5Gとは?

 5G(第五世代移動通信方式)は、高速・大容量(20Gbps ※ 1)、低遅延( 無線区間遅延1ms 以下※ 1)、多数端末接続(100 万デバイス/km2 ※ 1)を目標とした次世代の移動通信方式である(図1)。移動通信システムの国際規格を策定する3GPP(3rd generation partnership project)において、5Gの最初の国際規格であるRelease 15が2018年6月に完成した。この規格に沿って、5Gは日本・アメリカ・韓国・中国を中心に世界中で2020年前後に商用化が想定されている。

※ 1 標準規格における目標値

図1 5Gが目指す世界

初回となる今回のレポートでは、①5Gの導入意義と②なぜ今5Gなのか、について紹介する。

5Gの導入意義

5Gを通信事業者が導入する意義は、2 階建て構造として理解するとわかりやすい。一階部分は5Gを導入する根本的な意義(価値)であり、5G導入の必然性を示している。二階部分は、5Gがもたらす付加価値であり、通信事業者にとって新たな収益源として期待する部分である(図2)。

図2 通信事業者にとって5Gを導入する意義

①一階部分:増え続けるトラフィックを効率的に収容

現在、多くの方々がスマートフォンを利用して、動画、音楽、Web、SNS等を日常的に楽しまれている。スマートフォンの普及と、そのうえで利用されるコンテンツの多様化とリッチ化の両面から、通信されるデータ量は増加の一途をたどっており、限られた周波数資源により収容するためには、無線技術の革新が必須である。さらに、トラフィックが増加したとしても設備投資額は、有限であり、その効率化はネットワーク全体で必須である。

オペレータは、このような増加しつづけるトラフィックを収容すべく設備増強のために毎年相当規模の設備投資をし続けている。従来技術である4G技術より、最新技術である5Gで設備投資する方が効率的に行うことができる。この設備投資の効率化こそが通信事業者において5Gを導入する根本的な意義である。移動通信システムの黎明期から今日に至るまでシステムの技術革新を牽引しつづけてきた根本的な意義そのものでもある。

さらに、5Gの設備導入の方法は、4Gを運用しながら必要なところに5Gを追加導入する重畳型システムとして設計されている。このため、5Gの導入にかかる設備投資は事業運営的にコントロールが可能なシステムである。

②二階部分:様々な業界との協創による新たなビジネス創造、社会課題解決

5Gにおいて大きく期待されている導入の意義として、高速・大容量、低遅延、多数端末接続といった5G特徴を生かして、ユーザの生活スタイルの変革と、様々な業界における新たなサービス・事業の創造、ビジネスの効率化、社会課題の解決がある。5Gサービス開始前からサービスや事業の最適化が大きく取り上げられていることは、4G以前と大きく状況が異なり、5Gへの期待の大きさの表れと言える。

また、これらのサービスや事業の最適化は、通信事業者が自ら提供する
だけではなく、その事業を営むビジネスパートナーの方々が主体となり、5Gを活用するいわゆるB2B2X型の協創ビジネスモデルにより実現され、あらゆる産業において利用可能であると考えられる。

この協創ビジネスモデルにより新たなサービスや産業が創造され、通信事業者とビジネスパートナー間で通信料だけではなく、レベニューシェアやプラットフォーム利用など新たなエコシステムが生まれることが期待されている。

なぜ今5Gなのか?

2020年前後に世界中で5Gのサービスの開始が見込まれると述べた。では、なぜ2020年に5Gなのか。これまでの移動通信を①技術的な革新の歴史と②社会価値的な歴史観から振り返り、考察してみる(図3)。

図3 技術とサービスの歴史

①技術革新からみた5G

移動通信サービスは、1979年12月3日に世界初のセルラ方式による移動通信システム(第1世代)として、当時の電電公社によりサービス開始されたのが始まりである。以来約40年、ドコモは多くの技術革新を実行し、モバイル市場を量的にも質的にも大きく発展・変革させることに貢献してきた。

技術的には、市場要求を満たすべく、ほぼ10年ごとに新たな技術世代を生んできた。1980年代のアナログによる第1世代を皮切りに、1990年代は初のデジタル方式による第2世代、2000年代はパケット通信を拡大した第3 世代、さらに今日の2010年代はLTE方式により、さらなる高速大容量通信を実現した第4 世代へと変革してきた。

この10年毎の技術革新により、自動車電話からスタートした移動通信システムが、携帯電話になり、さらにはスマートフォンによって、様々なコンテンツが手のひらの上で自由に閲覧できるまでに発展し、その利用者の増大とコンテンツのリッチ化の相乗効果として通信容量の爆発的な拡大が必要であり、その拡大は今後も当分の間は衰えることをしらない。

②社会価値的歴史観からみた5G

サービス面でその歴史を捉えると、ほぼ20年周期に我々の生活を大きく変えてきたと言える。第1・2世代の20年では、家やオフィスに“固定”された電話を、どこでも、誰でも使えるビジネスツールとして発展させた。当初の自動車電話はごく限られた人たちが利用するステータスシンボルだったが、携帯電話「ムーバ」の登場により、ビジネスマンが社内外で利用するビジネスツールへと変革し、ビジネス環境を大きく変えてきた。

第3・4世代の20年では、携帯電話をビジネスツールから生活に無くてはならないライフスタイルツールへと変革させた。1999年に開始したi モードにより、手のひらの上でe-mailやさまざまなコンテンツやサービスを利用できる世界を生み、携帯電話はビジネスマンのみならず、誰でもいつでもどこでも使える生活の必須ツールとなった。

また、スマートフォンがもたらした新たな変革は、通信市場のビジネスモデルをキャリアによる垂直統合からコンテンツを中心とした水平分業へと大きな変化をもたらした。

③なぜ今5Gなのか?

 このように移動通信システムの40年の過去の歴史を紐解くと、技術的な10年周期の変革と社会的インパクトを与える社会価値の変革としての20年周期があることがわかる。歴史は繰り返す、という言葉を信じるならば、5Gが商用化される2020年はまさに移動通信にとって技術的にも社会価値的にも新たな革新を生む年となるであろう。