2. お客様の関心はどこにあるか
技術革新統括本部
企画部長 藤原 慎
お客様が何に関心を持っているか。それを掴むのは容易いことではないが、様々な方法でそれを知り得るようにしなくてはならない。第2回目の今回は「お客様の関心」をテーマとしてみたい。
様々なお客様
20数年間情報サービスに関する仕事をしてくると、直に自身が対応したお客様ばかりではなく、同僚が対応したり、同業・他業種を含めた他社の知人が対応したお客様の話も数多く聞くことができるので、お客様には実に様々な方がいるものだ、と思う。
自分自身が発注する側であることもあるので「きっと発注先の○○社さんからは、あのときに△△さんから聞いたお客様のように見えているだろうな」と後から自省して対応を変えてみたりしたこともある。
読者諸兄にもおられるかもしれないが、私は饒舌でも器用な方でもないので、悩ましく思った顧客対応も少なくない。
お客様にとってはとても大切に考えている理由があっての、強引と思える要求があったり、コミュニケーションが曖昧になってしまったが故の揉め事が発生したりもする。どうしても話が噛み合わずに、お互いを理解しあえるまで時間が掛かるお客様もいらっしゃる。
しかしながら、様々なトラブルがあっても、最後に実現したいのは上手く本当の目的に向かうための情報サービスをお客様に手に入れていただくこと。
これがなかなか難しい。然れども、それ故に価値がある。
様々なご要望
前回はデザインについて書いたが、実際にお客様からご相談をいただくときには、いろいろな内容でのご相談をいただく。
例えば、
・「他社に負けないサービスを提供したいので、そのための提案をし
てほしい」
・「保守サポート切れが来るので、その後の対応を提案してほしい」
・「○○を実現したいので、そのための提案をしてほしい」
・「予算が確保できそうなので、当社が実施すべきことを含めて提案
してほしい」
・「面白い提案を持ってきてくれ」
・「何をやったら良いか良く分からないが提案してほしい」
・「三カ月後に○○サービスを提供してほしい」
等々。
ご相談いただけることは大変ありがたいことで、我々情報サービスを提供する側としては、それを切っ掛けにさらにご信頼いただける対応ができるようになれば良いと考えている。
お客様のご要望を伺ってみると、
・確たる業務改善・改革のイメージを持っておられる方
・何をやりたいかが曖昧な方
・何をやりたいかが特に定まっていない方
・利用したい技術やサービスは絞り込めているがそれ以外の検討が進んでいない方
など本当に様々である。
どの状態が正しいということはないし、それぞれの状況に合った対応が必要になる。
しっかりとした業務コンサルティングから必要であったり、逆に業務も使う技術・製品も検討が済んでおり、組み上げるだけの支援が必要、というケースもある。
聞く耳、理解できる力、整理できるスキル、コミュニケーション
書店に行けば、 “顧客対応の極意”“顧客対応のノウハウ”風の本が平積みで並んでいる。それぞれ参考になると思うが、私は平たくは次のようなものだと考えている。
●聞く耳を持つこと
饒舌ではない方には特にお勧めしたい。きちんと聞くことで、お客様は考えていることをきちんとお話ししてくれる。
●理解し確認すること
文章でも図でも、言葉でのやり取りでも構わないが、理解していることが正しいことを確認する。簡潔であることが肝要。
●整理できること
整理整頓すると「こういうことですね」と示すことができること。単に長々とした書面、言葉では、なかなか認識を合わせることは難しい。
●コミュニケーション
整理したことが本当に正しいのかを相互に確認し、表現できていなかったことを追加したり、曖昧なことを取り除いていくこと。
この繰り返しでお客様の関心を明確なものに表現していく。
潜在するニーズ
お客様が実は気付いていないことがあったりする。
そのような気付けないことがないか、を確認するために、他のお客様の事例や過去経験を参考として足りないものや必要なものがないか、を確認する。
また、情報サービスは、どのような機能が盛り込まれているかばかりではなく、例えば操作ボタンをクリックしてからどのくらいで表示されるかと云った 利用するうえでの快適さなどが重要な一要素である。
現在は、情報処理推進機構(IPA)で更新・公開が継続されている「非
機能要求グレード」[1] を活用するなどして、お客様との認識相違が起きないように、また潜在するニーズに気付かずに後々問題が明らかになってしまうことを防止することも工夫のひとつだ(図1)。まだ目にしたことがない方は参考にしてほしい。
情報収集
今は、お客様との対話、業界でのコミュニティ、各種イベント、インターネットなど、いろいろなチャネルから情報収集することができる。
様々な製品・サービスベンダから、製品・サービスそのものと、それを導入する理由や効果を説明するための情報が提供されているほか、国内外を対象とした調査会社やコンサルティングファームからの情報提供が行われている。
当社でもお客様に役立つ情報をと情報収集のみでなく独自調査を実施しているが、中立的な情報として省庁や各種団体が公開している情報を参考とすることも多い。
総務省、経済産業省をはじめ、情報通信研究機構(NICT)、情報処理推進機構(IPA)などでは、ICT に関する有益な情報を公開しているので、定期的に確認しておきたい。
また、長年情報サービスに関する各種アンケートや統計情報・調査情報等を公開している団体としては、日本情報システムユーザー協会(JUAS)[2] や情報サービス産業協会(JISA)[3] があり、お客様や情報サービス提供者の動向の一端が把握できる情報が提供されている。
お客様への提案や、自らの組織運営やサービス検討にも有用であるため、ぜひ一度はどのような情報が公開されているのかを確認しておくと良いだろう。
これらの情報にも、お客様が明確に表現されている関心に合う話題や、表現されていない琴線に触れる話題が出てくることもある。
様々な情報を日頃から取り入れながら、お客様の関心事・実現していきたいことを共有させていただき、その実現をご支援していきたいものだ。
<参考文献>
[ 1 ] https://www.ipa.go.jp/sec/softwareengineering/std/ent03-b.html
[2] http://www.juas.or.jp/
[3] https://www.jisa.or.jp/
<お問い合わせ先>
fujiwaramkt@nttdata.co.jp