オムニチャネルの推進が生んだ落とし穴

  スマホやソーシャルメディアが生活へ浸透し、今や消費者は「いつでもオンライン」状態にある。ECやソーシャルメディアを使っている時だけでなく、例えば、店舗でもスマホアプリに届いたクーポンを利用したりするので、まさに「いつでもオンライン」といえる。

  オムニチャネルを跨ぐ顧客に相対するために、企業は、チャネル(Web/EC、スマホアプリ等)ごとに、またブランド(商品・サービス)ごとに、サイトを立上げ、顧客接点を増やしてきた。企業が抱えるブランド数は、多い時は数百以上にも上り、加えてブランドごとに複数のチャネルを作るので、顧客接点の数は相当なものになる。そして、これらのIDはバラバラに管理されていることが多いのが現状だ。結果、顧客は都度IDを登録しなければならず、再ログイン時にID、PWを忘れたりと混乱してしまう。また、企業側では、ECサイトで買物をした“田中さん”と、コールセンターに問合せしてきた“田中さん”が同じ人であるか分からず、適切なレコメンドができなかったり、経緯を十分に把握していない対応になったりする。オムニチャネル化の推進が、逆に顧客満足度の低下を招いているという事態が起こっている。

CIM(カスタマー・アイデンティティ・マネージメント)

 この課題を解決するソリューションが、CIM(カスタマー・アイデンティティ・マネージメント)だ。CIMでは、複数サイトやアプリのIDを統合し、顧客データを一元管理することで、オムニチャネルを跨り、複数のサービスを比較検討する顧客の“今の興味・関心”を把握することができる。CIMによって、顧客は、シングルサインオンが可能となり、ユーザーエクスペリエンスは飛躍的に向上する。企業にとっては、顧客の全体像が把握できるようになりレコメンドやターゲティングの精度が上がりLTV向上が期待できる。

 例えば、弊社のクライアントで音楽機器を扱う企業がある。以前は、サービスごとにサイトがありIDはバラバラに管理され、顧客像が断片的だと感じていた。CIMを導入しIDを統合することで、例えばある機器を購入した顧客は、その後いつ関連するソフトウエアを購入し、問い合わせを行い、新機種を買っているかといったことが、一つながりの情報になって見えるようになったという。

 弊社が提供するSAP Customer Data Cloud from GIGYA(GIGYA)はグローバルNo.1の導入実績を持つSaaS型のCIMだ。 GIGYAでは、CIMを成功裏に運用するために重要な3つの機能 − ①IDENTITY : 顧客ID統合と情報の一元管理、②CONSENT:個人情報保護法等、法規制への対応、③PROFILE:顧客データを活用するマーケティングプラットフォームとのデータ連係 − をワンストップで導入できる(図1)。

図1 GIGYAが提供する機能

① IDENTITY:

 ポリシーの異なる複数のサイト上で顧客に共通のログインIDを提供し、サイト間のシングルサインオンを実現する。「ポリシー」とは、例えばサイトAはメディアサイトなのでメールアドレスと氏名だけで会員登録が可能、サイトBはECサイトなので住所が必須のようなものだ。例えば“田中さん”がサイトAで会員登録した後にサイトBを訪問すると、「住所を追加で入力してください」とポップアップが表示され、これを登録するとログインできる、といったことが実現できる。またID連携の標準規格であるOIDC, SAMLにも対応しており、例えば親会社のIDでグループ企業のサービスに簡単に会員登録するというグループ連携も可能だ。

 また「ソーシャルログイン」や、顧客が興味を持つ事柄をタイムリーに収集する「プログレッシブ・プロファイリング」機能も提供しており、顧客のライフステージや興味の変化を捉えることができる。その結果IDENTITYを導入したクライアントでは、登録数やアクティブユーザーの増加が進んでいる。

② CONSENT:

 国によって個人情報保護法は異なり、またしばしば改訂が行われる。グローバルでビジネスをする企業はこれらへの対応が不可欠だ。有名なところでは厳しい罰則を持つヨーロッパのGDPRがある。GDPRに対応するためには、サービス利用規約等への顧客の「同意(consent)」を、同意の日時を含め監査できる状態で履歴管理する等の対応が必要である。企業が自力でこれらに対応していくには相当な投資と費用が必要になるところを、GIGYAではこれらをプラットフォーム機能として全てカバーしている。

③ PROFILE:

 顧客データを社内システムやデジタルマーケティングツールと連携する機能がPROFILEだ。GIGYAは主要なマーケティングツール(MA, EC, CMSなど)への「コネクタ」が用意され、また豊富なデータ連係機能を提供しており、バッチ処理を行うETL、リアルタイムでデータを連係するWebhook/APIも備えている(図2)。

図2 GIGYAのデータ連携機能

 GIGYA利用120社に行ったアンケート調査では、これらの機能により会員登録率が平均で33%改善、LTV(顧客のライフタイムバリュー)においては5倍になったという結果も報告されている。

オムニチャネル戦略の基盤としてのCIMに広がる期待

 企業がデジタルマーケティングを推進すると、これまで以上に顧客に紐づくデータが増えていく。

 例えば、ジムのフィットネスマシンはBluetoothで利用者のスマホと連携し、トレーニング記録を管理できるようになる。従来はパーソナルトレーナー経由でないと把握できなかった情報が自動的に顧客IDに紐付けられる。

 スマートフォンやIoTの進化により、ますます増える顧客データを、アクショナブルな形に整え、ビジネスプラットフォームにつなげていく「CIM:カスタマー・アイデンティティ・マネージメント」は、企業のオムニチャネル戦略の根幹を担うものとして今後の成長が期待されている。弊社では、テクノロジー支援にデータ活用支援を加え、クライアント企業の成功を支援していきたい。

<CIMのことなら下記へ>

https://www.nttcoms.com/service/GIGYA/