社会インフラを支える地図情報システムの取組み

NTTデータでは30年に渡り、地理空間情報システム(GIS)の構築サービスを実施している。その中核となるのが、GISミドルウェアである「GEOPLATS」であり、大量の地物(オブジェクト)を取り扱う業務で活用することを主眼においた、大規模システムの開発に向いたパッケージ製品であり、これまで様々なシステム開発プロジェクトにおいて利活用されている。

その活用事例が、(一財)道路管理センターでサービス提供されている道路管理システムの取り組みである。道路管理システムは1/500という高精度な地図基盤上に、電力、通信、ガス、上下水道などの公益事業者が扱う設備情報を管理し、電子申請や工事調整などの行政サービスを実現するものである。

道路管理システムで対応する道路占用申請業務では、高度に管理された地理空間情報のもと、道路占用審査に係る管理者内の決裁、進捗管理およびGISとの連携による添付図書の作成・参照など、道路占用許可申請業務全体のペーパレス化を実現し、道路管理者と占用事業者の双方が業務の高度化・効率化の効果に貢献している。

図1 GEOPLATS は設備管理や防災など各種システムなどで活用

一方、このように高精度地図をもとに管理された設備情報は、ライフラインに影響を与えるような大規模な災害時において、その早期復旧に向けた対応活動を情報面からサポートするものであり、国民の安心・安全を支える社会インフラともなり得るしくみである。

地理空間情報を取り巻くビジネス環境の変化

昨今、地理空間情報を取り巻くビジネス環境は、2005年のGoogleMapの登場やiPhoneを始めとするスマートデバイスの進展・普及に伴い、著しく変化している。

GoogleMap登場以前は、設備管理、測量・調査、マーケティングといった専門性の高い限られた分野での活用が中心であったのが、オープンになった地図のもと、ビジネスユース、コンシューマユースともにその利活用の範囲が通常の業務、生活で使えることになり、マーケットが一気に拡大された。

また、スマートデバイスの進展から地図をフィールドに持ち出すことが可能となり、スマートデバイスの位置や位置に紐付けられた画像等の情報によって、新しい分野のみならず、従前の活用分野においても自社が管理する情報と連携することで、その適用業務の範囲が拡大されている。さらに、地図と位置情報が組み合わせることが容易になったことから、例えば、米国のライドシェアサービスであるUberといった新たなサービスが創出される土壌ともなっており、今後も位置情報を活用した革新的なサービスやビジネス拡大が期待される。

地理空間情報は3次元化でよりリアルなものに

自動車の自動運転への取り組みや、i-Constructionといった建設土木分野の高度化に向けた取り組み、さらには設備管理の省力化や高度化に向けた取り組みなど、様々な分野での取り組みにおいて、3次元地図・データを活用することが重要なポイントとなっている。従来の3次元データは航空機から取得するものや固定のレーザスキャナーで取得するものであったが、近年はMMS(Mobile Mapping System)やドローン、地球観測衛星など様々な手法で高精度・広範囲のデータの取得が可能となっている。

特に“車両からの目“で計測を実施するMMSによる計測データは、先にレポートした自動運転を支える高精度・高鮮度な道路地図(ダイナミックマップ)の作成や、電力・通信などの公益事業者が実施する保守点検業務での活用が期待される。

NTTグループでは、電柱・ケーブル・マンホールの点検など、従来、人手に頼っていた業務について、MMSで取得した高精細画像や高密度レーザー点群から、情報を判読するための知識をAIにインプリメントすることで、自動化を含めた効率化を図るべく技術開発に積極的に取り組んでいる(図2)。

図2 MMSを活用した点検業務にかかるNTTのR&Dの取り組み

ダイナミック(動的)な情報活用がビジネス拡大のカギに

スマートフォンの普及によりリアルタイムに高度な情報が受け取れるようになり、ダイナミック(動的)なデータへの要求が高まっている。

動的なデータは、これまで公共的な機関が発出してきた気象情報等の情報に加えて、渋滞情報であれば車両の動き(プローブ情報)を解析することから、鉄道の運行情報や災害時の早期の情報把握であればtwitter等のソーシャルメディアを活用し、情報提供されるようになるなど、その情報収集手段や情報提供手段も多様化してきている。

これらの動的情報を活用していくためには、いかに業務に必要な情報を位置と時間に紐付けていけるか、ということがポイントとなってくる。

地理空間情報の活用は今後も進化・変化をし続ける

自動運転をはじめAIやIoTを駆使し、様々な分野でオートメーション化していく社会においては、地図の重要性はますます重要となり、より高鮮度・高精度のものが要求されてくるであろう。加えて、地図は人の目で見て判断するものから、カメラやLiDARといったセンサーが判断するものとして、地図にかかる考え方や使い方が変わってくることが想定される。

このような環境下で、地図自体もその作り方自体が従来のような技術ではなく、画像処理技術等によって、一般車に搭載されるようなドラレコ画像や、スマートフォンの位置情報、また、今後さらなる普及が見込まれるドローンなど、地図を作成する目的ではなく動き回るデバイスからのある意味、副次的な情報から、よりリアルな鮮度の高い地図が作成されてくるものと考えられる。そして、利活用分野におけるデジタルトランスフォーメーションへの期待はもとより、地図業界自体においても関連するプレーヤーが変わってくるようなゲームテェンジが起こってくることが想定される。

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清水 邦彦 shimizuknh@nttdata.co.jp

礒 尚樹 ison@nttdata.co.jp