「所有」から「利用」への変化

Amazon Music 等の音楽配信サービス、Office 365®等のアプリケーションサービスなど、従来はCD やソフトウェアなど、モノとして購入し「所有」することが一般的だった機能が、サービスとして「利用」されることが増えている。

こうした変化はデジタル商材に限った現象ではなく、自家用車や洋服でさえも、最近は購入するのではなく、シェアリングサービスの利用が増加している。消費者の購買行動は明らかに「所有」から「利用」へと大きく変化を遂げてきている。

サブスクリプションビジネスへの転換

こうした動きに合わせて、消費者に価値を提供する企業側にも変化が出てきている。具体的には、消費行動の変化に合わせて、従来の「売切り型」から「サービス型(継続課金型)」、いわゆるサブスクリプションビジネスへ転換する企業が増えている。企業は、継続課金により、持続的な収益基盤を確保し、経営の安定化を目指している。また、サービス提供を通して、顧客との間で長期的なリレーションを確立することにより、販売機会の増加や、顧客内シェアの向上を狙っている(図1)。

図1 サブスクリプションビジネスへの転換イメージ

さらにICTビジネスの分野に目を向けると、IoT 時代の到来に合わせて、光コラボレーションやMVNOが登場し、様々な企業が「異業種」へ新規参入できる環境が近年飛躍的に整ってきた。例えば、ガス事業者が光コラボレーションをセット販売するというケースや、ビジネスフォンの機器メーカーがモバイルをセットで提供するというような事例が登場してきている。

ビジネスプロセスの転換

企業にとっては、サブスクリプションビジネスに取り組むメリットは大きいが、その一方で課題も顕在化してきた。特に、これまで「売切り型」中心のビジネスを展開してきた企業が、「サービス型」に転換する際には、ビジネスプロセスを大きく変える必要がある。具体的には次の4つのプロセスに分けて見ていきたい。

1】受注~発注プロセス

見積書を提示し、申込書を受領する一連のプロセスである。顧客情報・契約情報を適切に管理することが必要であるが、「売切り型」と「サービス型」では管理する項目が異なることが多く、従来のシステムやプロセスを利用することが難しい。さらに、異業種のサービスを取り扱う場合には、管理項目が複雑化する。

【2】デリバリー

サービスを調達、配送するプロセスである。取り扱うサービスごとに個別のプロセスやシステムが必要であり、各サービスに対する深い理解が求められる。異業種のサービスを扱う場合に最も課題が多いプロセスである。例えば、MVNOではSIM固有のプロセスを理解するのに加えて、物流業者とのシステム連携や配達状況の可視化などの機能も必要である。

【3】課金計算~請求

お客さまへの課金根拠を作成し、実際に請求・回収するプロセスである。特にサブスクリプションモデルの前提となる継続課金では、従来の売切り型とは異なり、「サービス契約期間」、「自動更新の有無」、「最低利用期間の設定」、「課金プラン(定額制・従量制・段階性)」、「支払方法の管理」、「キャンペーン期間の設定」など、求められる機能や管理項目が大きく異なる。さらに、販売パートナー単位で、異なるパラメータを管理することもある。

【4】カスタマーサポート

サービスの保守運用・ヘルプデスクを提供するプロセスである。顧客との長期的なリレーション構築には必要不可欠なプロセスであるが、コスト支配要因になる可能性もあり、システムやツールを有効に活用し、効率的に提供したいプロセスである。問い合わせ対応やインシデント監視、FAQサイトの構築、チャットボットなどがある。

企業の対応

ここまで述べたようなビジネスプロセスの転換を企業は実行してきているが、順調に進んでいないケースも多い。最も多い要因は、単純に「ノウハウが無い」ということだろう。サービス型のビジネスを展開した経験も少なく、また「異業種」であるICT商材ともなれば聞いたことがない用語が飛び交っている。ノウハウや経験が無い中では、業務システムを構築し、運用することも困難を伴う。また、サブスクリプションビジネスをスモールスタートで提供開始する場合には、システム開発投資に躊躇することもある。

システム投資をしない場合には人間による手作業を選択することになるが、ここにも運用ノウハウの壁があり、さらに「人手不足」が事業運営のネックとなる。

こうした背景から、企業がサブスクリプションビジネスを開始した場合でも順調に展開できない場合や、そもそも事業展開を開始することさえできないという現実がある(図2)。

図2 サブスクリプションビジネスを行う際の各プロセスにおける課題

「ビジネスプロセスサポートサービス」の登場

こうしたビジネスプロセスの課題を解決し、サブスクリプションビジネスへの円滑な移行を支援することを目的として、ビジネスプロセスサポートサービスが必要であると考えている。

NTTPCコミュニケーションズでは、自社のOSS/BSS構築・運用で培った経験を活用し、NTT グループのB2B2Xビジネスを加速させていく新たなソリューションとして、2016年より「業務支援プラットフォーム」、「Office 365®販売支援システム」というビジネスプロセスサポートサービスを提供し、今後も事業展開を加速していく予定である。

次回は「ビジネスプロセスサポートサービス」の具体的機能を、海外サービスの事例を交えて紹介する。

<ビジネスプロセスサポートサービスのことなら下記へ>

baas-wg2@nttpc.co.jp