●NTTドコモのモバイルソリューションとユビキタス戦略
 劾TT ドコモ
 取締役・ユビキタスビジネス部長
 三石 多門氏


【インタビュー:ユビキタスビジネス戦略】
動くモノすべてとコミュニケーション
する仕組みの創出を目指す


 「楽しく豊かで快適な生活を実現したい。そのためのユビキタス技術は、ありとあらゆることに適用できる無限の可能性がある」というNTTドコモ且謦役・ユビキタスビジネス部の三石多門部長。動いているモノすべてとコミュニケーションする仕組み創出し、みんながハッピーな関係になることを目指し、ユビキタス化に向けた取組みを牽引する三石取締役に、ビジョンと最近の状況を聞いた。

■携帯ネットワークでユビキタス化を実現し、ビジネスとして成立させる


―まず、ユビキタスビジネス部の主要ミッションからお聞かせください。

三石 ユビキタス(ubiquitous)とは、ラテン語に語源を持つ「遍在する、どこにでもある」という意味の言葉です。かなり以前からコンピュータの世界では使われており、「ユビキタス・コンピューティング」といえば、あちらこちらに遍在するコンピュータ同士が互いに通信し連携して情報を処理する、というような意味になります。

 携帯ネットワークにおいて「ユビキタス化」という言葉を使っているのは、以前から概念として存在していた「ユビキタス・コンピューティング」をさらに進化させ、身の回りのものがネットワークにつながり、いろいろな意味で生活が豊かに、便利に、楽しく、仕事もやりやすくなるような仕組みをつくっていくという願いを込めているからです。「携帯電話こそユビキタス・ツールだ」と言ってくださる先生もいらっしゃいます。

―誰もが携帯を所持し、世の中遍く広く携帯が存在している。

三石 しかも、それらは電源が入っている限り何らかの形でいつも情報を処理しているわけです。

 「ユビキタス化」は、「グローバル化」、「モバイルマルチメディア化」と並んで、NTTドコモの事業の3本柱の1 つです。移動体通信を手掛ける弊社にとって、新たなビジネスの創出のすべてが、ユビキタスという要素を含んでいるという見方もできます。

 現在の携帯電話の主な利用形態は、通話やメールなど「人対人」です。iモードによって、Webアクセス等に使われ始めましたが、まだまだ通話やメールによる対話が中心にあって、付加的にWebアクセスが利用されている状況です。メールとともに写真の利用もすっかり定着しました。今後は、このWebアクセスの部分が進化し、「人対機械の通信」、さらには機械が機械をコントロールするマシンコミュニケーションの世界へと利用形態がどんどん広がっていくことになります。世の中には移動するモノがたくさん存在します。これらがコミュニケーションできるユビキタス化を実現するには、携帯ネットワークサービスを使う必要があります。その意味で、「動いているモノすべてとコミュニケーションする」ということをテーマに、そうした仕組みをいろいろな方々と協力しながら創出し、ビジネスとして成り立たせていくのが、私どもの使命です。

■加速する通話以外の携帯端末の活用
 GPS機能搭載携帯電話も市場投入


―具体的にどのようなことをやろうとしているのですか。

三石 携帯電話は、従来のような通話のみならず、多様な用途に活用する動きが進んでいます。すでにiモードでは、チケットなどの予約だけではなく決済ができるという形で付加価値を実現しています。モバイル技術を利用した電子決済も、近い内に当たり前のものになってくるでしょう。我々は、そうした利用法を「モバイルコマース」とか「モバイルe コマース」と称しています。単なる決済ツールとしてモバイルを活用していただくのではなく、電子商取引に関わるすべてのプロセスの局面において、モバイルに関連したビジネスが存在するのではないかと考えているからです。持ち運びが簡単な携帯端末で、どこででも、安全に、買い物ができるようにする。これは、世の中を便利にする仕組みの一つになるだろうと思っています。携帯電話が電子ウォレット、すなわち財布代わりになる時代もそう遠くないと思います。

―携帯電話には端末固有の番号も付いているので認証が行いやすい。

三石 電話番号だけでなく機器固有の番号も付いていますから、ネットワークの認証、決済時の本人認証が容易に行えます。指紋や虹彩などで本人識別を行う「バイオメトリクス認証技術」を携帯に取り入れることも可能です。携帯電話に搭載してあるデジタルカメラで撮影した顔の輪郭情報を本人認証に役立てることもできます。安全、安心なモバイルコマース端末は、もうすぐ登場してくると思います。

―PHS を利用した位置情報検索サービスの利用も加速している。

三石 携帯端末をいろんなものに取りつけて、位置確認に使うという動きも大きく進んでい
ます。PHS を持った人の現在位置が分かる「いまどこサービス」はその1つです。「いまどこサービス」専用の小型(マッチ箱程度)・軽量(27g)の端末「P-doco?mini」(以下、ピー・ドコ)も提供しています。これは、通話やデータ通信には使いません。PHSの基地局とピー・ドコ端末が通信し、その端末がどこにあるのかという位置情報をセンター側で常時把握し、位置を知りたい利用者がパソコンやi モード端末、あるいはファックスでセンター側に問い合わせれば、その端末のおおよその現在位置が地図で示される。これが「いまどこサービス」です。ピー・ドコ端末に限らず通常のPHS端末でも利用できます。

   
いまどこサービスの専用端末
「P-doco?mini」
 
いまどこi モード検索の
画面イメージ
 
いまどこマピオンの
画面イメージ

―どのような利用者を想定していましたか。

三石 当初は、お年寄りに持っていただければ…といわれていましたが、やはりお子さん向けの利用が人気を集めています。月々980円というリーズナブルな基本料も人気の一つの要因です。このような料金設定ができたのも、密に配置された既存のPHS基地局網を利用しているからです。また、動くものすべてを対象としていくと、イヌやネコをはじめとする動物に無線端末をつけて位置を知るという使い方も可能なわけですが、東京大学の樋口広芳教授の研究室では、超小型のPHS端末を利用してカラスの生態調査を行っています。

―GPSを利用した位置情報提供の「DLPサービス」を活用したASP事業が盛んになっていく。

三石 「DLP(DoCoMo Location Platform)サービス」は、ASP事業者や企業に対して、GPS衛星により測位した位置情報の検索・登録・通知といった位置情報機能を提供するサービスです。このDLPサービスを利用して、携帯できるセキュリティ「あんしんメイトi」(綜合警備保障)や山登りする人の緊急通報用に携帯を使う「山ざんまい」(ワムネットサービス)といった多彩なASPサービスが展開されます。また、法人向けにも、車両の位置情報による運行管理サービス「e-Transit」をはじめとするASPサービスが提供されています。

―この4 月には、GPS 機能搭載のiモード対応携帯電話を市場投入しましたね。

三石 GPS機能を搭載したiモード対応携帯電話「ムーバF661i」を、4月22日より販売開始しました。この携帯電話機は、新たにGPS機能ボタンを搭載し、これを押すだけで使用中のお客様の現在地を測位し、現在地の周辺地図を画面に表示することができます。また、測位した現在地をメールに貼り付けて送ることができます。さらに、GPS機能に対応したiモードのコンテンツや「DLPサービス」を利用したASP事業者が提供するサービスを利用することもできます。


GPS機能を搭載した「ムーバF661i」(ピンクスター)


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