キャッシュレスとは

2018年4月に公開された経済産業省の「キャッシュレス・ビジョン」によれば、「キャッシュレス」とは、「物理的な現金を使用しなくても活動できる状態」と定義されている。キャッシュレス支払手段の例としては、プリペイド、リアルタイムペイ、ポストペイドの3方式があげられている(図1参照)。

図1 キャッシュレス支払手段の例(経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」より)

 

また、キャッシュレス支払手段による年間支払金額÷国の家計最終消費支出をキャッシュレス決済比率と定義し、日本のキャッシュレス決済比率を2015年では、18.4%と算出している(図2参照)。

図2 各国のキャッシュレス決済比率 (2015年)(経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」より)

国によって、クレジットカードを用いた支払いが主流の国と、デビットカードを用いた支払いが主流の国があり、前者は、韓国、トルコ、カナダ、日本など、後者は、イギリス、スウェーデン、ベルギー、ロシア、インドなどが該当する。

政府によるキャッシュレス化推進政策

政府は様々な場でキャッシュレス化推進の方針を打ち出している。2014年に閣議決定した「日本再興戦略」までさかのぼってみると、キャッシュレス化を進めようとする一貫した方針がみられる。

・2014年6月の「日本再興戦略 改訂2014−未来への挑戦−」で、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会等の開催等を踏まえ、キャッシュレス決済の普及による決済の利便性・効率性の向上を図ると明記。

・2016年6月の「日本再興戦略2016」で「キャッスレス化の推進」を政策課題として位置づけ。

・2017年6月の「未来投資戦略2017」で「キャッシュレス化の推進」に関して、KPIとして2027年6月までに、2017年時点では21.0%であったキャッシュレス決済比率を倍増し4割程度とすることを目指すと明記。

・2018年4月に、経産省の「キャッシュレス・ビジョン」にて、2025年の大阪万博に向け、「未来投資戦略2017」のキャッシュレス決済比率40%の目標を前倒しし、より高いキャッシュレス決済の比率の実現を目指すことを宣言。将来的には、「世界最高水準の80%を目指していく」としている。

・2018年6月に閣議決定された「未来投資戦略2018−「Society5.0」「データ駆動型社会」への変革−」では、「フラッグシップ(旗艦)・プロジェクト」(図3参照)の「経済活動の糧」関連プロジェクト のひとつに、「FinTech/キャッシュレス化推進」を掲げている。QRコード等二次元コードのフォーマットに係るルール整備について検討することも記載されている。

図3 「未来投資戦略2018」フラグシッププロジェクト

QRコード決済

スマートフォンの普及に伴いQRコード決済が広がりつつある。

QRコードとは、1994年にデンソー(現デンソーウェーブ)が開発したマトリックス型二次元コード で、デンソーウェーブの登録商標となっている。QRは、Quick Responseの略である。

このQRコードを使ったQRコード決済とは、スマートフォン等のアプリに、クレジットカードやデビットカード、電子マネー等を消費者があらかじめ登録し、店舗での二次元QRコードあるいはバーコードの読み取りによって決済を行う方式である。NTTドコモが提供する「d払い」などが、これに該当する。

ここで使われるQRコードに関して、IC型クレジットカードの統一規格EMVを定めている技術団体EMVCoが、2017年7月に、「QR Code Specification for Payment Systems」仕様を公開している(https://www.emvco.com/emv-technologies/qrcodes/)。

EMVCoは、American Express、Discover、JCB、Mastercard、UnionPay and Visaから構成されている技術団体である。公開された仕様には2種類あり、QRコードを消費者が提示する場合(Consumer Presented Mode)と、店舗が提示するQRコードを消費者が読み取る場合(Merchant-Presented Mode )の両方の利用形態を対象としている。

QRコードを消費者が提示する場合には、商品読み取り用の赤外線スキャナをそのままQRコード決済にも使っている点がポイントで、店舗側にとっては導入コストを抑えることができるといわれている。

2020年、2025年に向けて

2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会、その後の2025年大阪万博にむけ、政府の政策にしたがい、キャッシュレス化が進んでいくと想定されている。

クレジットカード決済やデビットカード決済にくわえ、サービスが始まったばかりのQRコード決済も普及すると思われる。さらに、現在では想定されていない新しい決済手段が登場している可能性もある。

キャッシュレス決済には、利用者が安心して安全に決済できる基盤の構築が必要である。そのために、セキュリティを確保することは、我々セキュリティ技術者の大切な仕事である。世の中の仕組みがどう変わろうとしているのか、新しい技術、新しい法制度を常にウォッチすることが求められている。

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