて用いることで省電力化も可能になる。東京ガス様、大阪ガス様のスマートメーター用回線として実証を重ねている。LTE-M(Cat.M1)は、LTE Cat.1よりも更に低コスト・低消費電力チップ向けに標準化されたIoT向け規格で、比較的小容量の通信で済むスマートメーターやセンサー監視での用途はもちろんのこと、低速で移動する人やレンタサイクル等のトラッカー用途での通信にも適しており、ドコモは2018年10月より提供している。また、NB-IoT(Cat.NB1)は、LTE-Mよりも更に低コストチップ向けに標準化されたIoT向け規格で、上り中心の低頻度小容量通信や固定設置のスマートメーターや河川等の水位監視等の用途に適しており、ドコモは2019年4月より提供を開始した。

IoTネットワークの拡大

IoT回線は、昨今のデジタルトランスフォーメーションの取組みとも連動して拡大傾向にある。ドコモのIoT契約者数だけをみても、7年間で契約者数は約4倍に伸びている(図2)。特に大きく伸びている市場は、電力・ガス・水道の遠隔メーター検針や機器の管理を含めたエネルギー関係、コネクテッドカーや修理、損害保険などのアフターマーケットも含めた自動車関係、そしてさまざまな産業機械をコネクテッド化していく市場である。

図2 ドコモの直近のIoT回線契約数推移

5Gによる、さらなる進化

ドコモは、2020年春に提供を予定している5Gの商用サービスに先立ち、2019年9月20日より5Gプレサービスをスタートする。5Gを活用して、協創によりさまざまな価値創造・社会的課題の解決につながるソリューションの創出をめざし、2017年5月から「5Gトライアルサイト」、2018年2月から「5Gオープンパートナープログラム」を開始し、2019年6月4日時点でトライアル件数は174件、パートナーの企業・団体数は2,700を超えた(図3)。さらに、5Gプレサービスに向けて、“ソリューション活用”と“ソリューションの具現化”を進めるために、2019年3月から全国5都市でパートナー向けの5G BUSINESS CAMPを開催し、さまざまな業界での活用が期待できるソリューションパッケージ事例を創出する予定である。

図3 協創による5G時代のサービス創出

高精度位置情報によるIoTビジネスの拡がり

IoTネットワークの進化や企業のIoT活用レベルの高度化にともない、IoT化された機器の位置を高精度で把握したいとするニーズが高まっている。例えば、建設機械や農業機械は、自動走行などで数センチ単位での位置精度が必要とされている。そこで、ドコモは国土地理院により全国に設置された約1,300局の電子基準点と、ドコモ独自固定局※3がGNSS※4から観測したデータとを位置補正情報配信サーバに集め、加工した高精度位置情報を携帯電話回線を通じて必要とする移動局※5に配信する、「GNSS位置補正情報配信基盤」を2019年10月1日から提供開始する予定である※6

本基盤については、2019年3月より技術検証を開始し、目標としていた約±2センチメートル以内の誤差に収束する測位精度が実現できることを確認した。そして、フラグシップパートナーとしてコマツ様にご利用いただき、建設機械のオペレーター支援システムであるマシンガイダンス技術への活用を共同で推進していく予定である。今後は、さまざまな業界での位置情報測位に関する課題に対して取組むことを検討していく。

革新的ICTを活用したデジタル化による新たな価値の創出

ドコモは、建設業界、製造業界、自動車・交通業界、自治体などが抱えるさまざまな課題に対して、5G技術、IoTソリューション、AI技術、そして高精度位置情報配信技術といった革新的なICTアセットと、約7800万のお客さまにご利用いただいている携帯電話ネットワークの仕組みから得られる情報アセットをベースとしたトータルソリューションの提供や、パートナーが保有するアセットを活用・融合したソリューションを提供することによって、5G時代に向けて新たな価値を創出していく(図4)。

図4 革新的ICTを活用したデジタル化による新たな価値の創出

今回をもって連載を終了させていただくが、引き続きドコモのIoTソリューションの取組みにご注目いただきたい。

【用語解説】

※1 DoPa:第2世代通信(PDC)方式ドコモパケット通信サービス。

※2 eDRX : extended Discontinuous Receptionの略。待ち受け中の間欠受信(DRX)周期を延ばし受信機の休止状態を長くすることで消費電力を削減する技術

※3 GNSSの観測データを受信するため、ドコモが独自で設置する固定局

※4 GNSS : Global Navigation Satellite Systemの略。GPS、準天頂衛星等の衛星測位システムの総称

※5 位置補正情報を受信する側

※6 報道発表 2019年5月28日

 https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2019/05/28_00.html

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